動き出す歯車
焦った様子で私たちの元へ駆けつけてきた舞花と美里は、息を切らしながら説明してくれる。
「麦と流文君が……悪魔と戦闘してるの。天術は覚えてるからって、たくさん使ってて」
「それは危険です! すぐに止めなければ」
そう言ったのは夜星だった。彼女の話によれば、天術は基本的に武器と併用するらしい。武器は天力の消費量を抑えてくれる優れ物で、無いと天力を過剰に消費してしまい、体に負担がかかって危険だという。
「私はこの島に残った悪魔を倒す役目があります。ですから水音さん。貴女がこれを持って、お二人の攻撃を止めてきてください」
手渡されたのは、ナイフ。果物を切るような、包丁と比較して小さいタイプだ。
「これは簡易武器という、天力を込めることで天術を使えるナイフです。非常に脆いので、一度使えば壊れてしまうかもしれません。ですから、いざという時だけ使用すること。分かりましたか?」
コクリと頷く。
「先程は厳しく叱責しましたが、私は貴女に期待しているのです。頑張ってくださいね」
「……はい!」
期待されているのなら、それに応えなければ。私は遺体を木影に寝かせて、夜星と別れた。龍のサイズを小さくし、麦たちの場所を知っている二人の行く先へ付いていく。
「桜咲、不知火!」
下を見ると、俊祐が手を振っている。
「えっ、助けてくれる人って佐倉さんなの⁉︎」
「そうだよー、シュンシュン君!」
舞花が俊祐をあだ名で呼ぶ。
「分かった、三人とも付いてきて。宮本と流文がもう限界なんだ」
彼はあだ名を気にする素振りもなく走っていく。移動スキルを使わずに。
ダンッ!!
激しい音が響き渡る。宙に浮く一人の悪魔に対峙しているのは、麦と流文。二人とも息を荒らげていて、かなり体力を消費しているようだ。
その後ろで抱き合い、戦う様子を見ているのは、美煉と彩奈。ちゃんとペアで固まっているようで感心だ。
それよりも、早く助けよう。
私は龍の飛行スピードを上げる。
講義で学んだことを思い出す。悪魔にはランク付けがある。着ぐるみを纏う悪魔は、一番弱い下級悪魔。着ぐるみがなく、角や尻尾が生えた悪魔は中級悪魔。容姿は人間と同じだが、悪魔であるものが上級悪魔。これが最も強いのだと。
今、二人が対峙しているのは下級悪魔。最弱のはずなのに手こずっている。まだ足りないのか。あれだけ訓練しても、沢山の知識や技術を詰め込んでも、まだ弱い。まだ、勝てる力が無い。
ならば夜星は、織火は、木織は、どれだけ努力を積み重ねてきたのだろう。きっと数え切れない程やってる。私が近くで見てきたあの三人が颯爽と悪魔を倒せるのはそういうことだ。
私はまだ全然だけど、それでも今はやらなくちゃ。絶対に死なせたくない。
あと数メートルで着く。私は龍を消し、木の上に飛び乗る。
「水音ちゃん⁉︎」
「大丈夫」
美里にそれだけ伝える。貰ったナイフのカバーを外して、手で握った。そのまま木から木へ飛び移っていく。
いた、悪魔。標的に集中。
ぐっと踏み込み、木を蹴り、空中へ飛び出した。その状態で悪魔へ一直線。攻撃スキルを発動させる。
水天攻術【海原一雫】‼︎
ナイフを悪魔の胸へ突き刺す。
「うああ!」
悪魔は呻き声を上げ、気を失う。姿は人間に戻っていた。しっかり抱き抱える。ナイフは夜星の言う通り脆く、バラバラに砕け散っている。
「佐倉さん、危ない!」
麦の声だ。
元気そうで良かった……え?
「あ」
しまった、うっかりしていた。
空中で攻撃してたから、下に落ちる!
重力で急降下していく。思わず瞼を閉じる。このまま落ちたら死ぬのでは?折角みんなを守れたのに?こういう死の間際は走馬灯が流れる筈だけれど、何にもない。ということは……。
ふと、花の香りがした。
誰かの腕にすっぽりと収まる。
「あーあ、応援に来たら悪魔が倒されてるなんて。流石は私の妹ね」
聴こえてくる声。懐かしい。涙が出そうになる。
「お姉ちゃん」
「久しぶり水音。元気そうで安心したわ」
「……じゃなくて! 何で此処に!」
「さあ、何でかしら」
彼女は悪戯っぽい笑みを見せる。
行方不明の姉が、間違いなく其処にいた。
10部分突破記念《白天の裏側》コーナー
今回は女子達の髪型です。
正直どうでもいい情報かもなので、飛ばしてもらって全然大丈夫ですよ。
水音:ボブ 肩より上。
花彩:ポニーテール 割と上の方で結んでる。
織火:ロング 髪は太もも辺りまである。
夜星:ポニーテール 下の方。
美里:ツインテール 上の方。
舞花:ロング お尻の上ら辺まで。
美煉:セミロング サイドに三つ編み。
彩奈:緩めの三つ編み 結んでも腰辺りまである。
麦:ツインテール 下の方。




