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vivian  作者: トール
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ターナと私



私はヴィヴィ。


ヴィヴィアンていうの。


私、十四歳。お父さんとお母さんと三人暮らし。


お友達のターナちゃんとカミヤちゃんともとっても仲良し。


お父さんもお母さんもとっても優しいし、飼い犬のヤージもいて、毎日がとっても楽しいわ。



でもね、この前、とっても怖いことがあったの。


聞いてくれる?







ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



それは、一週間前の日曜日。秋の日差しの強い昼下がり。



山吹色が敷き詰められた街路樹。

木漏れ日に、揺れるイチョウの葉が舗装された白い歩道を煌めかせていた。



お友達のターナちゃんとカミヤちゃんといつものお休みの日のように集まり、この日は公園に出かけることになった。



いつもであれば、カミヤちゃん家でゲームをしながら、だらだらとおしゃべりをするのだけれど、何か変化が欲しいということで外に出かけることになった。




ターナちゃんは黒い髪が肩できれいに揃った目の大きなかわいい女の子だ。無口でクールでとっつきにくいが、気配りのできる優しい子だ。


少なくとも私はそう思っている。


『このままじゃ私たち三人ダメになる。たまにはだらだらすること以外をしなきゃ。』


と、ターナちゃんが言い出したことで、目的はないがとりあえず三人で街をトコトコ練り歩くことになったのだ。

私も部屋でだらだらすることに飽きていたし、ターナちゃんが言うことはいつも正しかったので、その提案に賛成した。



ターナちゃんと出会ったのは中学校に入学して三か月目くらいの頃。同じクラスだった。

彼女は人の悪口を言うことをひどく嫌っていて、そういう輪に参加しないことを徹底していた。

その理由を、出会って間もない頃に聞いたことがあったのだけれど、


『他の人を悪く言ったり、誰かのせいにしても、現実は何も変わらない。自分が変わらなきゃ。』

と言われた。

年頃の女の子が集まれば、大概は悪口大会になるのに。


無口でクールでとっつきにくいのはそのせいかもしれない。

彼女はいつも一人だった。


私自身はその言葉の意味をよくは理解していなかったけれど、

その言葉でターナちゃんの行動の芯を見た気がして彼女の強さを感じ、惹かれ、その日から彼女を意識し始めたのだった。



私はターナちゃんと仲良くなるため、とっつきにくい彼女の後ろをついて回った。

始めは冷たくあしらわれたり、無視されたりしたが、ドジでマヌケな私を見て、彼女は観念したのだろう、少しずつ会話をするようになった。



今に至るまで彼女が饒舌だったことはなかったが、私が初めて敬意を抱いた同年代の人が、私だけに緩んだ表情を見せてくれていることが嬉しかった。



ターナちゃんはよく私のことを褒めてくれた。



私の肩までかかった亜麻色の髪、


底抜けの天真爛漫さ、


彼女をつけまわした根気強さ。



モノは言いようだとも思ったけれども。



他の同級生とまったく同じようにしなければならないように感じていたことが窮屈なことに感じて、私は私のままで良いんだと思えてきて、自分に自信を持つようになった。


自分に自信がついたら、周りに感謝が出来るようになった。


感謝が出来るようになったら、幸福感に満たされた。




ターナちゃんと出会わなかったらこんな気持ちになることなんてなかっただろう。




『今』があるのは間違いなくターナちゃんのおかげだ。ありがとう。







そんな思いを感じながら、ターナちゃんとカミヤちゃんと三人でぶらぶらと近くの運動公園に着いた。








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