今、一番会いたいのは
修一郎は五月がF2を出てから暫くして出ていった。由利も修一郎と少し間を置いて出る。修一郎は車に乗り込み買ったペットボトルと惣菜を無雑作に後部座席に置き、由利は用意していたクーラーボックスに生鮮品を入れた。
エンジンをかけて走り出す前に修一郎は由利に話しかけた。
「由利ちゃん、少し時間はあるかい。」
「どのくらいですか。」
由利が問いかけると修一郎は
「〈さつきちゃん〉の港に行ってみたい。」
と言う。
「先生、もしかして弥生さんが五月さんになって現れた後はさつきちゃんになって現れると思ってませんか。」
由利が冗談っぽく修一郎に言うと、修一郎は真顔で答える。
「その位は妄想しなくちゃいけないだろう。」
そう言う修一郎に由利は条件を突きつけた。
「そしたら先生、一つだけ私の質問に答えてください。その答え次第で考えます。」
「なんだ。そう言うことか。」
「今、一番会いたいのは誰ですか。」
「内広舞。」
修一郎は即答した。これには由利も驚いた。
「分かりました。お付き合いします。」
修一郎がF2の駐車場から車を出すと由利は宗久に電話をする。電話は呼び出し音だけだったが、暫くして宗久から電話が返ってきた。由利は〈少し遅くなるから。〉と言った後に突然すっとんきょうな声を上げた。
「先生と変わるね。」
由利はそう言うと携帯を修一郎の左の頬に当てる。
〈宗久です。先生、お久し振り。今度、モーターショーの話をじっくり聞かせてください。由利も了承してますから。僕もその時の由利が見なかったな。〉
〈分かった。勿論、由利ちゃん抜きだよね。それじゃ電話、由利ちゃんに戻すよ。〉
由利は修一郎の左の頬から携帯を離すと、
「帰る時にまた電話するね。」
と言い電話を切って、修一郎に尋ねた。
「先生は宗久にモーターショーの話をしたんですか。」
修一郎は答える。
「モーターショーに行った話しかしてない。そこで何があったかは由利ちゃんが喋っていいって言ったら喋ると言ったよ。」
モーターショーの話とは修一郎と弥生と由利が三人で行った時の事だ。口火を切ったのは弥生だが結局二人でコンパニオンとバチバチ状態になってしまった。由利はカメラ小僧やビデオ親父に〈撮っていいですか。〉とか〈目線ください。〉と声をかけられたのだった。
「あぁ、あの頃は若かったな。」
と由利はため息を吐き、
「先生、今一番会いたいのは誰ですか。」
と再度尋ねた。修一郎は
「内広舞。」
と又も即座に答える。




