83話 予兆
あるクエストの途中。
「疲れたー。もうやだあのモンスター。」
「シェリーからすれば嫌なんだ、あのモンスター。」
「そりゃそうよ。硬いし、速いし、私ばっか狙ってくるし。」
「好かれてるな。」
「モンスターに好かれても嬉しくない!」
いつものクエストの帰り道。
今思えばこれは、ある種の予兆だったのかもしれない。
「けど、ナイト今回全く攻撃してないわよね。」
「ん?あぁ、体が思うように動かなくてな。」
「体調わるいんですか?」
「主でも体調を崩すことがあるのか。」
おいコラ。
どういう意味だ。
「理由は分からないが体調が『悪い』んじゃなくて『良すぎる』んだ。」
「どういうこと?」
「そのまま、良すぎる。今までは単に魔力が上がるだけだったが今回は違う。速さ、攻撃力、体力。それら全てが上がってるんだよ。」
「気味が悪いですね。」
「ご主人様は前からこの症状が出ています。」
カトレアは[神眼]スキルがあるから分かるがほかの人は俺と《同調》するしか見える手段はない。
「んー。なにか心当たりは?」
「俺自身にはないな。」
「ナイトさん自身の影響じゃないとするとなんでしょう。」
考えたくはない可能性。
それが俺の中で出来つつあった。
急激に上がる魔力。
そして、先日からの大幅なステータスの上がり方。
レベルが上がっているわけではなにのにステータスだけ上がる。
これらを踏まえるとある一つの可能性に辿り着く。
「神々の侵攻。ですね。」
カトレア。大正解。
「え?どいうこと?」
「ナイト様のステータスアップと神々の侵攻となんの関係が...。」
俺は神が住む神界の方が魔力が濃いことを説明した。
「なるほど、それですてーたすが上がったのか。」
「けど、私達はそんな感じはないわよ?」
「確かに、魔法を使える者ならなにかあっても不思議じゃない。」
「神界はその名の通り神が住む世界だ。効果も神のみ現れるとしても不思議じゃないだろ。」
じゃなきゃ説明がつかないし。
「そうだとしたら早くベリアルに知らせた方がいいんじゃない。」
「もう知らせてある。いつ神々が襲って来てもおかしくないとは言ってある。」
しかし、分からない。
神界の魔力をこちらに流して自分達の神性を落とさないようにするためにこうしてるんだろうけど、そんなことをしたら追い出した神々のステータスも大幅アップされるとは考えなかったのか?
なにか対策でもしてるのか?
いや、そんなはずはない。
最高神の元を離れた神々は堕天使となり管轄からは外れる。
そんな追放したあとに見張ってもなにも干渉できないのだから意味が無い。
だとしたら、これは相手が馬鹿だとしかいいようがない。
恐らく、追放して神性が落ちた神はもう既に死んだとでも思っているんだろう。
さて、神々の侵攻に備えて作戦会議でもしますか。
「あ、ナイト。」
「来てたのか。フレイア。」
「うん。なんか落ち着かなくて。」
「?なんで。」
「いや、力が漲る的なそれよ。」
あー。フレイア達にも影響が出てるのか。
俺より低級だからまだないと思っていたが意外と神界からの魔力の流出は速いらしい。
「ベリアル。話がある。」
「言わずともわかる。作戦会議だろ。」
流石、わかってらっしゃる。
再度集まった3国。と一団。
王国、帝国、鳳国、ベリアルとフレイア。
「私達を集めたということは、なにか進展もしくは異常事態が起きた。ということで間違いないですか?」
「そうだな。今回は大事な話があって集まってもらった。」
「その話というのは神々の侵攻が始まった。ということだ。」
俺が話を切り出した瞬間に会議室に緊張が走る。
「鳳国より西側。木々が生い茂る未知の樹海内にて不穏な動きがあると俺の使い魔から知らせがあった。」
「未知の樹海とはなんだ?」
「その名の通り、まだ探索の手が届いていない地域のことだ。鳳国も戦力の不足で調べてなかったんだろうよ。」
鳥の使い魔の話では未知の樹海の奥深くにモンスター達が集まっているとの話だ。
それも、一種類ではなく何種ものモンスターが1箇所に集まっているらしい。
偵察に行こうとしたら撃ち落とされそうになったため帰ってきたとのことだった。
「そのモンスターの移動が神々の侵攻だと言う根拠は?」
「ない。」
「ない?だと?」
「根拠は別にあるということだ。」
「では、その根拠をお聞かせ願いますか?」
俺はこの場にいる全員に[神眼]の能力を与えた。
「な、なんだこれは。」
「俺の能力だ。相手の能力値を見ることが出来る能力。それで俺を見てくれ。」
「.....なんだこの数値。全てデタラメじゃないか…。」
レベッカがそういうのも無理はない。
ナイト・コア
種族:龍神
レベル125
スキル[剣聖]、[剛拳]、[体術]、[間接攻撃無効]、[根性]、[縮地]、[底力]、[索敵]、[魔法適性]、[全魔法強化]、[魔法耐性]、[状態異常無効]、[覇気]、[見切り]、[反撃]、[威嚇]、[自己回復]
能力《常識無効》《二刀流》《???》《???》
というように、スキル欄がとんでもないことになっている。
「これがどうかしたのですか?」
「俺がこうなったのは神界からの魔力の流れだと思っている。神の信仰が厚い鳳国なら知ってるだろ。」
「はい。神界はこの地上より魔力が濃いとされています。その流れ出した魔力によってナイトさんはこんなスキルなどが開眼したのではないでしょうか。」
大体あってる。
「これが神々が侵攻してきているという証拠であり解決のヒントでもある。」
「解決のヒントとはどういう意味だい?」
「神々はここを攻めるかなり前にほかの神々を追放している。それが彼女らだ。」
「火の神、フレイアです。ナイトの言う通り、最高神は自分の側近以外の神を神界から追放しました。」
「そして、フレイア達も神界からの影響を受ける。」
「結論をいうと、神々がもうすぐ攻めてくる。だから、できる限り俺に協力してくれ。」
3国から返ってきた答えは『勿論』という言葉だった。
「モンスターは足が速いものいるから少なくとも後7日で鳳国に到達する。出来れば鳳国の人間を王国か帝国に避難させていんだが行けるか?食料なんかは俺が用意する。」
「王国、受け入れ態勢は出来ていますよ。」
「帝国、同じく出来ている。」
よし、なら鳳国の住民の避難はバッチリだ。
それから、順番にやることを確認。協力するところは鳳国以外の国に頼んでもやってもらった。
残された猶予は7日。
神々を相手取るには短すぎる期間だがこれまでの協力があればいける。
この戦、俺達が勝つ。




