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二番目な僕と一番の彼女 後日譚 ~とある青春群像劇 - クインテット~  作者: 和尚@二番目な僕と一番の彼女 1,2巻好評発売中
第1楽章 そして、二度目の春が来る

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第1楽章 18節目


 優子は、目の前でバスケの試合をしている五人の同級生、いや、その中のいっくんと早紀を眺めていた。

 同じコートに立ち、同じようにボールを追う。

 それは優子にはできないことだったから、羨ましいという気持ちは少しある。

 

 こうなる前から何となく、二人の相性は良い気がしていた。


(こうして二人の距離が近づくのは、悪いことではない、よね)


 そんな事を考えながら、目で二人の動きを追っていると、誰かがこちらに近づいてくる気配がして。


「こんにちは。えっと、ハジメっちと千夏ちゃんの友達で、優子ちゃん、だったよね?」


 フワッと香水のいい匂いと共に、優しげな声が降りてきた。

 優子がそちらを振り向くと、そこには前回訪れた際に顔見知りとなった、カナさんがこちらに微笑みかけている。


(本当に美人なギャルのお姉さんだよね…………相澤君の彼女か、意外なようなそうでもないような)


 内心でそう思いながら、ペコリと挨拶をする。


「真司達は試合中かぁ、あれ? 新しい子もいるね、あの子も同級生?」


「ええ、いっ…………イッチー君と同じバスケ部で、私やハジメくんと同じクラスなんですけど、教室で話していた時に捕まって連れて来られたみたいですね」


「あはは……捕まったって、まるで無理やりみたいじゃん」


 優子の言葉に、カナさんが花が咲くように笑う。

 何だか周りの雰囲気まで明るくしてくれる人だなと思った。


「ふふ、実際、バスケ部に入ったのも無理やりみたいなものだったみたいですよ? それこそ相澤くんが言ったみたいですけど」


「あはは真司が? そうなんだ良いなぁ、あたしも皆と一緒に高校生やってみたかったかも!」


 そう言って無邪気に笑うカナさんはとても柔らかい雰囲気で、お姉さんのようでいてどこか子供っぽい表情に、優子はふふ、と笑いを漏らす。

 千夏にいい人だよ、と前回紹介されたままだったが、確かにいい人そうだった。


 外見だけで判断したら優子の周りにいるタイプではないけれど、これなら楽しく話すこともできそうかな、そう思って、ふと気になったことを優子は聞いてみることにした。 


 ギャルと付き合っている、という言葉だけでは違和感は無かったけれど。

 何となく今こうしてカナさんと話をしてみると、どこかその雰囲気の柔らかさが、学校で受ける相澤くんのイメージとは違っている気がして、どういう流れで二人が付き合うことになったのか野次馬的に興味が湧いたのだった。


「…………ふふ、カナさんは、相澤くんの彼女さんなんですよね? いつから付き合っているんですか?」


「うん、そーだよー? 去年の7月3日にあたしが告白……告白? まぁとりあえずあたしから言って付き合ったかな?」


 すると、あっさりと答えが返ってきて、少し驚く。

 夏からということは、半年とちょっとということか。でも随分具体的な日付だった。


「日付まで覚えてるんですね? それにカナさんから……ずっと好きだったとかなんですか?」


「ううん、その時が初めて話したかな、顔くらいは知ってたけれど……」


「えぇ? なのに告白したんですか!?」


 野次馬的な興味本位から純然たる乙女的な興味へと移行した優子は、身体を乗り出すようにして声を上げる。

 その様子に益々カナさんは笑顔を深くして答えてくれた。


「……何だかねぇ、放っておけないなぁって思って。勿論顔も好みだったのもあるけど、言葉を交わした時の雰囲気がね…………まぁ今は、それだけじゃなくて中身も大好きだけどねぇ」


「ほうほう、具体的には?」


 思い出しながらなのだろうか、少し目を上に向けるようにしてえへへ、と笑いながらそう言うカナさんに、歳上に似つかわしくない感想として、可愛らしい人と思ってしまう。

 僅かな時間と数回のやり取りで、優子は目の前のほんわかしたお姉さんの事が好ましく思えるようになってきていた。


(いいなぁ、こんな風に美人なのに、可愛らしく、それでいて嫌味でない笑い方ができる人)


「それはねぇ、ぶっきらぼうでいて情に厚いところとか。人を見かけで判断しないところとか。実は小さな子供が苦手なところとか、あたしの家族の事も気にかけてくれることとか…………」


 優子が内心でそう思いながら、穏やかな心で眺めていると、ポンポンと彼氏である相澤くんの良いところが出てくる。


「ふふ、こんなお姉さんの惚気みたいなのを聞いてて楽しい?」


 そんな優子を見て、カナさんが言葉を止めてそんな事を聞いてきた。


「楽しいです、他人の恋愛話大好きです! それにカナさん可愛いですし、眼福です!」


 それに即座に本心からで答えると、クスクスとカナさんが笑った。


「うふふ、ありがとう。それに正直者だねぇ、色々話したくなっちゃうよ。…………でもそんな優子ちゃんこそとても可愛いから、男の子が放っておかなさそうだけど、自分の恋愛はいいのかな? 高校生、というかその年代なら、皆恋愛の話ばかりなんじゃない?」


 そしてカナさんは緩やかにそんな質問をしてくる。

 確かに周りを見ても皆恋愛に勤しんでいるのだから、自然とそう言う疑問にもなるのだろう。

 でも、優子は首を振って答えた。


「うーん、私はあまり自分の恋愛よりも、推しの恋愛を見てる方がいい感じですかねぇ」


 そうすると、カナさんはふと止まって、今度は優子の顔をまじまじと見てきた。

 そして、それがまるで確信かのように首を傾げて告げる。


「あれ? ()()()()()()()()かな?」


「え?」


 何気なく言ったいつもの言い訳に、さらっとそう疑問を返されて、優子は固まってしまった。


「あ、ごめん。…………あはは、またやっちゃった」


 すると、そんな優子を見て、カナさんは途端に慌てたようになって、先程の笑みが嘘のようにしょんぼりとしてしまう。


「えっと…………?」


 その落差と、先程の疑問に頭がついていかず、優子は何を言って良いのかわからないままカナさんを見つめた。

 カナさんもまた、少し困ったような笑顔で、ぽつりと呟いた。


「あたしさ、何だかよくわかんないんだけど。……その人の無理してるのとか、嘘と思って発してる言葉、感覚的にわかっちゃうみたいなんだよね。そしてそのまま口にしちゃっていつも失敗しちゃうっていうか……だからごめんね。あたしと優子ちゃんはほぼ初対面みたいなもんだし、言いづらい事もあるよねぇ」


「わかっちゃう、ですか? …………でも、私は本当に自分の恋愛なんて――――」


 普段の優子なら、笑って流して、少し凹んでいるカナさんのフォローに回ったことだろうと思う。

 でも、何故だろうか。この時は無邪気に告げられた、自分の『嘘』という言葉に、反応してしまっていた。

 人の嘘がわかるなんて荒唐無稽な話だけど、カナさんは嘘をついているようにも見えない。それもまた優子の混乱に拍車をかけていた。


「来てたのか、声くらいかけろよ、カナ………………どうした変な空気で? あー、すまん櫻井、こいつが何かしちまったか?」


 そこにそんな声がかかったのは、二人がそんな微妙な空気の中で、無言になっているときだった。


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