被害者Xの献身〔19〕
「二位は焼肉チャーハンです。チャーハンは業務用を使ってるんだと思うけど、トッピングしてる焼肉とのバランスがとても良いです。他の弁当屋さんやスーパーの惣菜売場では白ごはん用の業務用焼肉をそのままチャーハンに乗せている店が多くて強いタレの味がチャーハンの味を殺してしまってます。だから焼肉を食べてチャーハンを口にするとチャーハンの味がしない。でも大森はチャーハンの肉を超多めにして、それを敢えてチャーハンの上に乗っけてる感じです。だから焼肉を食べてチャーハンを口にしてもチャーハンの美味しさはそのまま。長くなっちゃいましたね。」
「構いませんよ。一位は何ですか。」
やよいはフフッと笑って蓮に尋ねた。その表情を見た蓮は楽しそうに話し始めた。
「担々米飯です。担々麺のご飯バージョンですがビビンバ丼の坦々バージョンの方が解かりやすいかな。これは上オムライスのガーリックライスと同様に中華スープ風の薄い味付けをしたご飯に坦々麺の具が乗ってます。でも坦々麺と違うのはご飯と具を絡めるところかな。どちらかと言えば坦々麺は麺とスープを絡めて食べますからね。かなり長話になりましたね。」
蓮の話を聞き終わったやよいが言う。
「本当にびっくり。鈴木さんは氷山先生と同じこと言ってます。氷山先生もその三つがベスト3だって言いました。他の店に無い構成だと言って、解説する内容も鈴木さんと殆ど同じです。」
やよいの目は氷山と口に出した時、更にキラキラと輝き始めた。蓮は食べるのが好きなんじゃなくて氷山を連想したからなんだと納得すると同時に少しがっかりした。食べ歩きを共通の趣味としてやよいとの距離を縮めたかった蓮の目論見は儚く消え去った。そしてハッとした。
以前ハッキングした興梠修一郎と藤川弥生のやり取りで、修一郎は食べ歩きの文章を蓮や氷山みたいに長々と送信した。それに対する弥生はの返信は〈ウザ!〉と簡単だった。
やよいと桧山の間に自分は割って入ることはできないが興梠修一郎とは仲良くなれそうな気がして蓮は可笑しくなりニヤリとした。
そんな蓮を見たやよいは
「私、おかしなこと言いましたか。鈴木さん変な笑い方しましたよね。」
と言う。蓮は
「そんなことないです。」
と答えた。




