人生初クエスト的なやつ 5
クエストとは一切関係のない雑談をして盛り上がっているとどこからか音がしてきて俺たちは真剣な表情に変わり、音のする方に視線を向ける。
「どうやら馬車のようですね」
視線を向けると少し先に馬車が町にゆっくりと進んでいるのが見えた。20代前半位の好青年が御者台で白馬を引いて客車はもの凄く豪華にデザインされており、誰が見ても金持ちや貴族が乗っていると分かるほど豪華な馬車だった。
これはゴブリンが出てくる好機かもしれない。
エリナは剣を軽く握り、戦闘の備えをし、俺もその時が来るのを冷や汗をかきながら近づいてくる馬車に視線を送る。
何か起きるのか? 本当に魔物が出てくるのか?
馬車が近づくにつれもの凄い緊張感と不安が体に走る。
俺たちが隠れている所からおよそ50m位に近づいたころだろうか。周りに静けさが走り、空気が変わった感じがしてもの凄く嫌な予感がした。
その空気の静けさを打ち破るように馬車の近くにある草むらがガサガサと動き始めた。
周りの草むらに異変を感知した馬車の運転手が止まる動作をして馬車が停車した。
「どうした?」
中に乗っていた中世ヨーロッパ人の30代後半くらいのひげを生やした金髪のいかにも貴族だという服装をした人が客車から顔を出した。
「周りの様子がおかしいです。何かいるようです。旦那様たちは中でお待ちください」
馬車が止まると周りの草むらのガサガサという音が次第に大きくなる。
音が大きくなり、馬車を引いていた青年が隣に置いてあった剣を取り、臨戦態勢を取った。
「来るか?」
その様子を岩陰から見ている俺たちの顔にも緊張感が走りながらも馬車を見続けている。
ガサガサ音が最大になった時、馬車の正面の草むらから緑色で耳が長く口には鋭い歯が並んでいる小さい生き物が斧を持って飛び出してきた。
「出ました。ゴブリンです」
「これがゴブリンなのか。本当に出てきやがったな」
ゴブリンが出てきたことにエリナは少し興奮気味なのに対して俺は強がっているように装いながらも動揺を隠せなかった。
そんなこともお構いなしに草むらから次々とゴブリンが出てきて数はおよそ30体位になり馬車を囲っていた。
「でたな、ゴブリンども。お前らの噂は聞いていたぞ。旦那様たちには一歩も触れさせんぞ」
馬車を引いていた若い男性が馬車から降り、剣を構えながら吠えるように奮起する。
お互いがにらみ合い、相手の出方を探っている。すると正面にいた1匹のゴブリンが青年に向かって飛び掛かってきた。
青年は飛び掛かってきたゴブリンに剣を下から一振りしてゴブリンは下から上へと切れて中から血が飛び出した。
仲間をやられた光景を見た他のゴブリンが怒りに狂い興奮している。
「始まったか」
「行きましょう。馬車も守らなくてはいけません」
「ああ! 異世界生活初戦の戦闘だ。派手にやろうぜ!」
戦闘が始まって気合十分の俺たちは岩陰から飛び出し獲物を見つけた肉食動物のような勢いで坂道を下っていった。
俺たちが坂道を下っている途中にも戦闘が始まっている。興奮しているゴブリンが青年に飛び掛かりそれを青年が切り倒している。
すると馬車の後ろにいたゴブリンが馬車の人が乗っている方に迫っていく。
「旦那さまたちには近づけさせんぞ! くっ、邪魔だ!」
戦闘中の青年がそれに気づき馬車の方に近づこうとするが他のゴブリンが邪魔をして馬車に近づけないでいる。
1匹のゴブリンが男の人たちが乗っている客車の扉に飛び掛かり、扉を開けようとした。
それを見て青年が「やめろ!」と吠えるように叫ぶも他のゴブリンが襲い掛かっており、馬車に近づけない。
そんな青年を気にせずゴブリンは動きを止めずに扉を開ける。
中には赤子が泣いており、それを宥める母親と先ほどの旦那様と呼ばれている男性がいる。
「大丈夫だ。君たちは私が守る!」と男性が赤子と女性の前に守るように立ち塞がる。
立ち塞がった男性にゴブリンが襲い掛かろうとして男性や戦闘中の青年ももうだめだと思ったその時「これ以上はさせません!」と女の子の声が聞こえて直ぐにゴブリンが真っ二つに切り刻まれた。
その光景に男性と青年、ましてや周りにいたゴブリンたちでさえ何が起きたのかわからないよう呆然としていた。
扉の前にはゴブリンを切ったフードを被った女性、もといエリナが立ち塞がった。
「これ以上この方たちには手を触れさせません。私があなた達を成敗いたします」
「私じゃなくて俺たちだろ!?」
そんな声がどこからか聞こえてき戦闘中の青年は周りを見渡す。
するとエリナの前にいた一匹のゴブリンの頭が思いっきり地面に叩きつけられる。いや踏み潰されたのだ。若い青年に、もといゴトウタクミに。
ゴブリンを踏み潰したタクミはうんこ座りの状態からものすごい勢いで飛び上がり、回し蹴りをして周囲にいた3体のゴブリンを蹴り飛ばしタクミはエリナの横に立った。
2人は出会ってまだ数時間しかたっていないのだがもの凄く相性が良いパートナーという印象を与える。
そんな光景を目にした青年には2人がお互いを信頼しているかの様な笑みを浮かべているように見えた。
「たく、勝手に飛び出しやがって。なんかあったらどうするんだよ。2人で来た意味がなくなるじゃねえかよ」
「すみません。馬車が襲われている所を見ていると思わず体が勝手に動いていました」
1人で先に突っ込んでいったエリナに不満げな顔で言うとエリナは真剣な顔で答えるもどこか笑っているようにも見えた。
「まあ、別に作戦とか立てているわけでもないから別に良いんだけどよ。それにしてもあんたはお人好しなんだな」
「ふふ、そんなことはありませんよ。そんなことをおっしゃるタクミさんこそ私の後を追うように出てきてくださってお人好しですね」
「お、俺は人助けとか興味ねえから! ただクエストのために飛び出しただけだから!」
「ふふ、照れてるなんて可愛いですね」
「う、うるさいな!」
微笑みながらからかうように言うエリナに思わず顔を赤くして照れてしまった。




