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儚き焔   作者: 鈴音あき


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その輝きには浄化作用があるのか、瘴気が消えていく。


しかし、消えない瘴気が神力の光に抵抗して燻っている。


政信はそれに右手を翳す。


その手のひらから光が零れ落ち、流れるように塊に注がれた。


沈黙が訪れる。


瘴気は黒い煙が立ち昇り始めた、と思えば、すぐに白煙へと変わりそして、無へと帰った。


後に残されていたものは蛇の死骸と呪符。


その呪符も役目が終わり、勝手に灰になる。


束の間の静寂の後、政信の霊気に当てられて呪符であった灰は融けて消えた。


二つの気配が淡い色の発光体となって、政信の霊気の中から姿を現す。


二三回政信の周りをくるりと回り、やがて光は社殿の奥へと消えていく。


政信は天照大神と月読尊の神力を身の内に残したまま、来た道を真っ直ぐに戻って行く。


神官たちが倒れている所まで戻ってくると、彼らの額に触れていく。


匠から見ても政信が何をしているのかが分かった。


彼らに憑りついていた瘴気が清められて、本来の神力が宿りつつある。


そして社殿を出て、社の正面に立ち、ゆっくりと優雅に印を組む。


静かに邪気の無くなった境内全体を清めを施していく。


政信の身に残されていた二柱の気配が消え、時も経たずに神官たちが目覚めはじめた。


事の顛末が分からず、いつもの社と見た目は同じだが、急に感じる肌が合わないその異様な雰囲気に、戸惑っている。


それぞれが顔を見合わせて見慣れない二人の青年を見つけて、更に困惑している。


全員が目覚めてから政信が神官たちを呼び寄せ事の成り行きを説明すると、皆が一斉に蒼白な顔をし、慌てて中を見て周り、土色の顔色にさせて政信と匠のもとに戻ってきた。


だが、政信も彼らと同じような顔色をしてその場に座り込んでしまっていた。


「神様を身体に入れて厄神を祓ったんだ。体力が保てない……」


「ありがとうございました。私達も何とかして止めようとしたんですが、相手さんが八岐大蛇やったら……確かに素性が分かるまでにあっという間に倒れてしまうわ。私らだけでは止められんのは当たり前やわ。素戔嗚尊と櫛稲田姫命も、よう頑張って下さった。大蛇が酒で酔ってたから昔は二柱は戦いに勝てたんやろか?」


「しかし、八柱御子神は俺たちが来たときには……」


「八柱も最後までこのお社を守ってくれはったんや。スサノオとクシイナダが消される訳にはいかんと思うたんやろなぁ。二柱が消えたらホンマに争いでこの世は乱れてしまう……。藤原さんが二柱を助けてくれて、良かったです」


神官たちが丁寧に頭を下げた。


「この世を闇の帝の好きにさせるわけにはいきません。その為に俺はこの世に生まれたんだと思っています。そして、八柱御子神を復活させる準備を始めましょう。出来れば今日中に全てを終わらせて、少しでも早く元の神社に戻さねばなりません」


儀式のための浄めの準備のやり方を説明して全部の準備が整ったのは日暮れ時。


「後は、神社の皆さんの力で八柱御子神に祝詞を奏上して神力を注いで下さい。そうすれば社にも境内にも広がっていって通常の神社に戻ります。暫くの間は潔斎を守って、祝詞を続けてもらいます。最低でも二年。……神力が戻ったとしても弱いかと思います。常に神社に力を蓄えて強い結界になるように頑張って下さい」


座り込んでいた政信はよろけながら立ち上がり、ふらふらと四条通へと歩き始めた。


匠もそれについていくが、あまりにも酷い足取りの政信に肩を貸して支えてやる。


八坂神社周辺の瘴気も、悠裔の楽しそうな闘いのおかげで随分と薄くなってきた。


時間が経てば社の神力で雑鬼等は自然に消滅するだろう。


そう判断した政信は、匠に悠裔に戻ってくるように促した。


「戻ってこい、悠裔。終わりにするで」


小さく呟いただけで、何とも言えない幸せそうな顔で悠裔は匠の元に戻ってきた。


それはそれは楽しかった!という瞳。


「人には見られていなかっただろうな?」


政信は少し心配そうに匠に支えられながら白猫の問いかけた。


『ナーヴ』


悠裔は二人を見上げて一声鳴いた。


「そーか。それやったら大丈夫やろ」


匠が微笑むと、悠裔は嬉しくなってしまい、それまで消していた姿を現してしまった。


「ゆ、悠裔!出てきたらあかんってっ!」


『ナ……』

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