65話 クザフォンと召喚獣
「帰ったか。ナイト。」
「あぁ、予定通りカスピエルを連れてきたぞ。」
俺の隣では、またもや鎖につながれたカスピエルが暴れている。
「...ナイトに束縛の性癖があったとは驚きだ。」
「んなわけあるか。こいつが暴れるから鎖で繋いだだけだ。」
「放せ!オレを解放するんじゃなかったのかよ!」
「お前が暴れるからだ馬鹿。」
「取り敢えず、カスピエルの身柄はこちらが預かろう。」
「あぁ、そうしてれ。」
俺はカスピエルの鎖の先をベリアルに渡して部屋を出た。
「おかえり、ナイト。あれなんだったの?」
「戦闘神。」
「戦闘神ですか...。なら、あの凶暴さも納得がいきますね。」
「ほんと大変だったんですよ。洞窟前は、モンスターの巣窟だったし中は暗いしあの人凶暴だったしで疲れました。」
「ララは大変だったのか。お疲れ様。」
俺は座っているララの頭を撫でた。
「そういうことなら、私も行けばよかったわ。」
「そうですね。ナイト様によしよししてもらえるなら私だって行きました。」
それだけで行く理由になるんだ。
女の子ってわっかんねー。
ちなみにシェリー達は俺とララが≪同調≫で帰ると伝えた時に帰ってきた。
それまで、買い物していたってことだよな...。
女の子ってわっかんね-。
「まだ、一人見つけたくらいだ。あと2人、『クザフォン』と『ワーヤック』この2人の居場所だよな。問題は。」
「その二人にはなにか言い伝え的なものはないの?」
「カスピエルと違って残ってないな。」
「クザフォンという神については主様から聞いています。」
「クザフォンという神は神獣使いです。相方のグリフォンをはじめとする神の使いを使役しています。」
「名前のクザフォンもグリフォンからとったと言われています。」
「んー。それだと、居場所がわからないな。」
「お役に立てずに申し訳ございません。お詫びに私の初めてを捧げます。」
「いらんことすんな!」
俺はシロの頭に空手チョップを放った。
しかし、さすがアンドロイド無駄に硬い。
俺がシロの対処に困っているとメアから連絡が入った。
『ナイト。今すぐ王城に集合してください。緊急クエストを発行します。』
どうやら、平和な感じはしない。
連絡を受けた俺はすぐに王城にとんだ。
俺が王城につく頃には俺以外の二つ名持ちが集まっていた。
「なにがあった。」
「また帝国と王国との国境付近でモンスターが暴れているとの情報が入りました。」
「それで、王女から連絡が来て僕たちもここに集められたという訳さ。」
「けど、さっきちらっと見たけど何もいなかったんだよね。」
「む、確かになにもいなかったな。辺りには暴れた跡だけ残っていた。」
「消えるモンスターなんて俺でも対処出来ないぞ。」
「いえ、問題は、そのモンスターが召喚獣ということです。」
「なぜ、わかる?」
「ナイトは知らないのですね。」
「ではでは、ここは先輩が教えてあげよう。」
「召喚獣というのは、その名の通り誰かに召喚された獣のことを言うんだけど召喚された獣には体のどこかしらに主の象徴となる印が付くんだ。今回暴れたモンスターにはその印がついてたんだってこと。」
俺はこの時、面食らっていた、カナからこんな真面目な話を聞けるとは思ってなかったから。
どうせ、ばこーんとかずこーんとかいう語彙力の欠片もない話をされると思い込んでいた俺はただ驚いていた。
「わかったかい。後輩君。」
そして、カナは無い胸を張った。
「あぁ、何となくわかった。」
「カナが真面目に説明してるだと...!」
「もー!カナだってやるときはやるよ!」
ん?やるときはやる?
人に見知らぬ土地を弾丸を避けながら駆け抜けろとか言ったのに?
