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シックスパックの幽霊

 車を降りた修一郎と由利は防波堤の先端へと歩き始めた。先端ではさつきがストレッチをしている。さつきは脱いだTシャツとジャージを防波堤の上面のコンクリートに置き、短距離系のユニフォームの姿でストレッチをしている。その姿は背景が海のため遠目に見たら水着に見えてしまう。さつきは歩いて来る修一郎と由利に気付き右手を上げ大きく振った。修一郎は軽く右手を上げ、ゆりは両手を振って答えた。するとさつきはクラウチングスタートの形を取った。ポンと飛び出すと軽快なテンポで二人に向かって走って来る。

 軽やかに刻むステップでさつきの腹部には綺麗なシックスパックの腹筋が浮かび上がる。由利は修一郎の目線を追った。やはり視線はさつきの腹部に向いている。二人の前まで駆けて来たさつきは二度ほど深呼吸をして「こんにちは。」と言った。

 修一郎も「こんにちは。」と言い由利は「こんにちは、元気だった。」言葉を返した。

 さつきは

「こないだより腹筋割れてるでしょ。」

と今回も無防備に晒した腹部を手で擦っている。そして修一郎に向かって大胆に

「触ってみてください。」

と言う。修一郎が

「それじゃ少し。」

と言うので由利は、

「ちょっとお父さん、お母さんに言い付けますよ。」

と言った。

 修一郎は指で腹筋の山の部分をつつき、その後は谷の部分を指でなぞり始めた。さつきは初め修一郎の指先を見ていたが、なぞられ始めると空を見上げて目を閉じ、ショーツを少しずり下げた。由利はハッとして、

「お父さん、いつまで触ってるの。」

と少し大きめの声で言う。空を見上げたさつきの表情は高校生ではなく弥生だった。

 由利が少し大きめの声で喋ったので、さつきは由利の顔を見てにっこりと笑い背を向ける。ウェアを置いてある場所まで小走りで行くと一旦スニーカーを脱いで上下を身につけた。再度、スニーカーを履いたさつきはジョギングを始め、修一郎と由利の斜め前で「失礼します。」と手を振って走り去って行った。


 修一郎はさつきに背を向けて海を見ながら由利に言った。

「由利ちゃんも海を見よう。そして振り返ったらさつきちゃんが消えてるかも。」

「そういったオチなんですね。」

 由利も海を見る。二人一緒に振り返るとさつきは防波堤から道路に出たところだった。さつきは横を向きを自分を見ている二人に手を振った。修一郎と由利も手を振る。

 二人は顔を見合わせお互いに〈やっぱり。〉と言う表情をして笑った。そしてもう一度さつきが走ってる方向を見るとさつきの姿はなかった。

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