#004 コンボイ
これにてプロローグ終了で次話から本編です。
この話の続きは本編の閑話で書きたく思います。
…現実世界に異世界からエルフとかくる作品はありますけど、
ひと家族(一夫ド多妻)が来たらどうなるんだろう…(震え)
コンボイが僕たちの目の前から消えてしまってから、もう二十年近くの月日が流れてしまった。
僕は未だに信じられない。あの日、僕達は急いで警察に連絡した。コンボイの行方を捜すためだ。大の男が人の目の前で消えてしまう。世間では想像以上の大事件となった。中には宇宙人による誘拐などという説すら有力性を帯びた事すらあったよ。悲しいかな多忙な世の中ではそんな事件ですら僅か数年で人々の記憶から遠ざかってしまうものなのだけどね。
しかし、コンボイの消息は一向に掴めない。最も動揺したのは彼と疎遠となったものであろうと思えたコンボイの家族だった。僕らは一丸になってコンボイを何年も何年も探して回ったが…見つからないのだ。一時は僕ら3人が容疑が掛けられるような記事を書かれたこともあったんだ。その時のチカの激怒振りは、今思い出しても震えがくるくらいだ…。チカがどんな手段を使ったのかは知りたくも無いが、その記事を世間に出した連中は社会的に抹殺されたというよ。恐らくコンボイの家族の力もあったに違いない。…彼の母親は未だに世界中を探し回っているというしね。
僕らはこうしてまた、コンボイが消えてしまった…彼の誕生日に集まっている。あの事件の後、コンボイの城であった工房とコンテナは撤去されて現在はただの空き地になってしまっている。この土地も離農などが進んで人離れが加速し、もうここら一帯にほとんど人も住んではいない。
僕とケンヂはすっかり白髪交じりになってしまった。何かと忙しい人生だったけど、互いに子供が成人したこともあってこうして集まってあの時の感慨に浸っているんだけど。
「はあ。この辺もすっかり変わっちまったなあ~…あんまり良くない意味でな」
「そう? コンボイが居た時からあんまり変わらないと思うけど?」
二人はまったく変わらない。僕と同じでコンボイを思い、こうしてこの日に集まったんだ。度々、コンボイの家族が同席することもあったよ。
「コンボイ…」
僕がそう口から漏らした時だったよ。急に僕らの目の前にあの日見た輝きが奔ったのは。
「嘘っ!?」
「まさか…あの時の連中が戻ってきやがったのか!?」
「チカ!!」
僕はまた誰か消し去られてしまうかと思い、咄嗟にチカを庇う。
…が、少しあの時と違うようだった。僕らの目の前にはポッカリと不可思議な明滅を繰り返す大きな鏡のようなものが現れたんだ。
「な、何だあ…こりゃあ?」
―…アレ? この子たちはあの時、コンボイと一緒に居た子じゃないかな?―
この声!? 忘れもしない。コンボイがあの光に連れ去られる時に聞こえた声だ!
チカとケンヂも気付いたのか顔を青くしていると、鏡の表面が波打った。
「……戻ってこられたのは何年振りになるのか。 …まさか……ハル、か?」
そこに居たのはコンボイだった!殆どあの時と変わらない姿…イヤ、綺麗に髭を切り揃えていて見た事も無いような民族衣装を着ている。何故かは知らないが、腰に棍棒のようなものを挿していたよ。
「コ、コンボイ!? 君なのかい!」
「嘘でしょうホントに!? うぅっ ゴンボォイぃぃ~!」
「驚いた!? マジでコンボイかよ!!」
僕達はコンボイに駆け寄った。ケンヂは泣き笑いしながら彼の肩を叩き、チカに至っては彼の胸に飛び込んで泣いている。…僕も相当酷い泣きっ面をしてるんだろうね。コンボイも泣いて、笑っていた。
「はっ!? オイオイ、こんなことしてる場合じゃあねえぞ! ハル!早くコンボイの実家に連絡してやれよ! 自慢の息子が帰って来たってなあ!!」
「そ、そうだったね!」
「…待ってくれ」
僕を手で制したのはコンボイだった。
「ちょっと何するのよ?」
「自分は既に世間じゃあ死んだ人間として扱われている…違うか? もし、そうでなくてもあまり大事にしたくはないんだ。それにな、この世界にはそう長くは留まってはいられない」
