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月が綺麗ですね  作者: オリンポス
第5章 伊藤汐と刹那的な美学
48/87

48.紫外線アレルギー

「あの、えと……」

 今までは灰色のスウェットで隠れていたから、気が付かなかった。

「なにかあったのか?」

 彼女は焼きそばを空容器にすると、

「本当は、教えるつもりは、なかったんですけど、私、太陽光に触れると、やけどを、する、体質みたい、なんです」

「日焼けってことか?」

「これが、日焼けに見えますか?」

 その痛々しい細腕は、日焼けでは済まされないほど残酷だった。


「私にとっての、太陽光は、熱湯を注がれているのに、等しいんです。紫外線アレルギー。私は、紫外線アナフィラキシーショックと、呼んでいます」

 それを聞いていろいろと合点がいった。

 家族と主治医以外には話し相手がいないこと。夜中しか出歩けない性分であること。昼間は小説を読んだり、書いたりしていること。諸事情があって同年代の子ども達と遊べなかったこと。通信教育しか受けていなかったこと。小説はどんな人にも平等であると力説したこと。今日の待ち合わせだって日没が遅れたためだとしたら。


 これらはすべてこの病気を示唆しているではないか。

 すとんと腑に落ちた。

 でもそれを知って、どう反応すればいいかわからない。

「えっと」

 そう接ぎ穂を探していると、

「あれ、お姉ちゃん。こんなところでなにしてるの?」

 中学生くらいの男の子が駆けてきた。頭の上にキャラクターのお面をつけている。

 垢抜けない感じの少年だが、才介には見覚えがあるような気がした。

「うはは、才介。こんなところで会うとは奇遇だな」

 鈴木もいた。わたあめを両手に持っていて、それなりに祭りを楽しんでいるように見える。

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