第三の仲間、シア
私の名前はシア。
元暗殺者。
元というのはご主人と出会って暗殺は辞めた。
理由は、暗殺する意味が無くなったから。
というのもどの戦闘面においてご主人には勝てない。
あの時...ご主人がバジリの領主を殺した時。
そう自覚した。
まだ暗殺術ならご主人に勝てると思っていた。
ご主人の攻撃は1つ1つが強力で大雑把な技が多いから
静かに対象を殺す暗殺術なら勝てると思ってた。
あの時私は暗殺をやめてまだ日が経ってなかったから夜中だったけど起きていた。
すると、ご主人がどこかに出かけていった。
こんな夜中になにしに行くんだろうっていう好奇心でついて行った。
勿論、最大限の[隠密]スキルを使って、じゃなきゃご主人に見つかる。
ついて行くとバジリの領主の屋敷に着いて警備を一瞬で眠らせていた。
その後はベランダで領主と対峙して何か話していたけど私の場所からでは遠すぎてわからなかった。
しばらく見ててご主人が消えたと思ったら今度は血だらけで出てきた。
そこで私はご主人が何をしにバジリの領主の所まで来たのかやっと理解した。
ご主人はシェリーとかが行く前に殺しに行ったんだ。
理由は分かる。
バジリの領主は獣人好きでいつミミとカトレアが連れていかれるか分からない。だったら、元を潰しておけば済む話。
それに多分ご主人はシェリーとか私をバジリの領主に会わせたくなかったんだと思う。
それだけじゃない。
ご主人は強いしカッコイイ。
相手が誰であろうと態度を変えないしそれが女王陛下でも変わらない。
そんなご主人が私は好き。
多分ご主人はミミのことが好きだと思う。
けど、いつかは私もご主人とけっこんしたい。
これは、私がご主人と過ごした1日の出来事。
「ご主人。格上との戦い方を教えて欲しい。」
「随分いきなりだな。別に構わないぞ。」
それで、私とご主人は広い庭で対峙した。
「取り敢えず、シアの型を見たいからいつものように殺す気で来てくれ。」
「分かった。」
私はホントにご主人を殺す気でいつものように、
正面からの攻撃と思わせて後ろからの頚髄を狙った攻撃。
[隠密]+[疾走]のスキルコンボは私の中でお気に入りで最強だった。
そう。だった。
ご主人は全く動かず背中に納刀してある黒い魔剣を出して私の攻撃を防いだ。
私が「分かった」と言ってまだ2秒も経っていない。
それにも関わらずご主人は防いだ。
いくらご主人でも驚きのスピードだった。
「今のはいい太刀筋でスピードも乗るから十分致命傷になりうるが格上相手だとそうは行かないな。」
「格上には皮膚を硬化させるやつもいるだろうしゼクスみたいな筋肉の塊みたいな奴には効果が薄いだろ。」
私はただ見蕩れていた。
さっきの2秒の間でご主人は私の常套手段のメリットとデメリットを見抜いた。
その観察眼と動体視力に私は見惚れた。
「格上相手なら無理に致命傷を狙う必要はない。危険と思ったら逃げることも大切だからな。」
「逃げるのは恥じゃないの?」
「まぁ、そう考える奴もいるだろうが俺は違うな。」
「その心は?」
「逃げずに戦うのははっきり言って馬鹿のやることだ。それが殿なら別だが1人なら逃げるべきだ。死んだら何も意味ないし。格上に無謀に挑んで死んだ奴としか皆の記憶には残らない。」
「だから、俺は戦いなんて無理に続行する必要はないと考える。」
「そうなんだ。そういう考えもあるんだ。」
「まぁ、今のは俺の持論だから、無理に従う必要はない。俺は自由が好きだ。なら配下にも自由を同じように与えるのは当然だ。」
「ご主人は優しい。」
「前にも言ったが俺は聖人君子じゃない。どっちかって言うと真逆だからな。優しいと思ったのは俺が気まぐれをおこしているからだ。」
「それでも、優しい。」
ご主人はこの世界の出身じゃないから分からないかもしれないけどこの世界では奴隷として堕ちた時点で人生が終わったと言っても過言ではない。
普通に暮らすためのメイド、仕事場のお手伝い。
この辺りならまだマシな方で酷いと、
性奴隷としての奴隷、ストレスのはけ口としての奴隷。
などと酷い扱いを受けることだってある。
それは、奴隷として扱われるともうその人には人権はない。
全てはご主人様に権利がある。
だから、普通は[奴隷紋術]を使ってご主人様に逆らえない用にするけど、ご主人はそれをしないで自由に動かせている。
その証拠にご主人のメイド達は色んなことをしている。傍から見れば奴隷だとは分からないほどに。
奴隷堕ちした者に明るい未来はない。
それがこの世界での常識。それをご主人はひっくり返した。
普通は出来る事じゃないし凄いと思った。
だから、ご主人が好きなんだと思う。...多分。
「取り敢えず格上とどうしても戦わなければいけない時は常に全力でかつ冷静に焦らず対象することだ。」
「そうすれば大体勝てる。まさか相手だって格下が自分に勝てるとは思わないだろうからな。」
「うん。分かった。ありがとう。」
「おう。」
これが私とご主人が過ごした1日。
私としてはかなり楽しかったしためになった。
ご主人といるのは楽しいしなにより今までにない感情が生まれる。
胸の辺りがぎゅっとするような感触。
この感触が何か私にはわからない。
そのうち分かると思うから今はいいや。
ご主人は世界で1番強くてカッコイイ私の自慢のご主人様。