「どういうことだい?」
コンボイは真剣な表情でそう言ったんだ。
「おっと、済まないが連れがいるんだ…どうしても連れていけと聞かなくてな。悪いがチョット離れてくれないか」
僕達はコンボイによって鏡のようなものから離されると、また鏡面が揺れて誰かが出てくる。
「うげぇ~気持ち悪かったナァ~! ここが、コンボイの故郷かナ? 思いの外、良い所なんじゃあないかナ!!」
現れたのは両手にまだ幼い子供を抱えた少女?だった。だが違和感があったのは、肌の色がやや緑がかっていたのと頭部に動物のような耳が付いていてピコピコ動いていたことだ。ファッションもかなり過激だった。抱いている…多分女の子も同じ外見だったが、もう一人は全身を毛で覆われていて最初は子犬か何かかと思ったが、イヌのような顔の人型の生き物だったんだ。
「「なっ…なっ…!?」」
「……悪いが説明は後でな」
しかも彼女達だけではなく、後ろから次々と出てくる出てくる。最終的にはおよそ大人子供含めて五十人ほどにまでになっていた。閑散としていた周囲が急に騒がしくなったよ。外国人と思われる人達、つまり人間が2割くらいで、他はどう見ても人間には見えないような様相をした者達までいたんだ。
その中から妙齢の女性たちがコンボイの周りに集まってくる。どれも外見は違いこそすれ美しい容姿の女性ばかりだったよ。特に先程の両手に子供を抱えた女性がコンボイに人目を憚らずにキスしだしたのでチカが黙ってはいられなかったんだよね。
「ちょっとお!? コンボイ、誰よう!その女達は!!」
「ナぁ? おお!アンタ達が我が番の言う望郷の友達だナ? ガーはグールの女長にして我が番の一番の女! カリウ・コングだナ!!」
「つっ!つがいぃ~!?」
「コング…って、コンダ、じゃあなくて?」
「……色々と理由があってな」
コンボイは頭を掻いて恥ずかしそうな顔をする。
「じゃ、じゃあ…その両手の子供は…」
「んナァ、ガーの可愛い娘だナ! 少し前に産んだばかりだナ。コッチのは違うのナ」
「カリオの末の子だったか?」
「ナア!? 違うのナ! カリオの2番目の息子の子だナ! アンタの孫の子だナ~…仕事にばっかり夢中になってないで、いい加減覚えるのナぁ~」
「す、すまん…」
「「ひ孫!?」」
僕達は驚いて叫んでしまった。僕達の歳なら早ければ孫くらいいるかもしれないが…ひ孫は少し早過ぎるんじゃあないだろうか? というか、その人間と犬のハーフみたいな子はコンボイの家系の子供だったのも正直、驚いてしまった。
「というかナ。連れてきて貰ったのは皆、コンボイの女とその子供達だナぁ~」
「「ええっ!?」」
「ちょっとカリウ、ダメでしょ? 聞いたじゃない、この人の元居た土地では一夫一妻が基本だって」
「まあ、人間の男であんだけの女の面倒をみれるのは俺らの旦那くらいだろうがな!」
そう口を出したのがくすんだ鳶色の髪の美少女とボディビルダーのような肉体を持ったボブカットの女性だった。しかもビキニアーマーだった。コスプレでも無理なレベルの…。
「…すげえな、コンボイ。ハーレムってヤツじゃあないのか?」
「じゃあ、ここに居る全員がコンボイの家族ってこと?」
「んナァ。女と子供なら半分も連れてこれてないナぁ~」
「そうだな。旦那が情けを掛けてやった女なんて百かそこらじゃきかないんじゃあねえの?」
どうたらあまりの衝撃で気が遠くなってしまったチカを僕は慌てて支えるハメになったよ。コンボイは赤くなって押し黙っている。どうやら否定はしないようだ…。
「ん…なあ、ケンヂに頼みがあるんだが」
「えっ? どんな?」
コンボイはチラリと自身の家族を見ると、
「自分はこれからどうしても向かいたい場所があるんだが…連れてきてしまった以上、自分はコイツらを放ってはおけない。かといって目立つような移動手段は使えないそこでだ…」
ケンヂに頼み事をするコンボイの背には一本の、それは見事な日本刀があったのを僕は見つけたんだ。