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紅茶に砂糖をひとつ  作者: 由起
13/18

電話②

日本が舞台のときは「」が日本語、『』が英語、

イギリスが舞台のときは「」が英語、『』が日本語

と分けています。

みのりは仕事に精を出したが、どうしてもアンの可愛い声が頭から離れなかった。


会いたい。可愛いアンに会いたい。

気持ちが溢れた。


出産後に退院するとき、執事のロバートが迎えに来てくれた。アーサーが行きたかったが、産後の大事にしないといけない時にショックを与えてはいけないからとあえてホテルで待機していた。


可愛い小さなアンをロバートへ引き渡した時の絶望は忘れられない。


お腹の中でぐにゅぐにゅと動いていた我が子。

必死で産んだ我が子。

おっぱいに吸い付いて安心して身を委ねた我が子。


確かに酷い目に遭い、期せずして授かってしまった我が子。でも半分は自分の子供。自分がお腹で育てた大切な我が子。


手放したくない…とアンをぎゅっと抱き締めて、なかなかロバートへ渡せなかった。


ロバートは自分の主人がしでかしたことの罪の大きさをそのままホテルで主人へストレートに伝えた。


アーサーは罪の具現化であるアンをそれはそれは大切に育てた。とにかく大切に大切に育てた。甘やかすという訳ではない。きちんと公序良俗を教え、人を思いやれる子供に育てた。


アンを立派な子供に育てることで、罪を償う…そういう気持ちだった。


ある日1通の手紙が来た。

ロバートの筆でアンが夏休みに日本を訪れるという連絡だった。スケジュールがきちんと書かれ、アーサーがアンと一緒に来日するが、自分も同行するので、もしアンに会いたい場合は自分へ連絡して欲しいこと、アンにはアーサーがみのりに対して酷いことをして嫌われたこと、みのりがアンを愛してるということが日頃からアンに話されていることが書かれていた。


涙が出た。

ロバートの配慮はアーサーの配慮でもある。


悩んだ。会いたい。でも…。


もしこれが10年前ならみのりはアンに会わなかっただろう。しかし45歳という年齢がみのりを気弱にさせた。


日々仕事に邁進し、一人暮らしで「これでいいのか」と自問自答して過ごしていて、激務に少し心身ともに疲れ、30代の頃のように無理がきかなくなりつつあった。疲れも取れにくい。


悩んだ末にみのりは手紙に書かれてあったロバートのアドレスにメールを送った。

仕事があるので7月は休めないこと、土日なら会えることを書いた。また8月の自分の夏期休暇も書いておいた。


アンの学校は夏休みが長く、7月半ばから8月いっぱいが休みのようだった。


来日は7月半ばから。

土日にアンと一緒に過ごすことになった。


アーサーは…どうなるんだろう。

アーサーに会いたくない。

でもアンは私と二人で大丈夫だろうか。


実はみのりは辛い思いをしたものの、英語の勉強をこの数年間ずっとしてきた。以前の訪問時とは格段に異なる英語力がある。


ロバートの手紙にはロバートが同行して対応するとのことだったが…みのりはそれでも悩んだ。


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