目指せ合格!
大変お待たせしました!
多忙で中々書けず、申し訳ないです。
お詫びといっては何ですが、少し多めに書きました。
楽しんでいただけますように。
また通常ペースに戻して頑張ります!
麦が回復して時は過ぎ、新しい年を迎えた。しかし、此処に正月休みなどある訳がなく、代わりにやって来たのは……
テストである。
「ねぇ、休憩していい?」
「あと少しだろ。それやってからな」
舞花がええ、と文句を漏らす。そして教科書やらノートやらで散らかった机に伏せると、俊佑はため息をついた。
私たちは、訓練所のワークスペースで勉強中だ。テスト本番まで残り一週間となった今日、遂にみんなが焦り出した。おかげでワークスペースは混み合っている。私は自室で勉強するつもりだったけど、舞花たちに勉強を教えてと頼まれ、断れなかった結果、今に至る。
「……ていうか、なんで僕が教えることになってるの」
「シュンシュン君は勉強が得意なんだって、朝霞君が言ってたよ」
流文の仕業か、と俊祐が頭を抱える。勉強が出来るという話を吹き込んだせいで巻き込まれたのだ。流文は後で怒られるだろう。
「ごめんね、巻き込んじゃって」
「佐倉は悪くないからいいよ」
私が謝ると、俊祐はそう言って笑いかける。その笑顔が、彼は優しいんだな、と思わせてくれた。
「そういえば、他のみんなは何処で勉強してるんだろう。麦ちゃんと彩奈は彩奈の部屋でやってるみたいだけど」
美煉がシャーペンを机に置いて、突然問う。もう集中力が切れたらしい。
「流文は屋根の上だったはず」
俊祐は書く手を止め、真面目に答えた。
「屋根?」
「寮の男子棟のね。どうもあそこが落ち着くらしいんだよ」
流文が屋根の上で勉強する姿を想像する。消しゴムを落として転がっていったり、風でノートのページが捲られたり。絵面がすごくて笑える。舞花も想像したのか、あはははは、と大爆笑。美里もクスクス笑っている。美煉だけは、楽しそう、と目を輝かせていた。
「正直テスト不合格でも、なんとかなりそうだよね」
「試験合格できる自信があるなら、別にそれでいいんじゃないか」
俊祐の曖昧な答えに、舞花が考え込む。
テストは【白天】に関する知識を問われるもので、合格しなくても第二試験は挑戦できる。ただ、合格した方が試験は有利だ。それは何故か。空中戦の攻略法を教えてもらえるからだ。この条件が、みんなのやる気を引き出している要因といえる。
「空中戦の攻略法、知りたい」
「じゃあ頑張って勉強しなよ」
俊祐がそう言った瞬間、舞花がシャーペンの動きを止める。私もその様子に驚いて、手が止まってしまう。
「今まさに頑張ってる人にさらに頑張れって言うなあ!」
舞花のスイッチがオンされる。キレ出した。こうなると私も手に負えない。
「舞花、落ち着いて〜。やる気が失せるのは分かるけど」
美里が声をかけると、やっと静かになった。このまま時間が過ぎていくと、私も勉強が進まない。
こうなったら。
「みんな、提案があるの」
「それでは、これより第一回【白天】早押しクイズ大会を行います!」
私が大会の開幕を宣言すると、みんなが拍手してくれた。集中力が切れたみんなが楽しく勉強できるようにと提案したのだが、上手くいくだろうか。
「出場者の舞花さん、美里さん、美煉さんには、そちらのボタンを押してクイズに答えていただきます。三人のうち、最も多く正解した方が優勝です。賞品として夕食のデザートが一個増量されるので、頑張ってください」
デザート増量という言葉で、クイズに参加する三人の瞳が眩しく輝く。やっぱり物で釣るのは良くないけど、やる気を引き出すとなれば妥当な方法だ。
クイズの出題者は私と俊祐。二人で交互に問題を出していくルールのもと、大会は進行する。
「第一問。【白天】が出来たのは西暦何年でしょう?」
三人が机をバンバン叩いた。もう必死である。一番最初に叩いた美煉に解答権が渡る。
「西暦20XX年!」
「美煉、正解」
「やったあ!」
三人とも引き下がらず、クイズは一時間半以上続いた。さらに出場者よりも出題者の方が疲れるという事態が発生。色々あったけど、結局のところ優勝したのは美里で、宣言通りデザートのプリンが増量されたのだった。
