表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
月が綺麗ですね  作者: オリンポス
第2章 松岡千歳のオーディション
24/87

24.久闊を叙する

『お久しぶり。明日また会えるか?』


 才介がそう全国の暇人とチャットが出来るアプリで、月の化身にメッセージを送ったのは、実家に到着してからだった。ベッドで横になりながらぼんやりと送信ボタンを押す。


 彼女に出された宿題(ケータイのアプリと市販のゲームソフトでは、どちらが利益になると思うか。また、どのようにしてその商品をアプローチしていくか)については、明確な答えは出ていない。手軽さではアプリに軍配が上がるし、重厚さではゲームソフトに強みがあるということしか言えない。


 おそらくこの問いに正解はないのだろう。自由な発想力を鍛えさせるために設問しているのだ。どのように考えたかという結果ではなく、どのように考えるかという過程が重視されているのならば、マーケティングに置き換えた思考実験なのかもしれない。


 才介は、考える。


 どちらが利益になるか。オンラインとオフラインの違い。インターネット回線の普及。Wi-Fiスポットの増加。課金と無課金。

 既存のゲームソフトでもオンライン対戦は一般的だ。ポータブルゲーム機もあるから、ケータイアプリの利便性は必ずしも有利に働いているわけではないだろう。


 思考が円の周辺をぐるぐる回っているだけで、いつまで経っても出口が見えてこない。

 正解がないのだと仮定しても、この堂々巡りには意味があるのかと不安になってくる。

 スマートフォンがバイブレーションするのを感じて、才介は我に返った。


『ごめんなさい。これから一週間くらい用事があるのです。また会える日を楽しみにしております』

 才介は溜め息を吐いてから照明を落とした。


「経済の勉強をしろってことかな」

 一週間後。それは『歌ってみた』のオーディション結果が発表される時期とほとんど一緒だ。そのときには笑っていられるだろうか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