被害者Xの献身〔13〕
聡美は闇の中にいた。誰かが走って来る。東郷やよいだった。軽快な脚運びでヒュンヒュンと走っている。聡美は声を掛けようとしたが声が出なかった。
やよいに続いて〔くノ一〕の他のメンバーが集団で走って来た。聡美は〈えっ。〉と少し恐怖を感じた。集団の中に内広舞の姿がない。周囲を見回して確認したくても首は動かない。
集団が走り去って暫くすると魔女の格好をした舞が歩いて来た。舞はしゃがんで聡美の顔を上から覗き込むと中国雑技の変面のように自分の顔を剥ぎ取った。下から老婆の顔が現れる。間髪を入れずにさらに剥ぎ取る。次は死人の顔だった。更にその顔を剥ぎ取ると死神の顔が現れた。
死神は死神鎌を大きく振り上げると聡美の首に向かって振り下ろした。
聡美は
「蓮、助けて。」
と言った。不思議と声が出た。そして聡美の記憶は消えた。
聡美を介護していた自動二輪のライダーは聡美の頭がガクンと項垂れたのを見て耳元で
「大丈夫ですか。」
と声をかけた。聡美は返事をしない。
一人の女性が青年に話し掛けた。
「その女性、今何か言いましたよね。」
「〈助けて。〉って言ったね。」
「その前に〈レン〉って言いませんでした。彼氏かしら。」
「そういえば言ったような。とにかく救急車を待ちましょう。」
歩道のところどころに人だかりができている。
鈴木蓮は家に着くと、今まで撮影した握馬聡美の画像と動画をパソコンで見ていた。
〈明日、弁当〔大森屋〕に行けぱ勝隆か光志が何か言ってくるだろう。〉
そう考えながらベッドに入った。変な夢を見た。警察官が変面ではなく変服ともいえる雑技を披露していた。警官が制服を剥ぎ取るたびに制服はモノクロになっていく。最後に制服は黒を基調とした柄になった。POLICEの文字はDEATHに変わっている。警官は最後に顔を剥ぎ取っとった。下から警察官の谷中の顔が現れた。
翌日の朝、蓮の携帯が鳴った。電話の主は警察官の谷中だった。




