63話 追放とエルディア
「お前はあの時の...。」
男に襲われそうになっていた人物は、火の神、フレイアだった。
「ナイト様のファンの方ですよね?」
「正確には、ストーカー。」
「ちょ!私はストーカーじゃないって!」
「それ紛いの行動はしただろ。」
「うっ。そ、それはそうだけど…。」
「で、なんで神がまだこんなところにいるんだ?神界に帰ったんじゃなかったのか?」
「私に帰る場所なんてないわよ。」
「どうやら、訳ありみたいですね。」
「つい、数週間前までは私も神界で暮らしてたんだけど、いつの日か、最高神様がお怒りになって自分の側近と数人の神を残して神界を追い出したのよ。」
「で、途方に暮れたと。」
俺がそう問うとフレイアはコクンと頷いた。
「なるほど、いいことを聞いた。」
「どうなさいますか?」
「追い出された神全員を味方にする。」
腐っても神だ。
いくら、最低神と言っても今のカトレア位の力はあるはず。
この地上でも攻撃魔法が弱体化されるだけで回復や援護魔法までは、弱体化の対象ではない。
「フレイア、名前がある神は他にどれくらいいる?」
「んーと。詳しい数は分からないけど100人はいるはずよ。」
100人もいれば勝機は充分ある。
けど、問題は、最高神側に残った側近と数名の神だな。
残った全員が最高神並だった場合、こちらの神全員を集めたところで、ほぼほぼ意味が無くなる。
それほどに、最高神は絶対で、唯一無二だ。
そんな奴に前の世界では俺は1人で挑んでいた。
別に戦うとかじゃなくて普通に手合わせという形で殺しにかかっていた。
「となると、他の神も集める必要がありそうだな。」
「しかし、100人もいるのであれば不可能ではないですか?」
「そうなんだよなー。」
今現在、100人を集めることが出来るのは人伝に聞いて回るしかない。
そんなことしていたら、あ最高神に気づかれて集まる前に潰される。
「私以外の神は全員1箇所に集まってるわよ?」
なんですと?
「だって、全員が全員強大な力を持っている訳ではないんだから、散り散りになったら危険じゃない。」
「私みたいに火とか水とかの魔法を象徴とした神ならこの地上でも戦えるかもだけど、恋愛神とか豊作神とかは、戦闘力皆無だもの。」
言われてみればそうか。
どんなに強力な力を持っていたとしてもそれが相手に効果がなかったら意味が無い。
なら、力のある神に守って貰った方がお互いに効率がいい。
「話がある。俺の家に来てくれ。」
「分かったわ。」
俺はフレイアを屋敷に呼んだ。
「単刀直入に言う。」
「神に復讐してみないか?」
「神に復讐?なんのために?」
「そうだな...俺達は復讐のため。フレイア達は居場所を取り戻すため。とか?」
「たしかに私達も神界の方が暮らしやすいけど…。勝てるの?相手は最高神よ?」
「無くはない。俺達が探している奴らを探し出せば勝算はある。」
「分かったわ。他の神も説得してみる。けど、期待しないでね。貴方と違って私達は最高神の強さを知っている。だから、怖かって参加しない神も出てくると思うから。」
「あぁ、そこは、本人の意思を尊重してくれ。」
フレイアは、また炎に包まれて消えていった。
男に捕まった時も消えればよかったんじゃね?
と思ったのは俺だけだろうか?
「これで、戦力は大幅に増強できそうですね。」
「まぁ、まだ参加すると決まったわけじゃないから油断は出来ない。」
「話終わった?」
俺が考えを巡らしているとドアのところからシェリーが顔を覗かせた。
「あぁ、問題ない。」
「それで?戦力は増やせそうなの?」
「まだ、分からない。神全員が戦えるとは限らないからな。」
取り敢えず、俺達の目的はカスピエルを探し出すこと。
「けど、場所がわからないんじゃ探しようがないわよ?」
「いや、居場所の検討は大体ついてる。」
「どこでしょう?」
「王国の南に位置する国。エルディアだ。」
「なんで、そう思うの?」
「カスピエルって言うのは、『神に閉じ込められた』って言う意味と『南方を支配する皇帝』っていう意味がある。」
「このことからカスピエルは南方の方にいると考えられしかも、身動きが取れないのではないか?ということが考えられる。」
「確かにそれであれば辻褄が合いますね。」
「けど、エルディアが小国といってもかなり広いわよ?」
「そこは、エルディアの国王に直々に聞けばいい。」
「簡単に話してくれますかね?」
「別にエルディアを滅ぼそうとしている訳じゃないんだ。話してくれるさ。」
俺達は今現在、エルディアの繁華街にいる。
勿論、メイド達が置いていったゲートで一瞬で。
「エルディアって来るのは初めてよね?」
「エルディアの国の人と喋ったことすらない。」
「あー。そうだっけ?」
俺はメアに呼ばれて毒盛り事件を解決した時に1度合っている。
しかし、帝国とは違い獣人が目立つ。
逆に、シェリーやシアのような人間が少ない。
「んじゃ、とっとと王様のとこに行くか。」
俺が王城に向かおうとした時、そこにいる人物2人がいなかった。
「うわ〜。これ、美味しそう!」
「食べよ。」
シェリーとシアが屋台の前で食べ物を買っていた。
「おい。こら。観光に来たんじゃないぞ。」
「分かってるって、ちょっとだけ。」
「来るのは初めてなんだから、楽しまなきゃ損だよ?」
「んじゃ、シェリー達はここで観光していろ。俺はちょっと話してくる。」
「行ってらっしゃい。」
まったくお気楽だな。
ミミが狙われる可能性のことはシェリー達には話していない。
ミミ本人が話さないで欲しいと頼んできたから話していない。
余計な心配をかけたくないんだろう。
そんなことを考えているうちに王城に着いた。
「何者か。」
「俺はナイト。女王名誉騎士だ。」
俺はポッケからメアから貰った手帳を見せる。
「では、そちらの者は?」
指刺されたのは俺の後ろ。
「アルベール・ギッシュが娘、アルベール・ララと申します。」
「なんだ着いてきたのか。シェリー達と観光でもしてればいいのに。」
「領主の娘がいた方が説得力があります。」
「さいですか。」
「中に確認に参りますので少々お待ちください。」
あ、あれで信じるんだ。
いきなり名誉騎士を名乗る男と1領主の娘を名乗る輩が来たら普通疑うがな。
まぁ、細かいことは気にしない。
しばらくして、門番が戻ってきて俺とララは応接室に通された。
「し、失礼します。」
おどおどしい声と共に入ってきたのはあの時の猫獣人の子だった。
「やっぱり、あの時の子だっか。」
「その節はお世話になりました。」
俺が猫獣人の子...ヤンと話しているとコートの裾をくいくいと引っ張られた。
「お知り合いですか?」
「前に王都でな。ちょっとした憂さ晴らしをした時の被害者。」
俺がそういうとララはヤンに目線やり。
「私の婚約者がお世話になりました。」
「いえいえ、お世話になったのはむしろ私の方で...。」
ヤンが顔を真っ赤にしながら手をブンブン振っている。
なんか、可愛い。
その後は、他愛ないガールズトークに花を咲かせた2人は国王が来るまで喋っていた。
「ようこそ、エルディア王国へ。私はエルディアを治める、エルディア・システィーナです。」
ドアが開いて入ってきのは、女性だった。