それでめでたしめでたし、ではない。
テスト当日まで、クイズ大会は繰り返し行う羽目になった。事の発端は、舞花と美煉がリベンジしたいと言い出したからだ。出場者も噂を聞いては段々と増加し、先輩達も来た。そのせいで、問題を出しまくる私と俊祐の疲労は困憊。麦が出題者として参加してくれなかったら、精神的な意味で死んでいたと思う。「私もクイズ出そうか?」と言ってくれた麦の姿は、一瞬だけど女神様に見えた。
当日。テスト本番。朝はいつもと変わらず、美煉が私の部屋に迎えに来てくれる。隣の部屋だから、迎えというほどでもないけど。
「水音ちゃん、おはよう」
「おはよう美煉ちゃん。眠そうだね」
美煉が目を擦り、欠伸を一つする。夜遅くまで勉強を頑張っていたみたい。
「テストは合格できそう?」と質問すると、「絶対できます!」と、自信満々の答えが返ってきた。これは点数に期待できそうだ。
テストが行われる講義室。そこにいるのは俊佑だけ。一人ぽつんと席に座って、教科書を熟読している。テスト前の最終確認といった所だろうか。
「俊祐君、おはよう」
「佐倉、おはよ。安藤は眠そうだな」
俊祐が私に挨拶するとすぐ、寝不足の美煉を気にかける。私と同じだ。
「日付変わる直前まで勉強してたの」
「直前って、十二時前?」
「ええっ……体壊すぞ」
二人で更に心配する。まさか深夜までやっていたとは。頑張るのはいいけど、やり過ぎだ。
「大丈夫だってえ。テスト終わったらいっぱい寝るから」
私たちの不安を他所に、美煉はニコニコしながらそう言った。
その後、みんなが揃うまでの間に少し確認を済ませておいた。全員が席につくと、依雲が画面に現れた。この瞬間から、テストはもう始まっている。テストの問題用紙と解答用紙を前列から回していく。全員に行き渡ったところで、依雲の合図。
「始め」
一斉にペンを取る音が聞こえ、テストが始まったのだと実感させられる。何度もやった、あのクイズ大会を思い出しながら、着々と問題を解いていった。
「そこまで」
最後の依雲の合図。今度は一斉にペンを置く。書くのはこれで終了だが、テスト自体の終わりはまだこれから。後列の人が問題と解答を別々に回収し終わったらだ。
「お疲れ様でした。答案は数日後に返却します。今日はゆっくり休んでくださいね」
依雲が愛想笑いを浮かべ、画面の中へと戻っていく。
「終わったあ!」
最初に声をあげたのは美煉だ。そこから波紋が広がるように、講義室が一気に騒々しくなっていく。
「あと心配なのは点数だね」
「きっと大丈夫だろ。クイズ大会はもう懲り懲りだけど、あれのおかげで勉強になったのも事実だし」
俊祐が胸を張って言い切る。そう言われると、不思議と大丈夫だと思えてくるのは何故だろう。
数日後、私たちは講義室に集められた。依雲がわざわざ画面から飛び出て、テストを返却してくれるのだとか。「返事しないと点数ゼロにしますからね」と低めに脅された後、順番に名前を呼ばれた。
「佐倉水音さん」
「はいっ」
ドキドキしながら答案を受け取る。九十六点。合格点は八十五点だから、余裕で超えてる。中々いい点数ではないだろうか。内心は不安だったけど良かった。
席に戻る途中、人が寄ってたかって騒いでいた。あそこは……俊祐の席だ。
「うわ、何その点数」
「何って言われてもな」
流文と俊祐の声が聞こえる。私は輪の中に突っ込んで、「どうしたの?」と尋ねた。
「ああ。見ろよ、この点数」
流文に紙を渡された。百点の完璧な答案用紙。氏名欄にはなんと『佐々木俊祐』という文字が並んでいる。
「すごい、私なんて九十六なのに」
私がそう呟くと、「お前も同レベじゃないか!」と流文につっこまれた。
私的には彼の方が、よっぽどすごいと思うけどな。
「佐倉も十分すごいよ」
俊祐はそう褒めてくれた。でも年下に負けたのはなんだか悔しくて、またテストをやりたいと思ってしまった。
そういえば、依雲によると、クイズ大会を何度も開催した甲斐があったのか、全員が合格できたそうだ。勿論、赤点もゼロ。これまでにない優秀さだと称賛された。
明日はいよいよ、空中戦の攻略法を伝授だ。




