被害者Xの献身〔5〕
蓮のSMSが聡美主体となったおかげで聡美は地下アイドル[くノ一]のメンバーとしてよりはコスプレイヤーとして有名になった。
コスプレ姿の聡美を撮影する時に蓮は画素数の多い高級一眼レフを使う。その鮮明な画像に聡美は驚き、嬉しくもあった。同時に髪の毛の一本一本から顔の小皺、少し荒れた肌までクッキリと写ってしまう。
聡美は蓮に
「何とかして。修正できるでしょ。」
と頼む。すると蓮は
「ありのままに。為すがままに、レット・イット・ビー、レリゴー、聡美。」
と意味のない言葉を並べて返す。ムッとした聡美が更に言うと、蓮は
「あんまりイジルとCGみたいになってしまう。そしたら聡美じゃなくなる。」
と答えた。
ある日、聡美は蓮にポツリと言った。
「次の選挙、やよいを抜いて一位になれるかな。」
蓮は
「頑張ろうよ。」
と素っ気なく言う。聡美としては
〈聡美なら絶対になれるよ。〉
と嘘でもいいから言って欲しかった。聡美自身も東郷やよいには勝てないと解っていた。
選挙の日、聡美は結果に驚いた。新規のファンが増えたせいもあるが聡美の得票数は大きく伸びた。まだまだ東郷やよいには及ばないものの次の選挙ではもしかしたらと思わせる得票数だった。
そしてそれ以上にファンを驚かせたのが東郷やよいの爆弾発言である。
東郷やよいは
「私は今日をもちまして[くノ一]を脱退します。」
と言った、ファンは驚いたが他のメンバーも驚いた。毎回、選挙でダントツ一位のやよいは憎たらしい。嫉妬しているメンバーも多く聡美もその一人だ。そうは言ってもやよいがいなくなればコンサートに来る人数がかなり減る。半分以下になることは目に見えていた。
東郷やよいが脱退してからの最初のコンサートの日がやってきた。ファンの数はやよいがいた頃の半分以下の三割程だ。
この日、殆どの曲のセンターを握馬聡美が務めた。聡美は胸元を大きく見せ、腹部を大胆に露出、太ももあらわの三点サービスでファンにアピールする。
他のメンバーも〈やよいの代わりは私が務める。〉とばかりに張り切るが、圧倒的に聡美一人が目立っていた。




