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85話 不器用な笑顔と牙王

ミミの膝の上で目を覚ました。

これ程までに幸せな目覚めはないな。


「お目覚めですか?」

「よく寝れた。」

「それは良かったです。」


「ナイト。あんたに聞きたいことがあるんだけど。」

「?どうした改まって。」

「最初会った時、私のことどう思った?」


随分急な話題だな。


「んー。変な奴。」


俺がそう答えるとシェリーはずーんと効果音が出てきそうなほど落ち込んで?いた。


「やっぱそうだよね…。いきなり喧嘩売ればそうだよね…。」

「どうしたんだ?急にそんな話して。」

「ナイト様が寝ている間に少しお話したんです。お互いに出会った頃の話を少し。」

「私、あの時ナイトに啖呵切ったでしょ?だから、そん時どう思われたのか気になって...。」


なるほど。

まぁ、実際『なんだこいつ』って思ったし。

嘘、ダメ、絶対。


「まぁ、そう思ったのは事実だし。」


「いきなり『調子乗るな』とか意味不明なこと言われるし」

グサッ

「威勢張ってる割には盗賊にビビりまくりだし」

グサッ

「欲深くてすぐ宝箱開けるし」

グサッ

「罠にハマってすぐ諦めるし」

グサッ


「もう辞めて!私のライフはもう0よ!」

「全部短時間での出来事だが?もうギブアップか?まだあるぞ?」

「鬼だ悪魔だ、畜生だ。」

「俺的には褒め言葉だな。」


だって堕天使(あくま)だし。


シェリーを寝起きの頭の体操がてらからかって俺は鳳国に向かった。


「ゼクス。避難の状況はどうなってる。」

「お、ナイト。今のところは順調だ。」


鳳国の避難は順調らしい。


「ただ、途中モンスターの巣があって今カナが対処にあたってる。」

「カナに戦闘能力なんてあったっけ?」

「いや、ないな。」

「じゃなんでゼクスが行かないんだよ。」

「まだ鳳国には住民が残ってる。そこを襲撃でもされたら目も当てられないからな。俺が守ってるんだ。」


そういうことにしておこう。

ゼクスの周りじゃ先程まで訓練だか遊びだかをしていた男達が寝っ転がっている。


「まぁいいや。俺はカナの援護に行ってくる。」

「おう。俺は男達と遊んでるぞ。」


遊んでるって言っちゃったよ。

ちゃんと守るなら好きにしてくれ。


俺は街道を走った。

ものの2分で立ち往生している馬車が見えた。


「兵士諸君!私が強化するからもう少しだけ頑張って欲しい!」

「はい!」×5


俺が到着するとカナ達がたった5名で牙王(キオウ)に挑んでいた。


牙王は普段森の奥地に住み領域(テリトリー)に入りさえしなければ襲っては来ない。

気性は荒いが1度懐けば生涯寄り添う頼もしいパートナーとなる。

強さも他のモンスターより頭一つ分秀でる。


そんなモンスターに王国、帝国兵士5人で挑もうとしてるんだから無謀だ。

カナがいなければ今頃、牙王の胃袋の中だ。


「カナ!何遊んでんだ。」

「あ!後輩君じゃないか!丁度良かった!手を貸してくれ。」


元よりそのつもりで来たんだよ。


俺はカナからの強化を受けて牙王に突進する。

牙王も俺が危険人物だと認識、目には見えない速度で爪を動かす。

馬車の目の前に出来るのは隙間なく抉られる地面。


「遅い!」


俺は懐に潜ると『乱舞』を放つ。

神殺し(キル)》の下位互換。

10連撃の技で白い魔剣、エルシオンを主体とした技で威力は低いが貫通性に優れた技だ。


『乱舞』を受けた牙王はその場でうずくまった。


「流石私の後輩だ!先輩は嬉しいよ。」


カナは強化しかしてないだろ。

俺は心の中で突っ込みを入れる。


うずくまった牙王は完全に降伏したようで俺の頭より上に自分の頭を上げなかった。


