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77話 衝突

ミミを救うため。


俺は敵陣の真ん前。


広い野原のど真ん中に降り立った。


二刀流を手に俺は無心で立っていた。

深く考えすぎると前の世界のようなことが起こってしまう。


俺的には大歓迎だが、今回はミミがいる。


ミミを巻き添えにしてまで滅ぼしたいとは思わない。


「敵襲!総員戦闘用意!」


敵陣が騒がしいがまぁいい。


怒りで眼が紅くなる。

まずい、自分を自分で制御出来ないかもしれない。

我を忘れる前に殲滅を開始する。


そのまま俺は敵陣、15万の兵に正面から突っ込んだ。



辺りがやけに騒がしい。


私が目を開けると沢山の人が私の目下にいた。


そして、その対照的な場所に立つのは1人。


遠くから分かるその姿。


黒髪で黒いロングコートを羽織っている。

冒険者でありながら防具などの装備は一切身につけず両手には白い魔剣と黒い魔剣。


そんな姿をしているのは待ち望んでいた、人。


ナイト様しかいない。


「ナイト様...!」


あまりの嬉しさに私は涙してしまった。


「あれが君のご主人様か。1人で突っ切って来るとは命知らずかな?」

「私のご主人様は強いです。最強です。」


私はムキになって答えた。


「では、最強と言われる所以をこの目に焼き付けようじゃないか。」


真正面から衝突した俺は無感情で敵を殲滅していた。


最前線には盾役(タンク)が5列程列を作って俺を迎撃しようとしていたが5列などないも同然だ。


この白い魔剣は、使用者の意思がダイレクトに伝わる剣だ。


斬りたいと思えば鋭利に、殺したくないと思えば鈍器になる。


魔法の適性があれば燃えろと念じただけで剣が燃え上がる。


敵を殲滅することしか考えていない俺の意思は万物を切り裂く刃となって敵襲いかかる。


「こいつ化け物すぎる!全然止まらない。!」

「助けて!嵐が迫ってくる!」

「ええい!引くな!我らの誇りに賭けて!」


そんな周りの喧騒も鳥のさえずり程度にしか聞こえない。


『邪魔だ!』

『失せろ!』

『消えろ!』


3つの魔法を同時に発動する、トリプルスペル。

赤色、青色、黄色の3属性での攻撃は発動時間、威力、連射性を考えたも無敵の統合スペルだ。


クタクタだったはずの体も数分寝ただけで全回復し今も無造作に剣を振っているだけなのに全く疲れない。


そうか、トラストリングの影響か。


ミミが俺に勝って欲しいと願っている故の力をなんだろう。


敵が逃げ惑い斬りかかって来る者をちょっと踏み込んで切斬るだけで武器諸共両断する。


この敵の数に一人一人剣術で相手していたのでは到底敵わない。


そのうち集中力が切れて雑になる。

だったら、最初から集中せずにぶつかった方がいい。


『殲滅する!』


広範囲攻撃のホリーレイピア。


これでもまだ5000程度しか減らせていない。


と、その時。


『見るといい!狂戦士(バーサーカー)大人しく投降すると言うならこの子は助けよう。まだ暴れると言うならこの子の命はないよ。』


穏やかな口調でこういうことを言うやつには録なやつがいない。


メアを取り合ったノーツもそうだった。


途中からタメだったが。


流石に俺からの位置では遠すぎる。


ミミを人質に取られたのでは何も出来ない。


『ナイト様!私に構わないでください!』


んなこと出来るか。


俺は敵にされるかまま、刺され、斬られ、殴られた。

痛い。

刺されようが斬られようが『最強』の自己修復で回復していく。

痛みだけが体を蝕む。


しかし、あの時...ルージュが死んでしまった時の心の痛みからすれば耐えられる痛みだ。


俺が変な真似をしなければミミには攻撃が向かない。

それでいい。

俺だけの犠牲で誰かが救えるならそれでいい。


俺は自暴自棄になっていた。

ミミに苦しい思いをさせていること。

仲間がいなければ無力な自分への怒りともつかぬなんとも言い難い感情。


自己満足(エゴ)だということは分かっている。

あの時助けられなかった命をここで助けることによって自分を安心させようとしている。


今の俺は完全に偽善者だ。



『ナイト様!』

『あはは!どうだい!自分の主がやられている様は!』


上からの声がうるさい。


しかし、ある時を境に急に痛みが無くなった。

敵は今も斬ったり殴ったりしているが痛みは感じない。


(なんだ?なにが起こっている?)


