54話 ララと鳳国
「そいえばナイト。ララとはいつ結婚するんだ?」
海で遊んだ次の日ギッシュに呼ばれたため。
領主邸に来ている。
いきなり不躾だな。
俺だけでは色々まずいのでララにも付き添ってもらっている。
「いつと言われてもな。わからないとしか言えないぞ。」
「けど、あの獣人の子と金髪の子とは結婚したんだろう?」
「同じ腕輪をしてたからね。一目でわかったよ。その点においてはおめでとうと言っておこう。」
「どうも。...俺が一番気にしてるのは俺がララと結婚したら俺はアルベスタの領主とならないといけないだろ?それが一番の気がかりなんだよ。」
「たしかに、今のままではアルベスタの領主になってしまうな。」
「それが嫌なんだ。俺のことを調べたならわかるだろ。」
「な、なんのこ、ことかなー。」
「ほう。なら、見ず知らずのどこの馬の骨かもわからない男に娘を預けたのか?」
「うぐっ。そうだ。確かに君のことは調べさせてもらったよ。」
まぁ、出会った当時はいきなり娘がドラゴンを倒してくれと初対面の男に頼んだんだ。
さぞ、肝が冷えただろう。
普通一般冒険者になにかを依頼する場合、膨大な資金が必要となる。
子供の資金関係を管理している親ならなおさらだろう。
「いったいどんな契約をしたのだろう。」と。
まだ、家宝なら安いものそれが娘の初めてとかだったらどうしようかと。心配になったギッシュは相手の男を調べた。
「で、俺の情報は出なかっただろ?」
「あぁ、出身から職業、名前までなにもかも不明だったよ。今となっては理解できるが。」
そう。まだそん時は俺が異世界の住人ということはミミ達にも話してはいなかった。
ただ、強いという情報だけが俺を特定する情報だった。
「まぁ、俺はいつかはララと結婚するつもりだし。捨てたりはしないから安心してくれ。」
「あぁ、メアから呼ばれてるんだ。悪い俺は行くぞ。」
「こちらこそ、人のことも考えずに聞いてすまなかったね。」
「あ。そういえば...。」
ララがゲートに入ったあと。俺はギッシュにこう耳打ちした。
「ララの背中のほくろってエロいよな。」
自分でもいやらしい笑顔だったと思う。
それをギッシュに向けた。
「...!待て!ララの背中のほくろは服を脱がないと見えないはずだ!なぜそれをナイトが...。まさか!」
少しの沈黙のあとギッシュはハッと顔をあげた。
「さぁあどうだろな。」
そういって俺はゲートに入った。
ちなみにまだララとはそういう行為には至っていない。
さっきのほくろの話はラートに温泉に落とされた時に見えたもの。
さぞ、悶々としているだろう。
「お父さんとなにを話してたんですか?」
「いや、ララってかわいいなって。」
「もう、お上手なんだから。」
これでもまだ15歳の乙女である。
ララはシェリーとかより大人びているが実際はまだ15歳とまだ少女の域だ。
身長だって俺の肩ぐらいしかない。
俺が王城につくと新しい仕事が言い渡された。
今度の目的地は天空。
風都より高い場所にあるという。
そこに行くための転移陣が鳳国にあるらしい。
「また、遠い場所だな。」
「ナイトさんの足なら数分で着きませんか?」
「着くけどしばらく動けないな。」
「なら、私と一緒にゆっくり行きましょう。」
ん?今なんとおっしゃいました?
一緒に行く?
