番外編、小さくなっちゃった!
番外編が本編より長いという。
朝。
俺はいつもより早い時間に目を覚ました。
隣ではミミが可愛い寝顔をして寝ている。
「この可愛さは反則まであるな。」
と、独り言を呟いた時にふと自分の体に違和感を感じた。
ミミに触れた自分の手が異様に小さい。
服もぶかぶかでまるで縮んだかのようだ。
ベットのそばにある姿鏡で見てみて驚いた。
「は?どうなってんだ?」
そこには明らかに小さくなった俺の姿があった。
「ナイト様が小さい…。」
「これがナイト?」
「ご主人小さーい。」
「これはこれで可愛いですね。」
「失礼ながらご主人様。お似合いです。」
「主にもこんな時期が...。」
と仲間からは好き勝手に言われる始末。
服はジルのを借りた。
今の俺の身長は143cm位。
ジルと同じ位だ。
年齢で言うと10~11歳くらいか?
とにかく、体が縮んだ。
「いかがなさいましたか?」
俺たちがリビングで話しているとシロが扉から顔を覗かせた。
「実はナイトが小さくなっちゃったのよ。」
「.....ショタ好きにはたまらないですね。」
人が縮んで最初の感想がそれか。
さすが変態。
「ふざけるなよ。俺は困ってるんだ。」
「なんで?」
「なんでって。体が縮めば力だって落ちるし体力だって落ちる。」
「じゃ今のナイトの強さってどれくらいなの?」
「ご主人様の戦闘力は、シェリー様と同格と思われます。」
「めっちゃ落ちてんじゃん。」
「だから、不便って言ったんだ。」
リーチだって短くなるし、高いところは届かないからほんとに不便極まりない。
「ベリアルさまに聞いてみますね。」
「頼む。」
ベリアルにこんな対象1人を幼稚化させる魔法などあるとは思えないんだがな…。
どう考えてもあまり使い道がない魔法だ。
人の身体に直接影響がある魔法はかなりの詠唱を必要とする。
戦場でそんな長い時間詠唱していたら敵に攻撃されて死ぬ。
相手に一時的なデバフを付けるなら即詠唱で済むが、人の体を縮めるとなると元の俺の魔力量でも2時間の詠唱が必要となる。
それを普通の魔力量で換算すると約2~3日かかる。
そんな大掛かりな魔法を使う奴はいない。
しかも、効果は1人なので尚更時間と魔力の無駄というものだ。
まぁ、前の世界のクソ魔術師ならやりかねないが。
「でも、どうすんの?」
「そうですね、この間に神々が攻めてきたら負けてしまいますよね。」
「確かに負けるな。」
主力と言われた俺がこの様ではな戦いにもならない。
「それにしても.....」
「?どした?」
「可愛い!」
そう言うとシェリーは俺を抱きしめた。
「ちょ、やめ、苦しい。」
「だって可愛くない!?いつもの大人のナイトもいいけど子供ナイトも私はありね。」
何を言い出すかと思えば…。
こっちは縮んで苦労してるって言うのに。
「シェリー様、奇遇ですね。私もありだと思います。」
「ミミまでなに言い出すんだ。って、いい加減放せ!」
俺はシェリーの拘束から逃れた。
「ケチ。」
「見た目は子供でも中身はそのままなんだよ。」
「じゃあ、中身も幼稚化してもらえば?」
戻った時に恥ずかしさで死ねる。
「冗談じゃない。」
「主はモテるのが嫌いなのか?」
「嫌いって訳じゃないが…。」
「なら、いいわね。」
俺は再びシェリーに捕まってしまった。
もういい。拘束から逃げるのは諦めた。
シェリーはミミと違って大きいという訳ではないがそれでもある方だろうから心地いいのは確かだ。
「クエストに行こうと思ってたのにな諦めるか。」
「そうですね、その身体で行っても危険なだけですもんね。」
ということで、家でゆっくりすることになった。
ちなみに、俺の身長が縮んだのはベリアルのせいではなかった。
俺の様子を見に来たベリアルにめちゃくちゃ笑われたのはまた別のお話。
