第二王子の母の記憶。
ああああああああああああああああああああああああああああ!!!
どうしてどうしてどうして!
私のだいじなだいじな王子様が!!!!
どこで選択肢を間違えたの!
ずっと最適解を選んだはずなのに!!!
私がノーマルエンドになってしまったから!?
しくじったしくじったしくじった!
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私は私がまだ幼い頃、自分が前世でだいすきだったゲームに転生したことに気が付いた。
しかも念願のヒロイン。
どのルートも内容が重たくて少しでも選択肢を間違えると即バッドエンドでハッピーエンドも誰かしらが不幸になる作品だった。
だから私はそれが嫌でみんながみんなそれなりに幸せでだれも傷つかないノーマルエンドを目指した。
私が妾になるエンド。
ゲームでのこのエンディングは正直一夫一妻制の日本に生まれた私はこの世界の妾とか側妃制度が気に食わなかったけど。
悪事を働いていた私の実家が没落してしまい、行き場をなくした私の行く末を嘆いた両陛下が私の居場所を作ってくれる救済措置でしかなかったし、陛下とのそういう関係はなかったからとても気楽だった。
大事な友人の夫と肉体関係を持つとかありえないし。
でもまぁ、一応実家が没落して犯罪者扱いになっていたから犯罪者の娘だって何も知らない人にはよく邪険にされていたっけ。
ただでさえ犯罪者の娘なのにちゃっかり王の妾の位置についた私のことは他人が見れば面白くないよね。
実際には私は大好きだった平民の彼と事実婚みたいな関係になってハッピーだったけど。
まぁ…子供はあくまでも私と王の子ってことになったけど、生まれながらに存在しない者として生きるより絶対にいいって彼も言っていた。
私がゲームとは違うエンドを選んだからか、手にした幸せは私の元から次々と消えていった。
仲の良い友人であった王妃とのお茶会に持参した手作りのお菓子にはいつからか毒が検出されるようになった。
はじめのうちは補給係が罰せられていたし、私の言葉も信じてもらえた。
でも王とのお茶会では検出されないのに王妃とのお茶会では数回に1度出てくる毒入りのお菓子にいつからか
「きっと妾は王妃を恨んでいるに違いない」「王妃を害して自分が妃の座に着こうとしているに違いない」とうわさされるようになっていた。
王妃も最後まで私を信じてくださっていた。けれど
「ごめんなさい。貴女がこんなことをするはずないってわかっているの。わかっているけどこれ以上共に過ごすことはできないわ。」
そういって私は大切な友人を失ってしまった。
次は王からの信頼だった。
元々王妃と仲が良いから目をかけてくださっていたようなものだ。王妃への贈り物から毒が検出され始めてからは疑惑の目は明らかだった。
そして、夫の失踪。
詳しい事情は分からない。けどある日一枚の手紙を置いて彼は私の前から姿を消してしまった。
この頃から、私はおかしくなってしまったのかもしれない。
私のハッピーエンドのためにはこの子がカギになっているに違いない。
そう確信していた。
私には成しえなかった本当のハッピーエンドを迎えるために本当の役割を教えてあげることにした。
きっとそれがいけなかったのね。
やっぱり私にはハッピーエンドを迎える資格はないのかしら。
これにて完結です。
またその他の人物でその後の物語を書くかもしれません。