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「前世の記憶が戻る手助けはしてないから、その夢は自分で思い出そうとしたものだな。俺がやったのは幻を君に見せる術、幻術のことだ」
「ああ。何ともない。……?でも他の人に変に怪しまれてたわ」
「それは悪いことしたな」
「それで、俺は何をせなあかんの?めんどくさいのって俺苦手やな」
「これからいろんな異形……妖怪や幽霊、怨霊が襲ってくるようになる。それはまだ可愛いものだろう。悪霊が生きている人間に取り憑いて争いが増えるようになる。エスカレートすれば戦争になりかねない。俺の予見はここまでで止まったが、まだ先があるのかもしれない」
「この先……?」
「ああ。世界大戦になる可能性がある」
「噓やん……?だって戦争放棄って憲法が日本にはあるし」
「闇に飲み込まれるのが政治家だったら憲法なんて関係なくなるんだよ」
匠は深いため息をつく。
最近は本当にため息をつくが多くなったと自覚しているが、やはりするしかない。
暫くしてから頭をガシガシと掻き毟って、納得はしたくはないがしなければならないとあきらめ、政信を見た。
出鱈目を言っているような顔つきではないことは話を聞いている途中から分かっていたし、彬の力の内の一つに真実を見抜く術が自動的に発動されていたので分かってしまった。
「俺やないと、そうしてもあかんのか……?」
政信は頷く。
「俺は何をすればええの?」
「先ずは力を使いこなせなきゃ、戦えない」
「力……」
「今も手が青く光ってただろ?君は前世ではその光のエネルギーで攻撃や防御をしていたんだよ。練習すれば君も使えるはず」
「どうやって」
「まだ全部は覚醒してないから力のコントロールは難しいだろうと思ってたけど、……大丈夫みたいだ」
「確かに気持ちを落ち着かせたら、光は消えたけど……」
「その要領でいいんだよ。ちゃんとした使い方は俺が教えるから安心して」
政信が微笑んだ。
「全部を思い出すまでどれくらいかかるんやろ……」
「んー……」
匠の顔、眉間に視線を合わせた政信はふむと頷いた。
「明日か明後日かな」
「そんな早いの⁉」
「まあ、俺よりは期間が短いだろうな。俺は四年かかったから」
「なんで?なんか、彬の記憶の所為で…俺が俺でなくなりそうで不安になる」
「心配しなくても大丈夫だ。ただ、一度見た映画の内容を思い出した程度だ。」
「そんな単純な事か?」
「そんなモンだ。さて、渡しておきたいものがあってね」
そう言って、政信は自分の部屋から古めかしい折敷を手に匠の前に胡坐をかく。
折敷の上には小さな守り袋が乗っていた。
「なにこれ?」
遠慮もなく思ったことをそのまま政信に質問する。
「袋の中に五色の糸を螺旋に編んで輪にしているものが入っている。これは俺の守護の念を籠めている。何かあったら君を守ってくれる」
「何かって…」
「いつ襲ってくるかは分からないから。それを身に付けている限り、襲ってきたとしてもはね返してくれたり消滅させたり色々と便利だ。それと、ほかに何か気付いたり思い出したことがあればいつでも知らせてくれ。俺もいつも君を見ているわけではないし。……監視されてるみたいで嫌だっただろ?」
「うん。……判った」
「あ、それから、俺のスマホが繋がらなかったらこっちに連絡してほしい」
また新たな四つ折りの紙が出てきて匠の胸ポケットに入れられた。
「え、またこの紙……。これはどこの番号なん?」
「このマンションから見えるだろ?晴明神社に繋がる。あっちの方が何かと便利なんだ。調べ物ができるし資料がいっぱいあって。神社だと誰かが必ず電話にでてくれるし何時何があっても対応できる」
「わかった」
折敷の上の守り袋を手に取り、いつも使っている自分のボディバッグにしまい込む匠をみて政信は慌てた。
「あ、悪い!それ、鞄に入れてても意味が無いんだよ。肌身離さず持っててくれ」
「えーと?……首から下げるん?これはそのための紐?」
「そう。じゃなきゃ効果がない。首にかけてもいいし手首に巻いてもいい」
「なんか……カッコイイとは思わん」
「え?……悪かったな!」




