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三つ巴

 由利はさつきの姿を確認してから修一郎に話しかけた。

「先生、今何を考えてますか。」

 由利は修一郎が〈弥生〉と言うのか〈内広舞〉と言うのかそれとも〈さつき〉の名前を出すのかに興味がある。

「今は宗久君のこと考えていたよ。」

 修一郎から意外な答えが返って来た。由利は

「どうして宗久(だいちゃん)なんですか。」

とすかさず尋ねた。

「さっき電話で約束したろ。〈モーターショーの時の由利ちゃんのことを話す。〉って。だからどんな風に話せばいいかなと思ってストーリーを考えていたんだ。」

 修一郎の脳内の物語では自分が主役なんだと思うと由利は少し鼻が高い。嬉しいのだが有る事無い事勝手に脚色されては困るので

「先生、真実をありのままにお願いしますね。変な脚色しないでくださいよ。間違っても私がコンパニオン並みの露出の服だったとか無しです。」

とかなりキツく念を押したのだが、

「大丈夫だ。由利ちゃんは綺麗なくびれを観客に公開したとしか言わないから。」

と言う。

「ああ、やっぱりその話もするんですか。」

と由利が言い返すと

「当然だろ。スタイリストは弥生だしね。」

と修一郎が答える。

 由利は[若気の至り]が少し恥ずかしくなって話をさつきに切り替えた。

「先生、さつきちゃんの所に行ってみましょうよ。設定覚えてますか。」

「もちろん。小説家とその愛人の設定だった。」

「ちょっとふざけないでください。さつきちゃんはまだ高二ですよ。それにさつきちゃんが本当に弥生さんが化けているなら、私その場で呪い殺されます。」

「そうだね。きっと海に引きずり込まれるね。」

「もうその話やめましょう。それで先生は父、私が娘ですからきちんと演じてくださいね。それと今、内広さんがいたらやっぱりさつきちゃん所に行きますか。」

「もちろん行くよ。正直に〈元カノの若い頃にそっくり。〉だって言う。」

「内広さん許してくれるかな。」

「そりゃあ、内広さんがここまで一緒に来てくれる間柄なら拗ねた時には思いっ切りギュッするよ。それからさつきちゃんの近くに行ったら視線はどこに向けたらいい。」

「バッキバキの腹筋(シックスパック)堪能でいいんじゃないですか。こないだはさつきちゃんから見せてくれたんですし。そして父親が娘を見るような 気持ちで言葉をかけてください。」

〈ずいぶん練習したんだね。練習は辛くないかい。〉みたいでいいのかな。」

「任せます。」

 修一郎と由利は他愛もない会話を続けた。会話の中で由利が無理矢理内広舞を切り出した時、修一郎は食い付いてきた。内広舞の存在は修一郎の心の中で大きくなっているのだと由利は複雑な気持ちになった。

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