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72話 サーヤと不死のドラゴン

俺の仕事は堕天使集めだけではない。


普通の冒険者としての仕事もしなければならない。


冒険者はある程度のクエストをこなすか何らかの依頼をこなす必要がある。


俺の場合、冒険者としてのランクが高いため人個人の依頼を受けることが多い。


つまり、危険なクエストが回ってくることが多い。


そして、今現在その超難関クエストの真っ最中である。


内容はクロイズとシロイズの討伐。


クロイズは8頭の蛇で黒い鱗が特徴の俺からしてみてもだいぶ強い部類に入るモンスターだ。


シロイズはクロイズと夫婦関係にあるクロイズのことだ。


クロイズとクロイズが結ばれると片方のクロイズの鱗が白くなってシロイズになる。


結ばれた夫婦は常に行動を共にする。


今回の俺の目的はその夫婦が生成する結晶だ。


その結晶を粉にして飲むと万病に効くとされている。


クエストを頼んできたのは貧困の村の1人の女の子。


母親の病気を直して欲しいと。

俺の『リフレッシュ』で治しても良かったのだが俺に依存されるとめんどくさいのでクロイズの討伐をかってでたわけだ。


そして、俺は今そのクロイズ夫婦と退治している。


1匹につき8つの首、2匹で16つの首。


それが見事な連携を見せて攻撃を繰り返す。


場所は樹海の奥地、木が生い茂ってまともに身動きが取れない場所。


そんな戦況で俺はもう20分ほど対峙している。


(くそ。何度か攻撃はあたっているか決め手に欠ける。)


俺が攻撃出来るのは攻撃し終わった首。


つまり、引っ込める時に俺の攻撃は流されてしまっている。


そんなんでは、いくら攻撃力が強くても意味が無い。


(カトレアがいてくれれば少しは楽なんだがな。)


今のカトレアのレベルは、96。

クロイズの討伐依頼を受けられるのはレベル90程度。


余裕とは言わずとも単体でも充分倒せる。


しかし、今回は俺一人。


仕方ない。被弾覚悟で突っ込むか。


俺が突っ込もうとした瞬間。


俺のそばをものすごい勢いで何かが駆けていきクロイズの目にダガーを突き刺した。


「ナイト。そんなんじゃザラキは倒せないよ。」


俺のそばを駆け抜けたのはサーヤだった。


「どうやって倒すか考えてただけだ。」

「ふーん。じゃあ、もう案は出たの?」

「被弾覚悟で突撃。」

「それって捨て身じゃん。」

「倒せればいいんだよ。」


俺達が話しているともう一体のクロイズが攻撃したきた。


俺とサーヤはその場から飛び退き体勢を立て直す。


「共闘してくれるか?」

「そのつもりで追いかけて来たの。」

「そりゃあどうも。」


その言葉を合図にサーヤはクロイズの元に駆けて行き頭から頭へと飛び移る。


サーヤは攻撃せずただ迫り来る頭を避けるだけ。


サーヤが気を引いている間に俺は懐に潜って『神殺し(キル)』を放つ。


俺が攻撃を始めるとサーヤに向いていた頭全てが俺目掛けて攻撃を開始した。


しかし、20連撃を誇る『神殺し』を無傷で抜けるのは至難の業だ。

しかも、相手は頭一つ一つは別れていても大元は繋がっている。


俺を攻撃しようとした頭全て斬られて動かなくなった。


「助太刀ありがとうな。」

「別に。」


俺の背後からいきなり殺気が発せられた。


サーヤがスタンさせたクロイズがまだ残っていた。


俺の『神殺し』は連続で何度も放つことは出来ない。

それは、身体への影響が多く無理をすれば動けなくなってしまう。


「任せて。」

「頼んだ。」


その瞬間、サーヤが消えたかと思うとクロイズの頭全てが一瞬にして飛んだ。


サーヤの能力『首狩り』だ。


手際だけで言うのであればサーヤが勝つだろう。


「お疲れ。」

「あまり、使うもんじゃないね。集中できないや。」


サーヤは今にも倒れそうだ。


それもそのはず、サーヤの能力『首狩り』は相手の首を狙った一撃必殺の捨て身技。


当たれば勝ち外せば負けの賭けだ。


相手の首を狙うのだからそれなりの集中力が必要になってくる。


しかも、8つの首を同時に落とさなければならないのだからかなり集中しなければいけない。


そのため終わった後はフラフラだ。


「けど、俺達を初め狙った時そんなにフラフラじゃなかったよな。」

「あれは、ただ周りを斬っただけの攻撃。別に誰かの首を狙ってた訳じゃない。」


なるほど。だから、俺から逃げることが出来たのか。

いやまぁ、あれは逃げたというより消えたと言った方が適切だが。


「とりあえず、帰るか。」


俺はサーヤを横抱きにして抱えた。


「え、ちょっと。」

「ん?なに?」

「恥ずかしいから。下ろして。」

「いやいや、お前。フラフラなんだからしかも、ここまだモンスター出るからな?」

「ナイトは警戒心無さすぎ。」


俺がなかったら誰があるのだろうか?


「そういうの意味じゃなくて。女の子に甘すぎ。」


俺が疑いの目をしていたらサーヤが説明してくれた。


「仲間である限りできるだけ守りたいんだ。けど、俺は守り方を知らない。」


戦闘で守ることとはなんか違う気がする。


「だから、こういう風になっちゃう。」

「不器用。」

「よく言われる。」


「仕方ない。甘えて上げる。」

「そりぁどうも。」


はたから見たらただのバカップルだろうが俺的には気にしない。


まぁ、帰るなりシェリーやララに怒られたのは言うまでもない。



さて、俺は依頼者に結晶を届けて依頼を完了させた。


依頼数は1つだったが相手したクロイズがたまたま夫婦だったため結晶は2つになった。


受け取れないと言われたが何とか言いくるめて渡した。



帰って俺がベリアルと部屋に行くとちょうどフレイアが来ていた。


「久しぶり...でもないか。」

「この前あっただろ。」


俺とフレイアは何気ない挨拶を交わしフレイアの前に座る。


「で、なんの話だ?帰るなり変態(シロ)にここに行くように言われたが…。」

「ナイトに聞きたいことがあって。」

「?」

「ナイトが言ってたエレシュキガルって女神。連絡が取れなくて困ってるの。」


「まぁ、冥界の主人だからな。忙しいんだろ。」

「そうじゃなくて、物理的に連絡のしようがないの。冥界なんて1回行ったら帰って来れないし。」


あ、そういうことか。

でもな。


こっちの世界じゃ冥界へのゲートは繋がらないし...。



あ、あったな。冥界に行く方法。


「心当たりがある。それで、ダメだったらエレシュキガルの参戦は諦めよう。」

「その心当たりとは?」


「風都の不死のドラゴンだ。」

「そんなのがいるの?」

「あぁ、不死のドラゴンの住処は冥界に1番近いところにある。だとしたら行けるかもしれない。」


「ふむ。ではナイトにエレシュキガルとの接触を依頼しよう。」

「任された。」

「でも、大丈夫なの?」

「何が?」

「冥界に行ったきり帰って来なかったら...。」

「安心しろ。俺はそこまで柔じゃない。必ず帰って来るさ。」


ミミやシェリーを置いて死ねるわけない。

しかも、今の魔力量なら大体の敵には勝てる。



早速、俺は風都に飛んだ。

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