「メア。いるかー。」
「今出ます。」
家でゆっくりするつもりだったが一応メアには報告しておこう。
ドアが開けられるとそこにあったのは少しピンクがかったドレス。
キュッと締まったお腹が見えた。
少し視線を上げるとメアがこちらを見下ろしていた。
「ナイト?」
「あぁ、そうだが。」
俺はぶすっとした声で答えた。
「驚きましたよ。いきなり小さな男の子が私の元を訪ねてきたのですから。」
「小さくて悪かったな。」
いつもなら余裕で足がつく椅子も今は少し高い。
「なぜそうなったのか。目星はついているのですか?」
「いや、まったく。」
「そもそも。こんな面倒かつ非効率な魔法を使う奴なんていない。魔力消費も詠唱時間も桁違いだ。こんなことが出来るなら王城で雇って貰えるだろ。」
魔法耐性が今現在一番高い俺をこんなふうにしたんだ相当な魔力量、集中力の持ち主だ。
「そうですね。.....それにしても.....。」
「可愛いとか言うなよ。」
俺はメアを睨んだ。
「可愛いですね。」
「人の話聞いてた?」
「だって、今のナイトが睨んだところで怖くありません。」
俺をこんな姿にしたやつを今すぐ殴りに行きたい。
「馴染み安いです。」
「俺はマスコットじゃないぞ。」
その後、メアにおもちゃにされたのは言うまでもない。
シェリー同様、抱きしめられたり頭を撫でられたりして遊ばれた。
「あ、ナイト。おかえり。」
「ただいま。」
小さくなって体力だって落ちているのに周りはお構い無しに俺で遊ぶ。
体力がない分相当疲れる。
「うーん。」
「どうした?」
「なんかやっぱりナイトって感じがしない。」
「何言ってんだ?」
「感覚的には弟が出来た感じ。」
まぁ、その感覚は分からなくはないが結婚相手が弟ね
「好きでこの姿でいる訳じゃない。解除の魔法を試してみてもまったく効果がない。」
俺自体の魔力量が落ちているというのもあると思う。
「じゃあ、一生そのまま?」
「なら、この世界は終わるな。」
「まぁ、私は今のままの方がいいけどね。」
まったくどいつもこいつも好き放題だな。
時は流れて夕方。
茶の実を飲みたくなった俺はキッチンにいた。
茶の実はお湯で煮詰めると苦くなる。それをまたお湯で割って飲む。
人によっては砂糖とかミルクとか入れるらしいが俺は何も入れない方が好きだったりする。
しかし、いつもの身長の俺が取るように置かれている入れ物に手が届かない。
背伸びしても全然足りない。
「主。どうした?」
「茶の実を取ってくれ。届かないんだ。」
「了解した。」
来てくれたのがイリスで良かったな。
多分ミミ達じゃ届かない。
俺のメインメンバーで2番目に背が高いイリスで良かった。
「はい。どうぞ。」
「おう、ありがとうな。」
「あの、その、主。」
「どうした?」
俺は今日「どうした?」しか言ってない気がする。
「抱きしめてもよろしいか?」
「なんで。」
「いや、主が可愛いとかそういうのは一切なくてだな。ただ、どういう状況なのか知るために抱きしめたいと言うわけなのだ。」
「つまり?」
「可愛いから抱きしめたい。」
俺の周りにいるやつ全員可愛いからいいもののこれがデブとかだったらもう潰されている気がする。
「取ってくれたからな少しだけだぞ。」
「ありがとうございます。」
そう言うとイリスはそっと俺を抱き上げた。
身長170cmのイリスからすれば俺はまったく持って小さいだろう。
イリスもイリスでデカいから気持ちいいが。
「ありがとうございます。普段は出来ませんがこういう時にはいいですよね。」
「?なんか言ったか?」
「いえ、何も。」
その後は、イリスに茶の実をいれてもらって午後の一時を楽しんだ。
そして、夜。
俺的には今日1日が長く感じられた。
