48.紫外線アレルギー
「あの、えと……」
今までは灰色のスウェットで隠れていたから、気が付かなかった。
「なにかあったのか?」
彼女は焼きそばを空容器にすると、
「本当は、教えるつもりは、なかったんですけど、私、太陽光に触れると、やけどを、する、体質みたい、なんです」
「日焼けってことか?」
「これが、日焼けに見えますか?」
その痛々しい細腕は、日焼けでは済まされないほど残酷だった。
「私にとっての、太陽光は、熱湯を注がれているのに、等しいんです。紫外線アレルギー。私は、紫外線アナフィラキシーショックと、呼んでいます」
それを聞いていろいろと合点がいった。
家族と主治医以外には話し相手がいないこと。夜中しか出歩けない性分であること。昼間は小説を読んだり、書いたりしていること。諸事情があって同年代の子ども達と遊べなかったこと。通信教育しか受けていなかったこと。小説はどんな人にも平等であると力説したこと。今日の待ち合わせだって日没が遅れたためだとしたら。
これらはすべてこの病気を示唆しているではないか。
すとんと腑に落ちた。
でもそれを知って、どう反応すればいいかわからない。
「えっと」
そう接ぎ穂を探していると、
「あれ、お姉ちゃん。こんなところでなにしてるの?」
中学生くらいの男の子が駆けてきた。頭の上にキャラクターのお面をつけている。
垢抜けない感じの少年だが、才介には見覚えがあるような気がした。
「うはは、才介。こんなところで会うとは奇遇だな」
鈴木もいた。わたあめを両手に持っていて、それなりに祭りを楽しんでいるように見える。




