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かぐや姫

 夕食の後片付けをしてから由利は寝室に入った。宗久は翌日の仕事を考えて先にベッドに入っていた。由利がベッドに潜り込むと宗久はまだ起きているようだ。由利はそれなりに気を使い、

「起こしちゃった。」

と宗久に言う。すると、

「いや違う。でも本当の事を言ったら由利が怒るから言わない。」

と返事が返ってきた。宗久が馬鹿正直なところは修一郎とよく似ている。だから由利は同じように接する事ができる気楽さがあり、宗久と修一郎は話しも合う。

 そして宗久がこういう時は綺麗な女の人や可愛い女の子が気になっている。最初はカチンきていた由利も最近はどんな女性を想像しているのか尋ねるようにした。

 でも今回は今までになくカチンときた。

「言いたいこと解かるよ。17歳の弥生さんでしょ。」

 そう言って由利は宗久に背を向けた。宗久は背中を向けたままの由利に言う。

「弥生さんは魔性の魅力がある人だったからね。僕も一度しか会ったことないけど 印象は〈モナリザの微笑〉だったな。先生は〈魔女〉って言ってた。でも、どうして17歳って年齢が出てきたんだ。」

 宗久の話を聞いていた由利は背中を向けたまま言う。

「あっそ、今の大ちゃんの頭の中は 17歳の弥生さんでいっぱいなんだ。」

「だから、どうして由利は女子高生じゃなくて17歳にこだわるんだ。」

 由利は身体(からだ)を捻り、天井を見ながら喋り始めた。

「弥生さんがね、先生に言ったの。〈17歳の姿であなたの前に現れて誘惑したい。〉って。」

 由利は修一郎と弥生の会話を宗久に話し始めた


「 一度、17歳の制服姿でオマエの前に現れてやりたいよ。そして思いっきり誘惑したりおねだりするんだ。修一郎(しゅっしゅ) は馬鹿正直だから、きっと〈何歳(いくつ)なの。〉って聞くだろうね。それでも誘惑してやるんだ。でもオマエは〈18歳(じゅうはち)になってから。〉って言うよね、バカァ。その時はパンツ見えるぐらいスカートを捲り上げてから地面に座り込んで、人が集まるまで泣いてやる。」

「どうせ犯罪者になるなら15歳ぐらいがいいかな。かぐや姫の話を考えた人は満月が欠けてゆく姿を女性に例えて、老ける前に月に返したのかもしれない。振られた男達のモデルは当時の権力者だけど。」

「何クソ真面目に話をすり替えてるんだ。ここはギュッする場面だぞ。」

「由利ちゃんが見てる。」

「由利ちゃんしか見てないから言うんだ。」

「だけど新月の夜だって俺はお前を探すよ。〈月はどこに行ったんだ。〉ってね。」

「なんだよ。それ、私が死んじゃったみたいじゃないか。」


 「弥生さんは半分笑いながら泣きそうな顔で先生を見ていた。」

と由利は宗久に言った。

「その話、本当になるなんて思ってもいなかったろうね。先生の怪奇譚『もののけのお話』は弥生さんがいなかったらここまで広がりを見せなかったのかもしれないな。」

 返事をしない由利を宗久は抱きしめた。

 由利は〈大ちゃんもクソ真面目だ。〉と思いながら、 校閲した『もののけのお話』をひとつひとつ思い出した、

『雪女』『鎌鼬かまいたち』『轆轤首(ろくろくび)』『吸血鬼(ヴァンパイア)』『妖精』『木霊(こだま)』…


「でもね、幽霊と恋愛したら怖いよ。先生には生身の女性と恋愛して欲しい。」

 由利は内広舞を思い浮かべて宗久に言った。

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