俺は突然のことに混乱していた。


(そうか。アレの仕業か。)


と、その時頭上をなにかが高速で飛んで行った。


『くがぁぁぁ!』


上の方からの声に全員が声のした方を向く。


さっきまで喋っていたであろう男の胸には一本の矢が刺さっていた。


攻撃が無力化された。敵が狙撃された。


こんなこと出来る連中を俺は知っている。


「ナイト!あんた馬鹿じゃないの!」


戦場中に響き渡る憤りを含んだ声。


「なにやられてるのよ!いつもはあんなに余裕で勝ってるくせになによ!こんな時ばっかり!いつものように強くなってよ!ナイト!」


んなことは、分かってる。


ミミを人質に取られ出たんだから仕方ないだろ。

と言い訳をしておこう。


そして、攻撃を無力化した犯人が見える。


「ナイト!無事か!」

「僕らも参戦させて貰うよ。」

「微力ながら助太刀させていただきます。」

「やっつけちゃうよ〜。」


意気揚々としたかんじでこちらに向かってきているのは2つ名達だ。


どうしてここに?とか無粋なことは聞かない。


俺が出ていく時に誰かに見られたんだろ。

カトレアか、シアか。


俺は1度後退した。



「やられてんじゃないわよ。私言ったよね!1人で背負い込まないでって!なのに、勝手に1人で出て言っちゃうし!シアちゃんが知らせてくれなかったら気づかなかったんだからね!それに!」

「シェリー様。今はこの辺にしておいた方がよろしいかと。敵が目の前まで迫っています。」

「まだナイトに話したいこと一杯あるから!後は勝ってからはなす!」



「ナイトも釣れないな。一言声をかけてくれれば力になったのに。」

「お前らに迷惑をかけたくなかったんだ。」


これは俺たちの...いや、俺の問題(失態)だ。

いくら2つ名仲間と言っても頼れる限度があること位分かっている。


「そんな遠慮はいらないよ!先輩に頼ってくれていいんだよ!」


この瞬間、俺は改めてひとりじゃないと思い知らされた。


「じゃあ、僕達も行こうか。」

「遅れた分ちゃんと取り戻しましょう。」


そう言うと。俺より先に走って行ってしまった。


「みんなありがとう。」


さて、俺もいつまでもジメジメしてるのは良くないな。

さっきまで自暴自棄になっていた自分が馬鹿みたいじゃないか。


いや、馬鹿なのか。

今尚、自己満足ということには変わりない。



ここにいる連中の前でネガティブは通じない。

そんな感情はすぐさま無駄だと思い知らせられる。


前にもあったな2度ほど。


さて、仲間がこれだけ集まったんだ。楽しくやろう。


先に走り出したカトレア達は既に交戦中。

シェリーの前にはイリス。

シェリーはイリスの後から後方支援。


カトレアとシアとララの見事な連携。


ララも含めた連携は俺も見るのは初めてだった。


そして、相変わらずの2つ名達。


マリは、軽やかな足取りからの細剣での鋭い突き。

ラートは、マリの後から後方支援。一応迫ってきた敵を剣で倒してはいるがその前にマリが倒してしまう。


カナは戦場を自由に駆け回り撹乱してる。時々、魔法で攻撃してるんだろうな。

ゼクスは、拳での打撃。拳を地面に打ち付けるだけで大地が割れ突き出す。


俺は二刀流による連撃。

しかも、1人に撃つのではなく敵の中心に降りてただ適当に剣を振るだけ。


剣術なんてやっている暇はない。



「怯むな!我らダリル様の誇り高き兵である!こんな蛮族如きに負ける我らではない。」

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」


総勢15万の兵の士気は一向に下がらない。


それは、こちら側が10人しかいないからかもしれない。


「今です!ユミルさん!」


カトレアがゲートを出すと物凄い数のメイド?が沢山出てきた。


メイド?なのは、全員それぞれの戦いに合わせた服を来ているから。


「遅くなり申し訳ありません。ここからは戦闘メイド達も戦います。」

「一つだけ命令する。」

「何なりと!」

「絶対に死ぬな。」

「はい!」×?