「いや、俺一人で行くよ。」
「私は邪魔ですか?」
それは卑怯じゃないですかね。ララさん。
「いや、邪魔ってわけじゃないけど。俺も初めて行くところだし危ないからだ。」
「私は何回も行ったことありますよ?」
これで連れていかない理由がなくなってしまった。
そもそも、ララとかメア母とかに物理以外で対抗しようとするのが間違いだったんだ。
その二人には絶対に勝てない。
ということでララを連れて鳳国に向かう。
道のりは俺が走った。
特別に急ぐ必要はないがあまり帰るのが遅くなるとミミやシェリーが嫉妬してまずい状況となるため。
行きはちょっとスピードを出す。
今はララをお姫様抱っこをしながら東に向かって走っている。
東に走って20分ほど行ったところに鳳国はある。
丁度、妖精の森とは正反対に位置するのが鳳国。
「そういえば昔に鳳凰が治めていたという話を聞いたことがあるが、それはホントなのか?」
「それは、本当と言われていますね。」
「何かわけが?」
「今でもあるとおもいますが鳳国の宮殿にはその昔統治していた鳳凰の羽が大切に保管されていますよ。」
「しかも、その鳳凰の羽には今の魔法や科学では解明できない神秘の力が宿るとされています。」
神秘の力。
俺は今から嫌な予感しかしなかった。
途中休憩をはさみながら予定どおり鳳国に到着した。
「予想はしてたけど、なんか凄い賑わいだな。」
「はい。ここは王国でいう王都にあたりますからね。」
道理で人が多いわけだ。
見たところ差別的なものは見当たない。
獣人もいればバンパイアもいる。
「んじゃ、俺達は転移時を探すとしますか。」
「そうしましょ。」
そういって俺が進もうとした瞬間、腰辺りに小さな衝撃が加わった。
見るとララよりも小さな獣人の女の子が俺に抱き着いていた。
それならまだ、可愛いで済むのだが問題だったのは彼女が細すぎたということ。
「おい。お前。大丈夫か?」
「...うん。大丈夫。」
いや、どう考えても大丈夫じゃない。
俺は医療のことは詳しくないが彼女の状態から見て数日持つかどうか原因は極度の空腹。
「アイラ!」
俺達は声のしたほうに一斉に顔を向けた。
「すいません。もう近寄らないのでどうかお許しを。」
「大丈夫ですよ。実は私達は鳳国に観光にきたばかりで今日到着したばかりなんですよ。なので詳しい話は知らないいですよ。もし、良かったらお聞かせ願いませんか?」
こういう時にはララとかミミが活躍する。
元々物腰が柔らかいのが功を奏しているんだろうな。
「王国の冒険者の方ですか?」
「はい。今は観光中ですが。」
そういってララは優しく微笑みかける。
「では、家に来ていただけますか?」
「はい。案内していただけますか?」
道中。
『ナイトさん。さっきから前の女性は私達に怯えています。何故だか見当はついていますか?』
『大体はな。貧困に悩まされてまともの綺麗じゃにからよそから避けられているだけかもしれないし。それとも表には見えないように虐げられているかだな。』
「ここが我が家です。汚いところですがゆっくりしていってください。」
中に入ると数人の子供が顔を覗かせた。
すると...。
「こんにゃろー!」
その叫び声と共に飛び出してきたのは体の所々に傷がめだつ少年だった。
俺は少年の木刀をつかんで受け止めた。
「お前たちのせいだ!お前たちさえいなければ俺は最強になれたんだ!」
その単語...「最強」という単語を聞いて反応してしまった。
「どういうことか説明してくれるか?」
「とぼけんな!お前たちがこの村を衰退させた!近くにあんなデカい王宮なんて建てるからだ!」
「王宮がどうかしたのか。」
「王宮が出来て村には毎回王宮の連中が来てそこをどけって言うんだ!ここは俺達がいた場所だ!後から来た奴なんかに渡さないぞ!」
「ジル君。外の人にそんなこと言っちゃだめだよ。またいじめられちゃうよ。」
俺が少年...ジルと話しているとミミとよく似た銀髪のこが出てきてジルを止めた。
「俺は怒ってるんだ。これ以上勝手な真似はさせない。」
「かっこいい事言うじゃないかジル。安心しろ。俺達は王宮の人間じゃない。」
言ってしまえば俺は人間ですらない。
「俺達は王国の冒険者だ。ただの冒険者じゃない。王女様と親しい間柄だ。」
俺はコートのポケットから手帳を取り出した。
「なんだこれ。」
「これは王女の側近じゃないと持てない手帳だ。なんならそこにいる女の子だって一領主の娘だ。」
「ふーん。わかんね。」
「けど、お前らが王宮の人間じゃないことはわかった。だってお前の服そうへんだもん。」
「なんで鎧をきてないんですか?冒険者なのに。」
「必要ないからだ。」
俺達が話していると最初に案内してくれた女の人があいだに割って入った。
「ジル。ミカ。奥へ行ってて。この人達とお話があるの。」
「わかった。サヤ姉ちゃん。」
ジルとミカが去っていくと再びサヤがこちらへ向き直った。




