「ラジオで流れる陰謀論の話」
「レディース・エンド・ジェントルメン! この放送をお聴きのリスナー諸君! 大変長らくお待たせしましタア! 大人気コーナー『陰・謀・論・破』のお時間だヨーッ!」
「このコーナーではっ、リスナーから届いた驚愕の陰謀論と、それを切り裂く論破論が、正面切ってガチンコでぶつかり合う、バチバチの徹底討論コーナーダアっ! まさに! 口先フェイシングの頂上決戦ここに極まれりってコトっ!」
「果たして本日の試合はっ……陰謀論と論破論、どどど、ど〜っちが勝者の栄冠を勝ち取るのか……!? ぜひ、お見逃しなくウっ!」
「ではでは〜、前回までのあらすじってコトで……本日、対決のリングに上がる驚きの陰謀論とはっ……コチラっ!」
「ナナナっ、ナントっ! 『擬態種、生存説』!? ……おーっとぅ? そもそも擬態種ってなーんだっけ? スタッフー! カンペ、カモンっ!」
「エーット、なになに? ……『人間に擬態するリビングデッドの一種のこと。二〇三〇年代に出現し、その後、絶滅したと考えられる。絶滅した原因は、擬態の精度が悪かったためだと推測され……』あーハイハイ、思い出した! 要するニイ、『自分は感染者じゃないヨー』ってマネッコするゾンビのことだったネ?」
「そして前回、この番組に寄せられたのはっ……そのリビングデッドの変異種が、いまだに生存しているのではと示唆する、新・発・想の陰謀論ダアっ! ヌヌヌっ!? その根拠はいかにっ!? 前回、匿名希望のリスナーは、こう語った……」
「……コホン……」
「擬態種はな、擬態種はな……生きてるんだよっ! 絶滅したって言い張る奴らは、全員、不都合な真実を隠そうって魂胆の、卑劣な連中だ!」
「ただな、俺に言わせりゃ……浅い! 俺を騙そうったって、そうはいかない……」
「いいか……皆んな、騙されるなっ! 擬態種は、今も生きてる! ちなみに今、お前の街にもいるっ! どこの街にだっているっ! お前と一緒にラジオを聴いてる家族が、全員、擬態種だって可能性も、捨てきれないんだっ!」
「そして実は、何を隠そう……俺はその確たる証拠を掴んだ!」
「俺が長年、片想いしてるエイラちゃん(仮)は……俺が初めてチューしようってとき……俺のチューを全力で拒んだ! どうだ! 奴らはとうとう、正体を表した!」
「いいか、よく聴け……俺にいまだに嫁さんどころか、彼女のひとりもできないのは……世の女性は、全員、全員! そうさ、全員! 擬態種だからだっ!」
「俺とチューしたら、俺がゾンビになっちまう……その瞬間、世間に正体がバレる! 一巻の終わりだ! だから俺とチューできない! どうだ! 参ったか!」
「以上、証明終了。こいつを論破したいって命知らずは……かかってきな」




