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シンデレラの魔法

「大ちゃん、子供達の教育やこれからの生活設計以外でこんなに長く喋ったのって久しぶりだね。」

「うん、そんな気がするな。〈妖怪腹出し〉のおかげだ。」

 宗久が妖怪腹出しを引き合いに出すと由利は仰向けになってTシャツを捲り上げジーンズのフロント・ボタンを外すとファスナーも半分下げた。そして腹部を膨らませて狸の腹鼓のようにぽんぽこぽんと叩いている。

「叩く場所で音が違うのよね。面白ぉい。腹踊りの番外編だわ。色気も何もありゃしない。」

と一人で楽しそうだ。

「本当に色気はないな。モーターショーの時と大違いだ。今の由利を先生が見たら『妖怪腹出し』書いてくれるかな。」

「おそらくベリーダンスと腹踊りの二部構成よ。私の腹踊りとベリーダンサーが出てくるかな。私がベリーダンスを習えばベリーダンサーも私かもしれない。」

「由利、ベリーダンス習えよ。ちょっと流行りは過ぎたけど。小説にはさつきちゃんの腹筋は出てこないのかな。」

「それも出てくるわね。そっちが出てきたら私すごく惨めだ。狸と仔猫ぐらいの差がある。」

 由利は喋りながら宗久に近づき腹部に宗久の顔を思いっきり押し付けた。

 宗久と由利が久しぶりにじゃれあっていると突然声がした。

「ママ、お腹痛いの。大丈夫。さっきから叩いたり擦ったりしてる。」

 声の主は長女の真名(まな)だ。

「大丈夫よ。だからもう寝なさい。」

 由利は咄嗟に在り来たりの言葉を 口にした。

「あはっ、見られてた。」

「覗かれてたんだなぁ。真名と拓斗(たくと)のことすっかり忘れてた。真名と拓斗が生まれてから由利だけを考えてたのは初めてだ。真名は何か感じ取ったのかな。怖い夢を見たような感じじゃなかったけど。」

「へぇそぅなの。」

 由利はへその周りを人差し指で撫でながら

「大ちゃんがお腹出しの私にこんなに喜んでくれるんなら一度ぐらいはへそ出しでデートしてもよかったな。」

 真名の事には触れず完全に恋人モードになっている由利を見て宗久は嬉しくなった。モーターショーの日に弥生の取った行動は蝶の羽ばたきのように些細で、その時は宗久と由利には無関係なものだった。それが今は宗久の記憶を甦らせ、育児モードと仕事モードの由利を恋人モードにした。卑弥呼の鬼道と言うよりもシンデレラの魔法はこんな感じかなと宗久は思わずニヤリとした。由利はその表情に素早く反応した。

「何、にやけてるの。」

「由利がエロ可愛いんだ。これは弥生さんの魔法のせいかな。弥生さんは魔法使いだ。」

「そっか、でも弥生さんは先生が魔女って言うと〈どうして私が魔女なのよ。〉って、いつも膨れてたな。」

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