私アリステシア3歳、そしてクオルナ公爵家。
「アリステシア様、おはよう御座います」
私はメイドの声と共に目覚める。
「おはよう、サキア」
眠い目を擦りながら私はベッドから降りた。
私の専属メイドであるサキアは、寄子のスロバキア男爵令嬢で、王立アカデミーを首席で卒業して直ぐに我が公爵家にメイドとして採用されたの。
茶髪の長い髪をツインテールにし、フリフリのエプロンに黒いメイドの制服を着た彼女は笑えば美人なのに、鉄仮面みたいに無表情。
「お嬢様、お着替え致しましょう」
「宜しく頼むわ」
私はサキアに手慣れた様子で夜着から、桃色のドレスに着替えさせられた。
スカートがフリフリであまり落ち着かないけど、もう慣れるしかない。
サキアと共に私は自室を出ると、家族が待つダイニングに向かった。
ふと、私は廊下を歩いていて足を止める。
剣と、魔法がありふれた世界に違いないし、建物や調度品、文化も中世ヨーロッパな筈。
だけど……不思議なことに、廊下には立派な掛け軸があちこちに掛けられているの。
……しかも、全部父上が描いた東の国に伝わる仏や神仏の……。
……お兄様の話だと、まだ東の国とは限られた貿易のみで、国交を完全に開いた訳じゃない筈だけど変ねえ。
……父上は東の国の文化に詳しいのかしら?
……にしても、この絵。
……気のせいかしら?家事全般をこなしてくれていた編集長の絵に似てるわ……。
まあ、きっと他人のそら似ね。
私は気分を切り換え、再びサキアと共に廊下を進むのだった。