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被害者Xの献身〔3〕

 鈴木蓮は握馬聡美と携帯番号を交換してからは[くノ一]のコンサートに行く度に聡美を撮影するようになった。聡美も蓮のカメラに向かってセクシーなポーズを取る。聡美は蓮に

「動画も撮って欲しい。」

と頼んだ。蓮は

「音響と照明に手間をかけてないから、いい動画にはならないよ。」

と乗り気にならない。それでも聡美は

「撮ってよ。」

と、ねだった。


 蓮は一度仕方なく動画を撮影した。撮影したビデオカメラは一般向けの中では高性能の部類だったが、撮影した動画を見た聡美も人気アイドルグループのブルーレイやDVDと比較するとあまりにも差が激しいので蓮が動画を撮らなかった理由が納得できた。

 かと言って事務所が撮影する動画もそれ程良い出来映えではない。スタッフの使用しているビデオカメラは蓮のモノよりもグレードが低かった。蓮との違いはスタッフであるがゆえに撮影位置を自由に選べる。そのためアングルが格段に(まさ)っている。

 聡美は蓮に

「蓮がステージの前を自由に動けたら、わたしをやよいよりも素敵に撮れるかな。」

と尋ねた。

「アングルはメチャ良くなるよ。でも照明さんがやよいちゃんばっか当ててる。それに聡美がやよいちゃんより前に出たらマネージャーに怒られるんじゃない。」

 蓮は冷静に答えた。聡美はそれはそれで嬉しかったが〈やよいちゃんよりも素敵に撮れるよ。〉と言って欲しかった。

 やよいをメインに撮影した事務所の動画は[くノ一]のSNSにアップされる。

 蓮と聡美はコメント欄を見ながら喋った。

「動画のことボロクソ書かれてるね。」

「そうだね。スタッフの片手間だから上手く撮れてないね。」

「蓮の撮ったモノの方が画質がいい。」

 コメント欄で事務所の動画は酷評されていた。

〈 カメラマン下っ手糞。〉

〈スタッフかな。〉

〈アルバイトだろ。〉

〈カメラもだけど照明がダメ。〉

〈そうそう、やよいちゃんばっか当てるのは正解だけど全然綺麗に当たってないし。〉

〈やっぱり、やよいちゃんは生に限るな。〉

〈生やよいには勝てない。〉

〈てか、やよいちゃん可愛く撮れないなら動画撮るなよ。〉

「話題になるのはやよいばっかり。」

 聡美は寂しそうな顔をして蓮の顔を見つめる。何も言わない蓮に聡美は問いかけた。

「蓮、わたしを綺麗に撮ってね。」

 蓮は無言で頷いた。


 蓮のSNSに聡美の画像が増えていった。蓮はスポーツ撮影用の高速一眼レフで聡美を撮った。超高画質の一眼レフよりこちらを選んだのには理由がある。動き回るコンサートではとにかく一秒間に多くの枚数を撮影して、その中から奇跡の一枚を奇跡の二枚三枚へと増やしたかった。

 画像には両手を上げて衣装が上にズレたりスカートが少しめくれ上がったチラ見せも多い。コメント欄にも〈エロさじゃ聡美だね。〉とか〈よく撮ったな。〉、〈通り名、馬鞍ネルちゃん。〉等の書き込みが増えた。

 聡美は蓮に

「何、撮ってんの。どこ撮ってんの。」

と嬉しそうに笑いながら言った。

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