表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/119

57話 悪魔と訓練

ジルと稽古したあと俺は家に帰った。


「ねぇナイト。今の仕事について話せる?」


シェリーがこういうのも無理はない。


俺がやる仕事は極秘の物も多い。

だから、こういう聞き方になってしまう。


「あぁ、問題ないな。」

「なら、聞かせてよ。」


「簡潔に言って古いものを排除しようとしている。」

「ナイトさん。それでは伝わらないと思いますよ。もう少しかみ砕いて説明しないと。」


そう言われてもなー。


「私達が訪れた村に孤児院がありました。子供が20人前後いる孤児院です。それを鳳国の役人達は取り壊そうとしています。なんでも、景観が悪いとのこと。」

「?景観が悪いって理由は初めてきいたぞ?」

「これは、シャルさんから聞いたことです。」


景観が悪いとかっていうなら取り壊すんじゃなくて改装すればいいだけだと思うのは俺だけだろうか?


「それは、あまりに自分勝手ではありませんか?」

「大きな都市の役人ほどそういう傾向になりがちですね。」

「ナイトより自分勝手じゃない。」


おい。こら。

なんでそこで俺を引き合いにだす?

.....確かに自分勝手だけどさ。


「ご主人はどうするの?」

「どうするも何も今回ばかりは動きようがないな。」


相手を殺せとかだったら大得意なんだがね。


「今回は守る側ということか?」

「イリスの言う通りそうなるだろうな。」

「となると、私の出番だな。」


まぁ、いつもの戦闘じゃミミやシェリーに接近してきた敵を倒すだけだからな。

前衛は俺とカトレアとシアとララだから、そうそう抜かれたりはしない。


「今回はイリスが活躍しそうだな。」


イリスの能力≪挑戦者(チャレンジャー)≫は一時的に能力を上昇させるものだったが大分前の亀との戦いで能力がレベルアップしていた。


・能力発動時、ステータスを大幅強化。

・能力発動時の体への負担を軽減。

・能力発動時、身体能力を強化。

・能力発動時に[根性]スキル、[鉄壁]スキルの発動。


この3つの新たな特性がイリスの能力に加わった。


今ならイリス一人での戦闘も可能だ。


「まぁ、今回は戦うことはないとないと思うけどな。」


俺がこういうとイリスはその場で膝をついて落ち込んでいた。


だって相手が鳳国じゃな。

争いを全否定してるだし、戦力も自衛に必要な程度だろうし。


「戦闘になったらイリスに頼むからそう落ち込むな。」

「まぁ、ナイトじゃ倒しちゃうからね。」


だって、峰打ちとかめんどくさいじゃん。

動いてない相手に峰打ちするのは簡単だけど、動いて尚且つ自分を殺そうとしてくる相手に峰打ちをするのは非常にめんどい。


だから、いつも殺すか捕縛する。


****************************************************

「お父様。少しよろしいでしょうか。」

「どうした、シャル。」

「例の村への立ち退き要請をやめてほしいのです。」

「それは、できない。」

「なぜです!」


「あの村には悪魔が住むと言われている。」

「悪魔?ですか?」

「そう、その悪魔を排除しないかぎり国は安泰とはいいがたい。」

「その悪魔さえ追い出せれば村を無くす必要はない。」


なにかないのでしょうか。

シャルは考えた自分が今出来ることのすべてを。

悪魔にすら勝てそうな人物。

しかも、圧勝しそうな人物。


けど、シャルの周りにはそんな人物はいなかった。

少なくともこの鳳国には。


ふと、この前王国の領地、アルベスタからララが来ていたことを思い出した。

それと同時にナイトのことも思い出した。


ナイトの活躍は時折鳳国にも来る。

しかし、名前は伏せられ、ほとんど嘘か本当かわからない状態でくるのである。

けど、ナイトの婚約者、ララに出会い、噂は真実となった。


それなりの報酬が必要だが彼ならやってくれるのではないか。


そんな想いがシャルの中で芽生えた。


「私に心当たりがあります。」


ナイトとの連絡はおそらく村に行けばとれることもシャルは確信していた。


