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AI加工の詐欺アイドル

 僕らはその時、夜の道を必死に逃げていた。追って来ているのは僕らグループが売り出しているリカコという名のアイドルのファンの連中だ。

 「まずいぞ。ああいう連中は切れると何をするか分からない」

 技術屋の笹井が震えた声を上げる。

 「分かっているよ」と僕は頷く。リカコが言った。

 「どうするの? 向こうは私の顔が分かっているけど、私達はどんな人達が怒っているのか分からないのよ?」

 つまり、誰を警戒すれば良いのかすら分からない状態だ。

 「何処か身を隠せる場所を探そう。警察が動いてくれるのを待つしかない」

 

 ――リカコは声も歌唱力も素晴らしかった。だけど、それだけで売れるほど甘い世界じゃない事は分かっていた。だから僕らは一計を案じた。リカコの動画や画像をAIで加工してビックリするくらいの美人にしたのだ。僕らの目論見は見事に当たり、リカコはデビューするなり動画サイトで一気に再生数を稼いで注目を集めた。が、当初から「AIの加工じゃないか?」という疑問は持たれていた。

 そして、レコーディングが終わった後の事だ。仲間の一人から、

 「まずいぞ! リカコの本当の画像が漏れたらしい。正体はこれだってリプライが飛び交っている」

 という報告が入ったのだ。

 しかも、一部の熱心なファン達が「騙された!」と激怒し、リカコを集団で探しているらしい。

 それで、僕らは安全な場所を求めて慌てて逃げ出したのだ。

 

 やがて「そっちにいたか?」、「いや、いない」という声が聞こえて来た。どうやら、運悪く激怒しているファン達に遭遇してしまったようだった。僕はリカコを歩道橋の影に隠したのだけど、その所為で却って目立ってしまったようだ。

 連中が近付いて来る。

 まずい!

 「おい。何をやっているんだ?」

 複数人に取り囲まれる。僕も笹井も竦んで動けなかった。リカコはマスクを付けていたけど、無理矢理に剥がされた。

 ――終わった。

 そう思った。が、そこで奇妙な現象が起こったのだ。

 「この人は、違うな」

 と、連中は首を軽く傾げ、そして「悪かったな、あんたら」とだけ言うと、そのまま駆けて行ってしまったのだ。

 「なんだ?」

 僕らは首を傾げて、そこでようやく冷静になってSNSでリプライされまくっているというリカコの写真を見てみた。するとそれは本物のリカコとは似ても似つかない顔をしていたのだった。

 「酷い。私、こんな顔はしていないわ!」

 と、リカコは怒る。

 そう。

 つまり、“本物だ”と出回っているリカコの画像もどっかのイタズラ者がAI加工で作ったフェイクだったのだ。だから彼らは本物のリカコを観ても分からなかった。

 「助かったぁ」

 と、僕らは大いに安堵した。

 それから僕は悪態をつく。

 「何処の誰だか知らないが、AIでフェイク画像なんか作るなよ」

 お前が言うなよって話ではあるのだけど。

 

 そして、

 ……いつか、そのうち、姿も声も性格も、何もかもがフェイクのAIが制作したフェイクアイドルが誕生するのかもしれないと、少し僕は思った。

 いや、そうなったら、もはやフェイクとは言えないかもしれないけれども。

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