「けど、召喚獣ならなおさら見つけにくいじゃないかな。」
「そうだな。話通りならいつどこに現れるかわからないからな。」
「しかも。王都など、大都市でやられた場合、被害が尋常じゃないくらい出てしまいます。」
「一応王都には召喚術を使えないように結界は張っていますがそれを破られてしまうかもしれませんしね。」
「ナイト。なにか案はないかい?」
「案と言ってもなー。さっき説明受けたばっかだしな。」
「案と言えば、なんで国境付近で暴れたりしたんだ?」
「それは...なんでだろね。」
「召喚者は、王国と帝国を衝突させようとしてるんじゃないか?」
「つまりは、両国の戦争ですか?」
「そういうこと。そして、両国が戦争をして得をするのは?」
「鳳国かエルディアだな。」
確かにその両者なんだが、ここでも問題がある。
鳳国は、戦争否定国だ。
そんな思想をかかげている国が自ら戦争なんて起こすだろうか?
それに、エルディアだって、唯一の生命線を自ら消すようなもの。
システィーナだって、そこまで馬鹿ではないだろう。
「しかし、王国と帝国が戦争したところで何にも得はありませんよね?」
「そこなんだよな。問題は。」
となると、鳳国でもエルディアでもない第三者の介入ということになる。
誰がなんのためにこんなことをしたのか…。
「そういえば、召喚獣ってどんな奴だったんだ?」
「話によると、顔は鷲、体は獅子のキメラの類ではないかと。」
「ん?それって神獣のグリフォンじゃない?」
は?神獣が暴れた?
「確かにイメージするとグリフォンだね。けど、」
「そんな、神獣を使役出来る者なんていませんよ。ナイト以外。」
「へ?俺?」
「確かに、ナイトなら使役してそう。」
いやいや、召喚術のことすら知らなかった俺が神獣なんて使役してるわけない。
「けど、ナイトなら神獣なんか使わなくても単騎で王国を潰せますよね。」
メアが笑顔で恐ろしいこと言いやがった。
そりゃ、ゲートはメアの部屋に繋いであるから、夜中にでも侵入して連れ去れば、王国は機能しなくなる。
そこを狙って襲撃すればまぁ、潰せるわな。
「後輩君?やらないでね?」
「やらないよ。俺をなんだと思ってるんだか。」
「「「「「常識破りの超人。」」」」」
息の合った回答をどうもありがとう。
全然嬉しくない。
「俺のことなんてどうでもいいんだよ。それより、これからどうすんだよ。」
「各自、自分のクエストに戻って貰って構いません。ナイトがすぐに駆けつけてくれれば解決ですので。」
「なら、カナ達は戻ろうか。」
「僕達も戻ろうか。サチとアサが心配するといけない。」
「それじゃナイト、また、一緒にクエストに行こう。また素晴らしいものを見せよう。」
素晴らしいものねー。
「次やったら、お前も道連れな。」
俺達は、笑顔のままラート達がゲートをくぐるのを見届けた。
「ナイト。お願いがあります。」
「?なんだ?」
「今日は一緒にいてくれませんか?」
「なんで。」
「女王だって乙女です。話し相手だって、欲しいですし、気を抜きたいのです。」
「よーするに、遊ぶから付き合えと。」
「そういうことです。」
「別に構わないぞ。」
「そーとなれば着替えなきゃですね。この格好じゃ目立ちます。」
目立つより以前に遊びにならないだろ。
普通の人は、恐れ多くてひれ伏しちゃうよ。
それに比べて俺って異常なのか?
まぁ、いいや。
俺はメアが着替えるのを廊下で待っていた。
でてきた彼女は、ほんとに女王か?と疑うほどの地味な格好をしていた。
ヨレヨレのグレーのシャツ下は茶色のロングスカート。
ブロンドの髪は、横に三つ編みされていて、伊達メガネもかけている。
これで、女王と分かるのは[神眼]持ちくらいだろ。
「お待たせしました。では、行きましょうか。」
俺は、メアに手を引かれる形となり、王都の街に繰り出した。
シェリー達にも連絡はしたがめっちゃ怒られた。
なんで?
メアとの王都デートは、番外編として書きますので少々お待ちください。




