被害者Xの献身〔4〕
[くノ一]ファンの殆どは東郷やよいがお目当てだ。くノ一をSNSにアップしているファンも全てやよいをメインに構成している。蓮だけが〈ちょこっとエロい、よく見ると可愛い〉のタイトルで聡美をメインにしていた。
蓮のSNSのおかげなのか、コンサートでのファンの掛け声は「や・よ・い、や・よ・い」の一辺倒から時折「さ・と・み」の声も混じり始めた。
半年ごとの総選挙で聡美は内広舞に大差を付けて二位になった。それでも得票数は東郷やよいの半分に満たなかった。
蓮と聡美はファンとアイドルの関係のままだったが、聡美の方は以前からのファンとは枕を続けていた。新規の枕ファンもできた。
SNS上では
〈枕、いくつ持ってんだろ。〉
〈よく身体が持つな。〉
などの書き込みをされたり、ハンドルネームが[レンレン]の蓮は
〈いいなぁ。〉
〈金、持ってんだろうな。〉
〈恋恋愛愛〉
〈金の枕レンレン〉
などの書き込みもされた。
蓮がコンサートで聡美を撮る一眼レフは一秒間に10枚以上の撮影ができる。事務所のSNSは普及版の一眼レフで撮影された画像がアップされる。蓮のSNSの方がはるかに躍動感のある画像が多い。その被写体は聡美だ。聡美の知名度が次第に高くなった。
蓮はもう一台、超高画質の一眼レフを持っていた。蓮はコスプレのイベントにも行く。ポーズを取ることが多いコスプレイヤーはこちらの超高画質一眼レフで撮影する。
聡美は蓮に
「私もコスプレする。綺麗なカメラで撮ってね。」
と言った。
聡美は蓮の収入を知らないが、カメラを見てもある程度は裕福だと判る。話題の店に食事に誘って支払って貰ったり、服をおねだりした。聡美は数字には強くない方だが食事と服代で蓮が支払ってくれるのは月に10万円程だと解る。
それ以上の金額になると蓮は
「今月はちょっとね。」
と渋い顔をする。聡美はそんな蓮をうまく利用しながら、枕友達とも関係を維持した。
聡美が不思議だったのは蓮がアイドルとファンの立ち位置を崩さない事だった。




