短編、第四の仲間 カトレア
お初にお目にかかります。
ナイト様の従者、カトレアと申します。
日頃は、ナイト様のメイドをしておりその他に冒険者などもしております。
冒険者ランクは、Aランクに所属しております。
武器は『双剣蒼紅刀』です。
以前ココさんに作って頂いた代物ですが中々に強力です。
スキルに[不壊]を持ち装備することによって[赤魔法強化]、[青魔法強化]が付与され魔法戦でも白兵戦でも戦うことができます。
私の自己紹介は、この辺にして私もあるエピソードをお話しようかと思います。
まだ神達の脅威など知らない頃の話です。
「ご主人様。剣を御教授していただけないでしょうか?」
「分かった。庭に行こ。」
私とご主人様は屋敷の庭にでてお互いに剣を構えました。
ご主人様の剣は、右手に黒い魔剣。左手に白い魔剣。
黒い魔剣は、全てを飲み込む虚無の魔剣。
白い魔剣は、全てを切り裂く断罪の魔剣。
どちらかが掠りでもすれば命取り。
「んで、なにを教えればいいんだ?」
「剣の基本からお願いします。」
「んーー。」
「いかがなさいましたか?」
「いや、剣に基本とかはないんだ。」
「基本がない?」
「そう。人には癖がある。カトレアの場合、初撃に剣を寝かせて斬り掛かる癖がある。」
思い返して見ればその通りだと思った。
その癖は、前からのものだった。
初撃を寝かせて放つことによって相手の剣をいなし、こちらの攻撃を高確率で当てることが出来るから。
初見相手ならまず引っかかる。
「その癖によって練習の仕方が違う。だから、基本なんてないんだ。勿論、その癖が剣術に支障をきたすものなら話は別だが…。」
「そうなのですか。」
「けど、まぁ、俺と打ち合ってみるか?」
「是非!お願いします!」
ご主人様と手合わせが出来るなんて思ってもいなかった。
前にご主人様から「カトレア達は守るべき存在だ。」と仰っていたことがあったのを私は思い出す。
その時私は思った。
(私はご主人様の足下にも及ばない弱者。ご主人様に守ってもらわないと生きていけない者。)
なんとも情けない。
ご主人様と共に冒険をしてきて色々身についたつもりだったのだがそれは、あくまでつもりの範疇に留まっただけであった。
今回、ご主人様に教えを乞うたのも強くなりたかったから。
ご主人様の右腕として信頼されるような立場でいたい。
そう願ったが故の打診だった。
「いつでもいいぞ。」
私が考え事をしている間にもご主人様はやる気満々だった。
これは、またとないチャンスだ。
ご主人様に助言をいただくチャンスだ。
「それでは、行きます!」
ご主人様は、その場から動かず私が距離を縮めるのをひたすら待った。
私の初撃。
ご主人様に当たるか当たらないかのところでご主人様が消えた。
すぐさま索敵。
私の前方から急激な殺気。
慌ててそちらを向くと消えたはずのご主人様がそこにいた。
私の剣を掴んだ状態で。
「カトレアは正直だな。」
「正直ですか?」
最初は何のことだか分からなかった。
「カトレアはもう少しフェイントを使うといい。フェイントは熟練相手にも通じる小細工だ。それが細かいほど相手は騙されやすい、その分威力は落ちるがな。」
「わかりました。」
ご主人様と私は再び打ち合った。
庭中に響く金属がぶつかり合う甲高い音。
私の青と赤の剣筋が、ご主人様の黒と白の剣筋がお互いを相殺し合う。
いや、辛うじて相殺出来ている状態だ。
ご主人様はただ剣を振っているだけ、私は身体強化魔法と属性魔法で戦っている。
これだけで、ご主人様との力の差は明らかだった。
打ち合っているとそのうち元の力により剣が吹き飛ばされてしまう。
「一つアドバイスをしよう。」
「何かに捕らわれるな。カトレアの戦いやすいように戦えばいい。俺の真似をしなくてもカトレアは十分強い。」
それでも個人的に納得がいかない。
ご主人様と同じ二刀流。
例え短剣を二本と言えど手数火力共に申し分ない。
しかし、今の私の全力をだしたところで、ご主人様の半分にも及ばない。
それは、[神眼]が物語っている事実。
卑下でも自傷でもない事実。
これが私を苦しめる。
「そういえば、ご主人様。お体に異常はありませんか?」
「いや、今のところはないな。まぁ、異常がなくはないのだが。」
「急激な魔力の増加ですか。」
「あぁ、全盛期をとうに過ぎた俺からすれば異常だな。」
ご主人様の魔力の上昇はご主人様が倒れた王都襲撃事件から始まってる。
その時からご主人様の魔力は増加し始めている。
それどころか、魔法の質、攻撃スピード、移動速度...と体の調子が出会ったときに比べ格段に上がっている。
「不便はないからいいけど。なにより戦いやすい。」
「ご主人様らしい前向きな考え方ですね。」
むしろ尊敬するレベルでした。
わたしはこれから強くならなければなりません。
ご主人様から聞かされたことです。
『俺はいつかこの世界を去らなければならない。俺が去った後になにかあったらその時はカトレアが片付けろ。』
と。
この言葉がなにを意味するのか私にはまだわかりません。
ただ単にご主人様が元の世界に帰るということなのかそれとも...。
いえ、これは考えないことにしましょう。
それでは、新人メイドの訓練がありますのでこれで失礼します。




