56話 シャルとジル
「話というのは鳳国のことだ。」
「なにか問題でもありましたか?」
「鳳国は争いを嫌うが争いの種になりそうな部分は多くある。その1つに前の村を潰そうとする習慣がある。」
新しいものを創ることに置いて古いものは必要なくなったりする。
けど、それを必要とする人がいるなら捨てるべきではない。
「そうですか…。しかし、他国ととなると不用意に口出しはできませんね。」
「やっぱりか。」
「現状、4国...エレノール王国、イクピアリ帝国、グランド鳳国、エルディア獣国はそれぞれ不可侵条約を結んでいます。鳳国から支援要請などがないと王国としては動けません。」
うーむ。どうしたものか。
と、その時ある名案が思いついた。
「俺が直接行くか。」
「ナイト。貴方は女王護衛の筆頭なのですよ。あまり他国の政治などに踏み入ると王国としても色々まずいのです。」
「別に堂々と会いにいく必要はないじゃないか。」
「まさか...。」
昼間に会えないなら夜に忍び込めばいい。
「見つかったら大変なことになりますよ。」
「そん時は俺を国内指名手配犯にしてくれればいいさ。」
そうすれば少なくとも王国に責任がいくことはない。
メアには呆れられたが今更気にしない。
「てことで、今から鳳国の王宮に忍び込むんだがシア。一緒に行くか?」
「うん。行く。」
シアとの共同作業用はイリスの時以来か。
そして、一番大変なのは戦闘ができないということ。
『ナイトさん!』
いきなり脳内にララの声が入った。
『どうした?』
『すいません。やってきた王宮の人たちに捕らえられてしまいました。』
「はぁ!」
俺は俺にしか聞こえていないことを忘れて声を出してしまった。
『今は王国のスパイではないかどうか王国に問い合わせているそうです。』
『じゃ、なんもされてないんだな。』
「はい。今は応接室たいな場所にいます警備は槍1人に剣1人の計2人です。』
ララになにもないならいい。
『今すぐメア連れてそっちに行くから待ってろ』
そういって俺はララとの通信を切った。
「どうしたの?大声なんか出して。」
「ララが王国のスパイじゃないかって疑われてるらしい。で、捕らえられている。」
「大丈夫なんですか?」
「今の所はアルベスタの領主の娘ということもあり無事だ。」
「だから、おれはメアと鳳国にいってくる。多分戦闘にはならないから安心してくれ。」
俺は「ゲート」で王城にとんだ。
「メア!いるか!」
なんか既視感。
違う今はそんなこと考えてる場合じゃない。
それに今回はメアは下着姿じゃなかった。
「話は聞いています。「ゲート」をお願いできますか?」
「わかった。」
俺は「ゲート」を開いて鳳国にとんだ。
とんだのは鳳国のメインストリート。
の路地裏。
メアには申し訳ないがすこし狭い所じゃないとこれまためんどくさい。
俺達は急いで王宮に向かった。
「何者か。ここは鳳王がいらっしゃる神聖な場所。よそ者は帰られよ。」
「私はエレノール王国女王、エレノール・メアです。この者は私の護衛です。」
メアがそういうと兵士が確認に中に入った。
「ナイト。落ち着いてください。」
「悪い。」
メアに窘められるが落ち着かない。
「確認が出来ましたのでどうぞお入りください。」
俺はメアの後に続いて王宮の中に入った。
中は壁際に柱が何本も立っておりその柱一本一本に違う絵が刻まれている。
昔のピラミッドのような印象を受ける。
「ナイトはララのところに行って下さい。私は鳳王様のところに挨拶に行きます。」
メアは気を利かせて俺に指示を飛ばした。
騎士が主の側を離れるのは普通ありえない事だがメアには一応防御壁を張ってある。
攻撃を受ければすぐに俺のところに知らせがくる。
「わかった。ありがとう!」
俺はメアに礼を行ってララがいる部屋に走った。
王宮の前で待たされている時からララの居場所を探っていた。
場所は二階端の部屋内装はララが言ったように応接室的な感じだ。
余談だがララがいる部屋の下には隠し階段があり、その下は拷問部屋の如き有様だ。
[反響]スキルで探っただけだが恐らく、血なんかも飛び散っているだろう。
「ララ!」
俺は扉を勢いよく開けた。
「ナイトさん?どうしたんですか?そんなに慌てて。」
「いや、ララが連れてかれたって言うから急いでメアと来たんだよ。」
「ありがとうございます。けど、私はこの通り大丈夫ですよ。」
確かに大丈夫そうだ。
「貴方がララさんが言っていた婚約者の方ですか?」
俺がホッとしているとララの後ろから声をかけられた。
「そうだが?」
「初めまして、私は鳳王の娘、シャルと申します。」
「俺はナイト。王国で冒険者をしている。」
「ナイトさんの話はララさんから聞いています。かなりご活躍されているそうですね。」
「あぁ、お陰様でな。」
「折り入ってお願いがあるのです。」
なんだろう。いやな予感しかしない。
「王宮の裏に小さな農村があるのですがそこの孤児院にいるサヤに伝言を頼みたいのですが...。」
サヤ...確かこの前会った子。がそんな名前だったよな。
シャルから伝言を頼まれたので俺達はサヤのところに来ている。
「と、言伝を頼まれました。」
ララが伝え終わるとサヤは少し複雑そうな顔をした。
「そうですか…。」
「どうかしたのか?」
「いえ、シャルがそう言ってくれるのはありがたいのですが...。」
つまりは、そういうことか。
俺達が頼まれた伝言は、
『そこを立ち退く必要はありません。私も立ち退きを強制するようなことは辞めるように言っているので諦めずに頑張って欲しい。』
と。
しかし、立ち退きを言ってきているのはシャルの父親、鳳王だ。
立場だけだとシャルやこの村の連中の方が圧倒的に下だ。
それに、諦めるなとシャルは言っていたがジルのようにきた王宮の奴らによって怪我などをしている子もいる。
そんな中、諦めるのというのは意外と無責任なのかもしれない。
「俺が動いてもいいんだけどなー。」
そうした場合、確実に死者がでる。
今回、サヤ達は鳳王が死んでほしいと願っている訳ではない。
そしたら、俺の出番ではないだろう。
「まぁ、なんかあったらジルが守るさ。」
この孤児院にいる子供はジル含め20人弱。
その20人弱がジルの守るべきものと能力が感じた時、ジルは強くなる。
そこに、ミカが含まれればひょっとしたらカトレア並になるかもしれない。
「ジルですか?」
「あいつは強い。精々俺がジルと同じ歳の時よりはな。」
ジルの成長が今から楽しみだ。
その後はメアを王国に送り届けてジルとの手合わせに興じた。
今更になって気づいたがミカは将来魔法使いになりたいらしくジルの回復役として傍にいた。
そして、ジルの能力によるステータス上昇率もわかった。
ジル単体を1とした場合、
守る人1人に付き2〜4上がる。
上がり方は恐らくジルの好き嫌いだろう。
ミカだけがいた場合、上昇率は10〜20にもなった。
しかし、ミカ以外の人がいると上昇率は5〜7となってしまう。
今回はその場にミカだけがいたので多分20位は上がっている。
これをステータスに換算すると、
ミカだけがいた場合、カトレアと手合わせ出来るぐらいには上がる。
今度やらせて見よう。