メイド達の参戦によりだいぶこちらの戦力が増えたものの15万には程遠い。


そう言っているあいだにも着々と減って来てはいるが最初の数が多いだけに全く減っている気がしない。


と、横にいるカトレアとシアとララの連携が崩れた。


屈強な兵士がカトレアとシアとララを殺そうと剣を構える。


駆けつけたいがこちらも手一杯だ。


『傍若無人なる風よ。我に力を!』


突如として聞こえた、緑属性の呪文。


しかも、緑属性の高位魔法。


「リーファ!」

「お久しぶりです。なにやら、大変なことになっているとカトレアさんからお知らせが来たものですから来てしまいました。」

「ありがとう!ほんとにありがとう!」


「いえ、お礼は私の働きぶりを見てからにしてください。」


リーファはカトレア達を殺そうとしていた兵士を緑魔法で吹き飛ばし新たに迫ってきた敵を愛剣で一刀のもとに斬り伏せる。


その切れ味。俺のエルシオンと大差ないだろう。


そして、次に現れたのはゼクスより心強いかもそれない助っ人だった。


「オレをほっぽらかしてなに面白いことしてんだよ!オレも混ぜろ!」

「カスピエル!お前も来たのか!」

「あん時私の胸触った礼はこの戦闘への参戦で許してやるよ。」

「いや、しかし...。」

「いつまでも小せぇこと気にしてんじゃねぇよ。オレはお前に助けてもらった時からなにか恩返しするって決めてんだ。それが今回の出来事だっただけの話。」

「オレ自身、そうしないと気が済まないんだ。」


意外と律儀な性格をしているな。

言動からは、想像もつかないが…。


「そうか。なら、思う存分暴れてくれ。」

「よしきた!さーて!暴れるぞ!」


カスピエルも大剣を構え突っ込んで行った。


鬼神の腕力、体力、脚力をなめないほうがいい。


魔力補強なしだった場合。


俺と同格まで及ぶ。

つまり、この戦場には俺が2人いることになった。


心強いことこの上ない。


カスピエルが来たということは、


「ナイトお兄ちゃん!来たよ!」


上からシルフィードという風鳥に乗ってクザフォンが来た。


『我が求むは東西南北を守りし幻獣。四神よ、我の呼び声に答えよ!』


クザフォンが詠唱を終えると空に巨大な魔法陣が4つ現れその中から


黒虎、烏、蛇、白龍の4体が出てきた。


どれも幻獣と呼ばれる希少種だ。


「皆ナイトお兄ちゃんの力になって!」


クザフォンの言葉により4体の幻獣が戦場を駆ける。


虎は爪で烏はくちばしで蛇は体を使い這いずり回り龍は上空からの龍魔法と


個々が得意とすることでそれぞれ戦っている。


「神と戦う前に揃ったじゃねぇか。」

「それ程、ご主人様に助けられた人物がいるということです。」


なら、助けに入ってもらった礼はこちらも働きで返そうか。


秘技二刀流《神殺し(キル)》の上位互換。


創造技(オリジナル)二刀流《唯我独尊(ワン)


この技の連撃数は50連もの連撃を相手に叩き込む。


右へ左へと動く黒白の剣先。

片方で受けてはもう片方で斬る。


敵の腕を、首を、足を、胴体を。

剣が通った後には血しぶきしか残らない。


50連の連撃の中に相手が攻撃出来る隙はない。


元の腕だけの力と最強の所以でもある速さを組み合わせるとその効果は絶大となる。


剣を振りながら動くその様はまさに切れる風。


風が吹けば既に斬られている。


そこに、盾という従来の防御では到底太刀打ち出来ない。即座に盾ごと斬られておしまいだ。


後で動けなくなってもいい。

ただ、ミミを救いたいという感情が俺の原動力となっている。


ミミの笑顔。少し怒った顔。お化けが怖くて泣きそうな顔。


どれも最高に可愛い。


その笑顔をまた見るために俺は剣を振る。

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