67話 真実と元SSランク冒険者
俺とシェリーが帰ると案の定大騒ぎになった。
それもそのはず、元は敵だったサーヤを連れていたから。
「ご主人様。この者はここに置いておいても大丈夫なのでしょうか。」
「多分問題ないだろ。今の現状でこいつが俺達を敵に回していい事なんて一つもない。」
むしろ、仲間がいなくなって自分の首を絞めることになる。
と、横から袖をくいくいと引っ張られた。
「どうした?ララ。」
「ナイトさん。シェリーさんとのクエストはどうなったんですか?」
「サーヤがいたから切り上げてきた。」
「大丈夫なんですか?切り上げちゃっても。」
「あぁ、その代わりに王都で買い物の約束をさせられたよ。」
「なるほど、シェリーさんも隅にはおけませんね。」
俺としては王都で買い物という方が憂鬱だな。
まぁ、今回は俺とシェリーの2人だから暇することはとくにないだろうが。
「ナイト。この子どうするの?」
「取り敢えず、好きに動いてもらって構わないぞ。ただし、俺の仲間の誰かを故意に攻撃した場合お前を敵と見なし殺しにかかるからそのつもりで。」
俺がそういうとサーヤはコクンと首を縦に振った。
よし、これで、誰かを襲うことはないだろう。
「サーヤは取り敢えず寝て来い。」
「え?でも私眠くない。」
「遺跡探索に致命傷を受けてんだ、休めるときに休んどけ。」
「う、うん。そうする。」
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ナイトに寝てこいと言われたが寝るわけにはいかない。
私には任務があるから。
『ナイトの仲間になることが出来た。』
『よくやった。サーヤ。』
『けど、あれは酷い。危うく死にかけた。』
『それに関しては申し訳ない。奴には[神眼]と言われる魔眼にも匹敵する未知の能力を有している。ああでもしないと守りの中に入ることが出来ないのだ。』
『それで、私はこれからどうすればいい?』
『無害なふりをしてそこにいればいい。くれぐれも怪しまれないようにな。』
『わかった。』
そういって私はザラキとの通信を切った。
私の目的は復讐なんかじゃない。
ナイト達の動きを監視して先手を打つこと。
ナイト達には悪いけど、裏切らせてもらう。
「強い者が全てを握る世界。ナイトは弱い。」
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ところ変わって俺は王城に来ている。
「で、今回はどこに出たんだ?」
俺は揃っている面子の顔を流し見る。
「話が早いな。なぜわかった?」
「なぜも何も俺達が招集されるんだ。また、召喚獣が暴れたと予想くらいはつく。」
「ナイトの言う通り、今度は王国と鳳国との国境付近で召喚獣が暴れたとの報告が来ました。しかし、」
「俺が来る頃には消えていたと。」
「はい。」
召喚者はなにがしたいのだろうか。
国通しの仲を悪化させたいなら、こんな回りくどいことしないで直接密書とでも言って各国に渡せばいいだけのこと。
それなのに、国境付近で暴れるだけ。
しかも、人がいない森や廃墟といった被害が最小限で抑えられる場所に現れている。
「犯人はなにがしたいんだろうね。」
「それがわからないのです。被害は辺りの木々が倒れた程度、被害者はゼロ。」
「なにかのメッセージということはないか?」
「なにかのメッセージって?」
「誰かに何かを伝えるために攻撃暴れている。被害が最小限なのは相手に伝える上で必要ないから。」
たしかにその可能性がなくはない。
しかし、
「そんな曖昧なメッセージで伝わるか?普通。」
「多分伝わらないね。よくて暴れさせているところを捕まって護送先で目当ての人に会えるかもしれないから。」
「そんな賭けみたいなことしなくても本人に直接会いに行けばいいだろ。」
「ほら、そこはロマンだよ。」
ロマンで毎回招集されるこちらの身にもなってほしい。
「メア。国同士の関係は変わっていないな。」
「はい。国境付近ということもありお互いに無関係と表明しています。」
