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二番目な僕と一番の彼女 後日譚 ~とある青春群像劇 - クインテット~  作者: 和尚@二番目な僕と一番の彼女 1,2巻好評発売中
第2楽章 約束は夏の日々と共に巡る 前編

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第2楽章 20節目


「……迷惑じゃなかったかな、無理やり過ぎたかな?」


 千夏がそう呟くのに、優子は首を振る。


「ううん、別れた後とかさ、こういう恋愛で拗れた後はきっと、一人で考えてても自分の中に答えは無いから」


 経験者は語る、というやつだ。

 約一年もずるずると、自分の中で変な論理武装をして、その武装によって身動きが取れなくなっていた自分が言うんだから間違いない。そう優子は思った。


「でも優子も一緒に行ってくれるってことで良かった、うちは元々そこまで言われないんだけど、そっちは夕方や夜で予定とかは大丈夫だったの?」


「うん、元々今日は千夏ちゃんもバイト休みで、ファミレス寄っていくからねとはいっくんにも言ってたしね。試合前はそこまで長く練習しないから遅くはないはずだけど今日は佳奈さん絶対優先」


「あぁ、一回戦は普通に勝ったんだよね? 石澤が言ってた。そしてハジメにマジでそろそろ助っ人に来ないかって誘って断られてた」


「ふふ、いっくんも相澤くんに同じようなこと言ってたなぁ、後上木くんや下山くんも」


 ブランクやスタミナの問題はあるが、そもそも今のバスケ部自体が高校から始めた人がほとんどに、全体的な部員の人数もそこそこでしかないため、本当に今からでも入部してくれないかなぁとは一緒に帰った時のいっくんの言葉だ。

 中学の時もやっていたのでルールは分かっているし、マネージャーくらいはしてあげても良い気もするのだけれど、何だか中学の時の二の舞いになりそうで何も言わずにいるものの、時には放課後残って一緒に帰ったりはしていた。


「…………相澤かぁ、正直ハジメとの繋がりが無ければ絡むことも無かっただろうけど」


 千夏がそうポツリと呟くのに、優子も頷いて返す。


「そうだね、でも見かけで思ってたよりもずっと優しい男の子なんだなって思うよ」


「うん……悪ぶってるところはあるけれど、ハジメとの事だって色々気を遣ってくれたし、それに佳奈さんのことだって凄く大事にしてたように見えた」


「だよねぇ。私、いっくんとの事で話を聞いてもらって、その後も時々相談もさせてもらってて。…………全然そんな素振り無かったんだけど、何があったんだろう」


 千夏はそんな優子の言葉に、少しだけ何かに思い当たったような表情を浮かべて、でもすぐに冗談のような本気を込めて言った。


「…………まぁわからないけど、もし相澤の浮気が原因とかだったら吊るすしかないね」


「それは同感」



 ◇◆



「お邪魔しまーす」「失礼します」


「いらっしゃい。あはは、制服姿を見るのは初めてだけど、女子高生を家に招き入れるのは何だか不思議な気持ちがするねぇ」


 チャイムを押すと、いつもよりギャルをしてない佳奈さんが顔を出して出迎えてくれた。

 そして、優子達をまじまじと見てそんな事を言って笑う。


 部屋に入ると、香ばしい、お腹が空く匂いが漂っていた。

 優子の家でもよくしている匂いだ。


「うわぁ、餃子ですか? すご、めっちゃ一杯」


 一足先に入った千夏がそう感嘆の声を上げる。


「そうそう、ひき肉とお野菜沢山買っててさぁ、冷凍しちゃっても良いんだけど、黙々と包んじゃった…………あ、ニンニクじゃなくて生姜餃子だからお口の臭いにも優しいからね。ネギもニラも使って無くて、代わりにシメジとかレタスとか入ってます」


「佳奈さんって料理得意系女子だったんですね? 羨ましいなぁ」


「あはは、得意というわけじゃないけれど。でも料理する経験が長いからそれなりにはね」


 千夏がそう羨ましそうに言って、佳奈さんが謙遜するように笑った。

 それを見て、無理にでも笑えてくれているだけでも、来てよかったのかなと優子は内心思いつつ、大皿二皿分に綺麗にフライパンの型で並べられた餃子と、まだ倍はあろうかという餃子のタネを見て疑問を口に出す。


「でも何でまたこんなに沢山だったんですか? 挽肉も結構な量ですよね」


 そして、同時に佳奈が浮かべた表情に失言を悟った。


「あはは、いやぁその、ね。…………あれで真司庶民的なもの好きでさぁ、本当はハンバーグとかロールキャベツとか、色んなもの作って冷凍したりしておこうかと思って多めに買ったんだけど、その後にすぐ別れちゃって…………野菜含めてだからつくねにして鍋かとかも考えたんだけど、タネだけ作った後作業が没頭できる方にしちゃいました」


 つまりはこれをご相伴に上がるのは本来は別の人だったというわけで。

 

「とりあえず二人共、もう少しで包み終わるから悪いんだけど座っててくれる?」


 佳奈さんがそう言うのに、優子は千夏と顔を見合わせて、頷いて答える。


「あ、それならうちもやりたいです!」


「私も手伝わせて下さい」



 ◇◆



 スプーンで適量をとって、さっと指を水につけて、皮に包んでいく。

 優子のそれを見て、千夏と佳奈が目を丸くして言った。


「優子、早っ! 凄くない?」


「うわぁ、優子ちゃん手際良いねぇ、うちのキッチンなのにあたしより早い」


「えへへ、一応これでも定食屋の娘なもので、メニューにある仕込みはお手の物です」


 そんな話をしながら三人で餃子を包んでいると、ポツリと佳奈が言った。


「……二人共、本当にありがとうね。さっきは黙々と、なんて言ったけどさ、まだ整理できてなくて。今も、こういう餃子包むのは真司の方が上手なんだよね、とか考えちゃって。駄目だねぇ」


「ぜん、ぜん! 駄目なんかじゃないです!」


 千夏が食い気味に否定する。でも優子も同意だった。


「……でも佳奈さん。私も相澤くんの事を知ってるわけじゃないんですけど、何があったんですか? 二人共、凄い仲良さそうに見えてたのに」


 そして、本当はご飯でも食べながらだったのかもしれないが、優子は佳奈にこの流れで聞いてしまうことにする。


「ありがとう。…………そうだね、実は昨日の事なんだけどさ――――」



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