ネズミの包囲網
「……ネズミの癖に、頭が回る奴等だからな。我が公爵家が直ぐに動けば一目散に離散して逃げ出すかも知れん」
父上は少し考えた後、険しい表情で答える。
「あらあら……公爵の癖に気の弱い事。……真綿で絞めるようにジワジワと捕獲して行けば良いんじゃないかしら?」
何だか、母上も物騒。
「まだ現時点で気付かれては居ないだろうからな。……先ずは末端の奴等から捕縛すれば良いんじゃないかな?」
愉しそうにクリフト兄さんは提案する。
「ネズミの逃げる出口には、優秀なネコを配置してるからね。いつでも大丈夫だよ」
笑ってクリス兄さんも頷く。
「母上、皆は何の話をしているの?」
気になって私は母上に尋ねる。
「ふふ、悪いネズミさんの話よ。さあ、アリスは部屋に戻って少し休みなさい。クロナ任せたわよ」
母上は優しく微笑むと、私を抱き上げてメイド長のクロナに渡した。
「お任せください」
クロナは私を抱き上げたまま返事をすると、一足先にダイニングを後にする。
不思議なことに、私専属侍女のサキアじゃなかった。
廊下に出ると、何故か廊下に待っているサキアの姿は無くて、スロバキア男爵家に繋がる使用人達の姿も消えていた。
私はクロナに抱き上げられたまま、自室に向かうのだった。