「はぁ。いつになったら戻るんだよ。」
「気長に待たれてはいかがでしょう?」
「そう言って面白がってるだけだろ。」
「そんなことはございませんよ。」
だったら俺と目を合わせろよ。
「ナイト!一緒にお風呂入ろ。」
シェリーが突拍子なことを言ってきた。
「いやいや!体は縮んでるけど中身は一緒なんだって!」
「別にいいじゃん。夫婦なんだし。」
確かにシェリーと俺は夫婦だ。
しかし、俺の理性が耐えられる自信は生憎ない。
「たまにはいいじゃん。」
シアまでなにを言うか…。
俺の味方はいないか。
そして、今の力でカトレアに勝てる訳もなく脱衣場に引きずられてしまった。
観念した俺は服を脱いで風呂場に入った。
「ナイトとこうして入るのはバジリの温泉以来ね。」
「まぁ、あの時は成り行きだったし。無意識だったし。」
あの時はだいぶ印象が強すぎて今でも覚えている。
告白された経験があまりない男には刺激が強すぎたんだ。
「シェリー様はナイト様と一緒にお風呂に入ったことがあるのですか?」
「えぇ、バジリで1度だけ。」
「へぇー。そうですか。」
ミミさん?目から光が失われてますよ?
そして、俺の方を向いてにこやかに笑わないでいただきたい。怖いから。
「それにしても、ナイト。あんた身体中傷だらけじゃない。」
「たしかに傷多いですね。」
「ほとんど古傷だぞ?」
「それでも多すぎでしょ。」
二刀流を主力とする俺は基本的に防御をしない。
攻撃には攻撃で返すという戦い方をしている。
そのため、複数を相手にすると押し負けて攻撃を喰らうことが多い。
「まぁ、防御をほとんどしないからな傷も増える。」
この傷のほとんどはルージュが死んでからついたもの。
ルージュを守ろうとして、ルージュを守れなくて、暴れてついたもの。
決して忘れてはならない傷。
それから俺達は、なんにもしないまま、風呂から上がった。
そう、なにもなかったのだ。
風呂に入って少しゆっくりしたら寝るのだがこの時間も俺的にはかなり暇だった。
いつもなら武器の手入れをするのだが今日はクエストに行ってないため必要がない。
実に暇だ。
「暇という顔をしてますね。」
「それ以上近寄るな。変態。」
俺が暇をしていて寄ってきたのはシロだった。
「どうしてです?私はナイトさまを心配して...。」
「だったらそのよだれを拭け。」
俺を見つけてからよだれが流れている。
絶対なにか考えてる。
「おっと失礼しました。つい欲望が出てしまいました。」
「ホントに一回バラバラにした方がいい気がするな。絶対どこか壊れてるって。」
「ご心配なくこれでもシロは正常です。」
「それが正常と言ってる時点で異常なんだよな。」
「では、これからシロが正常だということをお見せしましょう。」
いつのまにか近づいてきたのか。
シロは俺をがっしり捕まえていた。
「やめろ!放せ!」
「あまり動かれると...。」
俺が暴れたせいで俺とシロは組み合う形となっていた。
「何言ってんだよ。」
「あん!」
シロから漏れる甘い声。
「な、なにしてんの?」
「私はアンドロイドですが性感帯はしっかりとあります。」
ベリアルめ。
無駄に精巧すぎなんだよ。
ロボットに性感帯とかいらないだろ。
そのあとは、シロが甘ったるい声をだしながらなんとか拘束を解いた。
その時の一言がこれである。
「やっぱりナイトさまはけだものでした。」
本気の殺意が沸いた。
分かり切っていたことだが寝るときもミミとシェリーに挟まれる形となって寝た。
身長が小さいせいでちょっと下に行くと胸に挟まれて窒息しそうになる。
この時は明日ちゃんと生きていますようにと願うばかりだった。
朝。
体はちゃんと戻っていた。
シェリー達からはもう一回小さくなってくれとか無茶ぶりをされたがそれはまた別のお話。