****************************************************


「ジル!やるぞー。」


俺は朝ご飯を食べてすぐにジルのところに来ていた。

今日は定期的にやるジルとの訓練の日だ。


「お前いつも早いんだよ。俺はいいけど、ミカがまだ寝てたから時間かかった。」


これもいつもだ。俺はそこまで早く来たつもりはない。

なんなら、俺だって遅刻した方だ。


けど、ジル達が出てくるのはいつも俺より後だ。


「知ってるよ。それについて責めるつもりはない。」

「ほら、早くしろよ。まったくいつものんびりだな。」

「ジル君が早いんだよ~。」


未だにミカは眠い様子。


「なら、ここで寝てるといい。」


そういって俺は大人3人で寝てもまだ余裕があるほどの風呂敷をだした。


「うん。そうする。」

「ちょっと待て!ミカが寝たら回復できないじゃん!」

「ジルが全部躱すか受け流せばいい。」

「んな、無茶苦茶な。お前の剣戟を躱せるやつなんていねぇよ。」

「いや、王国の『新緑』の二つ名持ちは避けたぞ?」


「あ~。お前らと一緒にすんな。こっちは普通の人間だって。」


まぁ、規格外なのは否定できないな。


「いいから始めるぞ。」

「おう!よろしくお願いします。」


ジルとの訓練はお互い木刀で打ち合うといいうだけのシンプルなもの。

その内技とか教えるつもりだが今はただ、剣を振る、ということが大事だ。


剣の振り方や変な癖があると技を放つときに危ないこともあるし最悪自爆する。

だから、初歩はただ剣を振るだけでいい。


「おらぁ!」

「甘いな。剣筋がバレバレもっとフェイクを使え。」

「こうやって。」


俺はジルの頭を打つと見せかけて胴を打った。


「それって、フェイクでもなんでもないだろ。」

「?速さで相手に勘違いさせるのも充分フェイクだぞ?」

「それができたら誰かに教えなんて乞わねぇよ。」


そういうもんか?

自分が相手より上でも相手にしかできないことなんていっぱいある。

それを出来るようになって初めて相手より上といえる。


俺としては、

『格上=相手に劣ることが一つもない』

だと思っている。


「それじゃ、まだまだ半人前だな。」

「じゃあ、お前を倒してお前より強いことを証明してやる!」

「やってみろ!」


このやりとりもいつもだ。

俺が挑発してそれにジルが乗る。


挑発は上手くやれば弟子などの成長を爆発的に伸ばすことが出来る。


それをやる為には対象との信頼関係、対象の性格を知っていなければいけない。


挑発の使い道は決して相手を怒らせるだけではない。


「はぁ。はぁ。だめだ。もう動かない。」

「そうか。それは残念だ。」


俺は地面で寝てるジルを素通りして未だに寝ているミカのところに向かった。


「ジルが寝てるなら仕方ない。ミカにいたずらを...。」


俺がそこまで言いかけると横から殺気が飛んできた。


「ふざけんな!ミカに手を手出してみろお前を殺す!」


ジルが俺を見る目は前の世界での俺の目をしていた。


「冗談だ。俺には妻がいるんでね。手を出したら怒られるから。」

「嫁が居なかったら出してたのかよ。」

「可能性はあった。」


ブゥン!


今度は俺に向かって木刀が投げられた。


「あぶねぇ!ミカに当たったらどうすんだ!」

「お前なら避けるか受けるかするからな。どっちにしろ今の軌道じゃミカには当たらないから安心しろ。」


軌道の計算まで出来るようになったか。


そこで、俺はある視線に気が付いた。


「あ。」


視線の方を向くとこの前会ったシャルがそこにいた。

なぜか、木に隠れているが...。


「そういう、ご趣味をお持ちですか?」

「いや、違う。」


そういう趣味とは、今の現状のことだろう。


シャルの位置からではジルは見えない。

となると、俺はミカ...寝ている幼女に覆いかぶさる変態となる。


それを見られたのだから勘違いされるのも無理はない。


「大丈夫です。人は誰しも隠したいことの一つや二つあるものですから。」


なら、なぜ、俺と目を合わせないのだろうか。


面倒なことになりそうだ。


俺は長年の勘でそう思った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