「よし。お前にチャンスをやる。これから避難させる住民が乗る馬車の護衛を命ずる。もし、破ることがあればその時は…。分かっているな。」


俺が笑いかけると牙王は首を物凄い勢いで振って頷いた。

よし、これで少しは安心だろ。


「俺はしばらく居なくなるからこの小さいのの言うことをしっかり聞けよ。」

「コラ!先輩をつかまえて小さいのとはなんだ!カナはまだ成長期なの!」


ほう、652歳現在でも成長期ね。

安心しろ。もう止まってる。


「ハイハイ。すまなかったよ。んじゃカナ。こいつはこれから護衛をさせるからよろしく」

「あ、まだ話は…。」


カナの抗議を後に残して俺は横の森の中を走り抜ける。


すると、大正解。

辺り一帯のモンスターの領域がごちゃごちゃになってモンスター同士の争いになっていた。


『お前ら少しは落ち着け。』

俺は少しだけ怒りを含めた声でそう言った。


すると、この場にいた全てのモンスターが動きを止めた。

[威嚇]スキルは単純な威嚇とは違い絶対的な強さを示す。

そのため1度発動すると大抵のモンスターは従う。


「お前達に『頼み』がある。これから人を安全な場所に避難させなきゃ行けないんだけど協力してくれる奴はいるか?あぁ、あくまで『頼み』だから無理にとは言わないぞ。」

また俺は笑った。


そういえば俺のこうした笑いは目が笑っていないとマーリンから言われたことがある。

そんなことはない。ほら、だって実際にモンスター達は安心のあまりブルブル震えてるじゃないか。


馬車の護衛を打診(強制)した結果全てのモンスターが従った。


これで少しはスムーズに避難が出来るだろう。


俺は従えたモンスターを引き連れゼクスの元に戻った。


「おいおいナイト!どういうつもりだ!モンスターなんか大量に連れてきて!血迷ったか!」

「んなわけあるか!こいつらは馬車の護衛だよ。」

「召喚獣か?」

「んいや、その変で暴れてたやつを連れてきた。」

「大丈夫なのか?」


確かに召喚獣違いいつでも俺を裏切ることは出来るけど、そんなことをするやつこの中にはいない。


「大丈夫だ。俺がちょっと笑いかけたら仲直りしてくれたから。」

「あぁ、あれ浴びせられたのか。お前達も不運だったな。」


ゼクスは後ろのモンスター達に向かって労いの言葉をかけていた。

んー。そんなに戦闘中の俺の笑顔はダメか。


悪くない出来だと思ったんだけどな。

今まで戦闘中にわざと笑うことはなかったからな。


「まぁ、少しはぎごちないとは思うが...。」

「そのぎこちないの範疇に収まらないのがお前さんの作り笑顔だ。」


解せぬ。


しかし、こんな所で落ち込んではいられない。

俺にはまだやることがある。

避難させた住民の食料を届けなければならない。


丁度モンスターの繁殖期の最期当たりだからモンスターも増えているから肉を落とすモンスターを狩れば充分すぎるくらいにはなるか。


ゼクスと別れて未知の樹海の中に入る。

狩るのはラグーカウというこの時期のみ現れるモンスターだ。

気性は穏やかで主食は草。

そのため早く狩らないと他のモンスターに食べられてしまう。


まぁ、食べられてしまっても鮮度が落ちるだけでちゃんと落ちるからいいんだけど。


『ご主人様。私もお手伝い致します。』

『頼む。一先ずは40頭ほど狩ってくれ。』

『わかりました。』


カトレアと協力して違う場所でラグーカウを狩る。

1頭でもいればその近くに集団で生息しているので瞬時に血抜きまで施す。


こうすると鮮度が長持ちする。


ラグーカウを充分な数狩り終わる頃にはエルシオンがラグーカウの血で真っ赤になっていた。

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