業界人
電話から由利の声が聞こえてきた。
「何が今更〈運命感じる。〉よ。聞き飽きちゃった。」
「その時の由利って確か十代だよね。」
「で、大ちゃんは私が好きなの。若い女の子が好きなの。」
浮かれた声でしゃべる宗久に対して由利の声は淡々としている。暫く間が空いた後、由利が
「それで大ちゃん、少し黙ってて。先生に話したいことがあるの。」
と言った。
「聞いた話では内広さんは昔アイドルグループに籍を置いてたみたいです。あまり有名じゃないんで名前を聞いたけどグループ名は覚えてません。バック・ダンサーで踊るだけのことが多かったとか。それとバラエティに何度か出演してます。」
「分かった。ありがとう。」
修一郎は由利にお礼を言った。
「先生、どうかしました。浮かない顔をしてますけど。」
宗久が問いかけると修一郎は
「業界人は好きじゃないんだ。百年の恋が冷めそうだよ。」
と言う。
「そうですか。」
宗久が少し同情した口調で話しかける。すぐに電話からは
「先生、弥生さんの呪いかもしれません。」
と逆に元気な由利の声が聞こえてきた。
「虚栄と偽りと嘘は苦手だ。」
修一郎が言うと
「本当に馬鹿正直って言うか、馬鹿なんですから。」
電話越しなので由利は言いたいことをズバッと言った。




