人生初クエスト的なやつ 9
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タクミたちを乗せた馬車はグランデボッカの町に入っていった。町の中は先ほどと全く変わらず賑やかに栄えている。
町の中を進んでいく中でタクミは馬車の中でアルバートたちに様々な話をしてこの世界のこと、この町のことについて教えてもらった。
この世界のことはタクミをこの世界に飛ばした張本人が言っていたことそのままであり、この町のことについては全く知らなかったので良い情報を耳にできた。
話をしながらもタクミは外の景色を覗いており、改めて異世界に来てしまったのだと実感しつつ胸の奥からワクワクが止まらなかった。
そうこうしているとタクミたちを乗せている馬車は目的地であるアルバートの家に到着した。
「すげーな」
タクミたちの視界に入ってきたのは海外セレブが住んでいそうな大豪邸だった。
入り口には鉄の扉があり、その奥には大きな庭があってその真ん中に長い通路がある。
真ん中の通路を抜けると青色の屋根で白色の建物がコップの形のように建っていた。
あまりの豪邸の大きさにタクミはただ呆然と立ち尽くしていた。
「大きなお屋敷ですね」
一方でエリナはというと見慣れたような感じだった。
「ここが我々アルバート家の屋敷である」
アルバートが自分の屋敷を両手を広げて自慢するように言う。その後すぐにタクミたちに向き直った。
「では改めてようこそ我が屋敷に! これからはここが君たちの家だと思ってもらって構わない」
アルバートが招くように言うとタクミは「ほう」という興味を示している感じで見ており、エリナは少し困った感じをしていた。
「さあさあ、早く入るのだ。これからは君たちの家でもあるのだしゆっくりしてくれ」
そんなタクミたちにアルバートは笑顔で早く入るようにと背中を押して家の中に入れていく。
背中を押されてタクミは初めて入る金持ちの屋敷に緊張しながらも歩き出し、エリナ渋々歩き出す。
「それにしても凄いデカいなあ。こんなデカい所住めるなんてよっぽどの金持ちなんだろう」
タクミは歩きながら周りの庭を見渡して独り言のように呟き、それにエリナがぴくっと反応してアルバートが屋敷のことについて説明してくれる。
「これくらいの屋敷はこの町だと珍しいがもっと栄えている町に行けばこの屋敷の何倍もの大きさのもあるぞ」
「まじかよ!? すげえな!」
アルバートの屋敷はもの凄く大きいがこの世界で見たらまだ小さい分類に当たるらしい。
タクミは田舎の建物よりも都会の建物の方が高いみたいな感じだろうかと変な感じで解釈をする。
「まあ、この町も一応栄えている方にはなるのだがな。他のもっと栄えている所には敵わない」
「そうか」
少しトーンを落として言うアルバートに対してタクミは適当に返事をする。
少しの沈黙があるも庭の真ん中にある通路を歩いていくとお屋敷の玄関に着いた。
玄関の前に立ち止まると屋敷の扉が勝手に開かれ中から黒を基調とした服に白色のエプロンのメイド服を着たメイドが一人出てきた。
「おかえりなさいませ。旦那さま」
「ああ、客人を招いている。色々準備を頼めるか?」
頭を下げて挨拶をするメイドに対してアルバートは軽く返事をして直ぐにタクミたちを紹介して中に入れるように手配する。
「はい、かしこまりました。お食事の準備が出来ております。どうぞ皆さま中にお入りくださいませ」
メイドに案内されてタクミたちは中に入るともの凄い玄関があり、玄関を真っすぐ進んでいくと大きな居間があった。
「いや、すげーな! 広すぎだろう。こんなのが現実にあるなんて」
タクミは見たことがない居間の広さに思わず驚きの声を上げて周囲をくるくると見渡している。
「さあ、席についてくれ」
アルバートは席に座るように促すとタクミとエリナはイスに歩いていき、着席する。
着席して談笑をして待っているとすぐに食事が運ばれてきた。
料理は主食としてパンがあり、メインとしてステーキのようなお肉が乗ったお皿が目の前に並べられていた。他にも様々の料理が大皿でテーブルの真ん中に並べられていた。
「おおー! 旨そうだな」
目の前に運ばれてきた料理を前に異世界に来てから何も食べていたタクミは空腹が限界に来ており、いかにも涎が垂れそうに料理を見ている。
そんなタクミの様子を見てエリナは楽しそうに微笑んでいた。
料理が全て出揃ったらアルバートが「いただきます!」の号令をした。
「それでは頂こうじゃないか。いただきます」
「いただきます!」
アルバートの号令の後にもの凄い大きな声で「いただきます!」をしてもの凄い勢いで目の前に並べられている料理を口に運んでいく。
「う、うま! これも旨いぞ! これもやばい!」
「タ、タクミさん、行儀が悪いですよ」
もの凄い勢いで食べていくタクミの様子をエリナは行儀が悪いと指摘するもタクミの食べる手は止まらない。
そんな二人の様子を見てアルバートは
「旨いか、おかわりはいくらでもあるぞ! どんどん食べてくれ」と嬉しそうに言ってマリエットは楽しそうに見ていた。
タクミは現世ではあまり海外料理の料理を食べたいと思わなかったがこうして食べてみるともの凄くおいしいと感じた。
その後も会話をしながらも食事をして大いに盛り上がった。
食事を終えてタクミはメイドに部屋を案内されて2階に上がっていた。
「部屋の数がえぐいな」
部屋の数はざっと見て20くらいはありそうだ。
「部屋の数は35部屋あります」
「そんなにあるのか。掃除とか大変なんじゃないか?」
「はい、ですがそれが私たちのお仕事ですので。それにもう慣れてしまいましたので特には苦と感じておりませんよ」
部屋の数の多さに驚いているタクミにメイドは素っ気なく答えた。
そこからしばらく歩いていると案内された部屋に到着した。
「ここがタクミさんのお部屋となっております。旦那様ら聞いておりますのでこの部屋をご自由にお使いください」
「ああ、ありがとう!」
「何か御用があればいつでもお声かけ下さい。それでは失礼致します」
部屋を案内したメイドは一礼して去っていた。
メイドの後姿を見届けて部屋の扉を開ける。
「さすがに広いな」
部屋の広さは今でもなくもの凄く広かった。部屋の奥に窓があり、その手前にホテルにあるようなサイズのベッドが置いてある。ベッドの向かいにはタンスが置いてあり、タンスの横にはデスクワークができるサイズの椅子と机が置いてある。こんなにも場所を取りそうな物が置いてあるにも限らず狭さを感じさせない余裕の広さがあった。
とりあえずタクミはベッドに寝ころび異世界に来てからのことを思い出していた。
「本当にいろいろあったな。まさか異世界に来るとはなあ。他の異世界転生した主人公たちもこんな感じだったんだろうな。まあ勇逸の救いは今こうして普通にベッドに寝転がれていることだな」
そんなことを考えていると次第に眠気が襲ってきてタクミはそのまま眠りについた。




