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プロローグ
その日、ヒロインであるはずの は消えた。
学園に通っていた痕跡も彼女が生まれたという痕跡さえもすべて。
彼女を覚えているものは数少ない。
彼女はそれほどに皆から忌み嫌われていた。異質な存在であった。
彼女は試験的にこの学園に入学をした数少ない平民の一人だった。
特に秀でたものがあるわけではなかったが、それはそれは可憐だった。
だから彼女は気が付いたのだ。
“私がヒロインなんじゃない?”
“前世の漫画やゲームでは転生したらヒロインってよくあるし、きっとこの世界もそうに違いない!”
“私がヒロインなんだもん!どの作品かはわからないけど、きっと大丈夫!”
彼女が本当にヒロインで、この物語をよく理解していたならきっと消えることはなかっただろう。
彼女が物語の通りに動いていればきっとあんな目には遭わずに済んだのだろう。
だけどヒロインは消えた。
彼女はただの平民だったのだろう。