81.壇上の瓜生安吾
高等学校に行く意義を感じなくなった。
冬休みの宿題はやっていないが、そんなことはどうでも良かった。
学業成績と出席日数は及第点に達しているのだから、そんなものをサボったところで留年するわけでもない。
もしも宿題を提出するように強要されたら、その授業には出席しなければいいのだ。だから行きたくない理由は罪悪感からではなかった。
はあーと盛大にため息を吐いても気休めを言ってくれる鈴木がいない。
始業式を迎えた体育館は、生徒が密集した不快な暑苦しさと、真冬の肌寒さで満たされていた。
校長のくだらない話を聞き流すと、この冬休み中に校外で優秀な成績を収めた者たちが壇上に上げられた。鈴木もその中のひとりだった。
「文芸同好会の瓜生安吾です。年明けに行われた『文芸甲子園』に出場してきました。結果は第3位でした。山本由紀夫、竹沢弘也に次ぐ形になりましたが、私はこのまま終わるつもりはありません。プロの土俵では必ず逆転してみせます。
この学校の在学生として、そして未来の卒業生として、恥ずかしくない成果を残していきたいと考えています。今年度の文芸同好会では、多くの会員が離反するといった大規模な内部分裂がありました。これからはこのようなことが二度と起きることのないように後進を育てていく所存でございます。
最後になりますが、応援してくださったみなさまのおかげで、今の立ち位置にいられることを再度認識して頑張っていくつもりです。応援ありがとうございました」
淀みのない瓜生の弁舌により館内は拍手に包まれた。
平成の六歌仙と称されたという満島なにがしの名前が出てこないのは、大会の途中で敗退してしまったからなのだろうか。まあかなりハードなスケジュールだったから身体を壊してしまったのかもしれない。