「帝国、鳳国ときたから、次は、エルディアとの国境か。」
「けど、エルディアろの国境は運河だよ?」
「順番通りに行ったらそうなる。警戒するの越したことはない。」
「では、ゼクスとカナにエルディアとの国境付近の警備を命じます。ほかの方々は基本自由ですがすぐに招集に応じれるようにしておいてください。」
今回の騒動の犯人は恐らくクザフォンで間違いない。
暴れたのがグリフォンなんだ。
それを使役しているということはクザフォンだろう。
(はぁ。会いに行くか。)
前回の帝国と王国で暴れたのが5日前。相手が俺に会いたくて動いているとすれば周期的に暴れる。
そこを狙って暴れる前にクザフォンを見つける。
俺は取り敢えず、家に帰った。
「ナイトか。どうしたこんな時間から夜這いか?」
「だったらどうすんだよ。」
「兵士の英気を養うことも将の務めよ。」
「生憎間に合ってる。」
「だろうな。して、今日はどういった要件だ。」
「お前の過去について聞かせてほしい。」
「...構わないが、あまり面白い話でもないぞ。」
「大丈夫だ。」
「私は行った通り堕天使だ。故に他の神からは常に後ろ指を指された。そして、私を邪魔だと思った神に私は殺された。今回のはその復讐をしようという魂胆だ。」
「違うな。俺には噓は通じないぞ。」
俺はしっかりとベリアルを見つめた。
「...やはり、持っていたか。神のみぞ持つ[神眼]を。」
「あぁ、俺の神名はルシファー。天使九階級のうち最上職の熾天使だ。神に最も近づいたんだ持っていてもおかしくはない。」
「降参だ。真実を話そう。」
「最初っから復讐心なんてものは持っていない。あるのは人類の存続だ。」
「また、大きな話題だな。」
「神の元に私の使い魔を放っているが神共のやろうとしていることは非人道的だ。」
「今いる生物全てを消し、自分たちでまた新しい文明を作ろうとしているのだ。」
「白紙に戻すってことか。」
「簡単に言えばな。私はサキに憑依していたのではなく元々存在していたのだ。今までサキの中で寝ていた。」
「私の分身である使い魔から神共が碌でもないことをしようとしているという情報が入って私は目覚めた。」
「復讐じゃないとすると神との戦いはどうするつもりだったんだ。」
サキは人間だ。人間の体で神の一撃が耐えられるわけはない。
これじゃ、玉砕にもならない。
「カスピエルとかを集めたところでそんなに意味はない。俺は存在は想定外だ。俺を数に入れることはできない。」
「いや、ナイトを数に入れることはできた。」
「なぜ?」
「元SSランク冒険者を知っているか?」
「まぁ、名前だけなら。」
「その者が言っていたのだ。『想定外が近いうち...100年以内に来る。その者は神をも凌駕する力を持っている。仲間にしておいて損はない。』とな。」
「それが俺だと?」
「あぁ、そうだ。彼が死んでから丁度100年。神をも凌駕する力を持った者はナイトただ一人だ。」
やっとつながった。
アルンでもアルベスタでもバジリでも魔都でも決まって言われることがあった。
『元SSランク冒険者のマーリン様のご子息様ですか?』と。
俺も元SSランク冒険者が一人しかいないこと、その冒険者はもの凄く強かったこと。などある程度の知識はあった。
しかし、生憎俺は、マーリンとかいうのは常にヘラヘラしている魔導士にしか知りあいはいない。
しかも、その子供?
速攻で父親の首を取りにくが?
それくらいの印象だ。
つめり、周りの人たちは俺の強さから昔の大英雄マーリンと俺を重ね合わせたんだろう。
これで、元SSランク冒険者と俺との関係は解けた。
「さて、そろそろ、話は終わりにしよう。あまり独り占めしていると神と戦う前に違う者と戦わなくてはいけなくなるから。」
ベリアルが指した方向、扉の方を向くと。
器用にこちらを覗くミミ達の姿があった。
「また、話は時間があるときにしよう。」
「あぁ、頼む。」
俺はベリアルにそう言って、ミミ達の元に向かった。




