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紅茶に砂糖をひとつ  作者: 由起
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旅行~ウェールズ③

日本が舞台のときは「」が日本語、『』が英語、

イギリスが舞台のときは「」が英語、『』が日本語

と分けています。

火曜日はアーサー自身が車を運転してウェールズの他の街へ行った。イギリスといえばロンドン、コッツウォルズ、スコットランド…という旅行が多いのが日本人だが、こうして地方都市へ案内付きで行ける自分は本当にラッキーだとみのりは思った。


昔の町並みを見て、少し離れたところにある国立公園へと出向く。自分一人ではとてもこんなところまで来られない。貴重な経験が出来た。


お昼はアーサーが「ウェールズといえばラムだから」と羊の肉のお店へ連れて行ってくれた。日本ではなかなか羊の肉を食べる機会がなかったみのりだったが、ウェールズでガッツリと羊肉を食べて、臭みがあると聞いていたけれど、意外と食べやすいものなんだなと思った。


そういえばスーパーでも最近は羊の肉を置いているなぁ…日本に帰ったら買ってみようとみのりは思った。


「明日僕は仕事があるけど、みのりは何して過ごす予定?」

「あの…お土産も買ったし、街も結構見たから…あなたのお屋敷の庭や飾ってある絵をみたいんですが…。もしあなたが良ければ」

「えっ、そんなの別に構わないけど…そんなのでいいの?どこか行きたいならロバートに何か頼んでおくよ?」

「こんな素敵なお屋敷で過ごすことはないので、あなたさえ良ければ…是非」

「じゃあ馬にも乗ればいいよ」

「馬?」

「うん、馬も何頭かいるから、乗馬も楽しめばいい」

「本当に?すごい!ありがとう」


みのりの目が輝いたので、アーサーは満足したのだろう。好きなところを見ていいよ、と言ってくれ、帰ってすぐに執事のロバートにそのことを指示してくれた。


毎朝あまりお寝坊するのも…と程々の時間…だいたい7時~7時半に起きていたみのりだったが、メイドはみのりが水道を使いだしてしばらくしてから朝食を持ってきてくれる。


毎回素晴らしいタイミングだったので、ついみのりは拙い英語で聞いてしまった。


「水道を使う音が聞こえますから、それからご用意するんです。」


客の動きを見て行動するなんてすごい!とみのりは感動した。50代後半のメイドは笑った。

「ここはウィルチャム子爵家ですから」


そっか…気配り抜群のアーサーのお屋敷だから、皆そうするんだわ。皆さんもすごいけど、主としてのアーサーってすごいんだわ…とふとした偶然でそんなすごい人と知り合ったみのりは自分がついていると思った。


その日は午前中に庭の散策と乗馬をし、お昼から本館の廊下に飾られた絵を鑑賞した。そしてもう一度庭を散策した。とにかく広いので、端まで行き着かない。戻る時間を計算しながら歩いた。


水曜日の夕食はアーサーが遠方まで出掛ける用事があるため、いつもより1時間遅い時間になると告げられていたので、みのりは乗馬で汗をかいたこともあり、先にお風呂へ入っておいた。


『はぁ~すっきり』


お風呂に入ったのにお化粧をもう一度するのはちょっと嫌だけど…素っぴんはねぇ…とみのりは渋々化粧をした。…といっても普段から化粧らしい化粧をしていないし、お出かけしても口紅をちょっと引き直すだけで、ファンデーション等はとりあえず持ったまま…なのであまり代わり映えしないのであるが。


車が本館に入っていく音が聞こえた。

(あ、アーサーが帰って来たんだわ。お仕事お疲れ様)

とみのりは親切な友人が疲れていないことを願った。


夕食を食べた後、アーサーが「いいスコッチがあるんだが飲んでみる?」と言ってきた。


みのりはお酒が強くない。

「私はアルコールが沢山飲めないの」と答えると、


「あはは、スコッチはそんなに沢山飲むものじゃないよ。少し味見してみるだけでいい経験になるんじゃないかな?」

とアーサーが笑った。


うん、確かにそうかも。いいものを少し味わってみる…そんな経験もなかなか出来ない。みのりは飲むことにした。


スコッチはアーサーの部屋にあった。

アーサーの部屋はみのりの客間より少し広い。調度品も深緑を基調としたもので統一されていて、落ち着いている。


大きなゆったりとしたソファに座るように促され、みのりが座ると、アーサーは小さなグラスにスコッチを少し入れて手渡してくれた。


「少し香りをかいでごらん?」


スコッチが初めてのみのりは素直にくんくんしてみた。その様が可愛い子犬のようにアーサーには見え、アーサーは軽くふふっと笑った。


「いい香りです。でも…スコッチが初めてなのでよくわかりません…ごめんなさい」

「みのりは正直だね」


アーサーはまたふふっと笑った。


「自分がいい香りだなと思ったらそれでいいんだよ。美味しいなと思ったらそれでいいんだよ」


優しく言うとみのりはなるほど、と思った。

少し口に含んでグラスを置き、鼻に抜ける香りを楽しんだ。


「みのり…」


みのりの隣に座ったアーサーがみのりの手を取り、 自分の方へ引き寄せた。


「アーサー…」

「みのり…ずっとここに居て欲しい」


アーサーはみのりに口付けをし、そのままソファに押し倒した。


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