53話 異常とタコ
石に魔力を込めて転移した先は森だった。
「ここは...森でしょうか?」
「そうみたいだな。」
辺りには木しかなく人が生活している様子はない。
[索敵]スキルにも[反響]スキルでも動物以外の反応はない。
「ホントにここどこだよ。」
「ご主人様。おそらくここは、鳳国よりさらに果て未だ人が踏み入っていない未踏の地だと推測されます。」
「鳳国よりも先に陸なんてあるのか?」
「はい。一説によると人が住んでいる大地は全体の三分の一にも満たないと言われています。」
へー。そんなに広いのか。
なんか以外。
確かにこの世界に来てから地図は見てないからありえない話ではないのかもしれない。
「なら、あの転移陣は封鎖した方がいいかもしれないな。」
「なぜですか?」
「今のそれぞれの国をみても特に資源に困っているという風な話は聞いていない。なら、ここに住む動物達の住処を態々奪う必要もないだろ。」
「なるほど。ご主人様はお優しいですね。」
「普通だと思うがな。」
俺に優しさなんてものはない。
全ては気まぐれ。
今日はめんどいから明日でいいやと同じことを俺的にはやっている。
だって、この辺の調査とか言ったら絶対、俺が駆り出されるからな。
「じゃあ、帰るか。」
「はい。そうしましょう。」
俺が帰ってもまだ、ミミとシェリーは海で遊んでいた。
「カトレア!一緒にバレーしよ!」
シアが大声でこちらに呼びかける。
「言って来いよ。」
「しかし...。」
「別に死ぬわけじゃないんだ。言って来い。」
「...わかりました。」
俺とカトレアだけが知っている情報。
今俺の体ははっきり言って異常だ。
その心は、全盛期並みの魔力。何かあるとそれがスキルとして発現する柔軟さと飲み込みの速さ。
決して悪いわけではないが。
気味が悪いのは確かだ。
修行の身ならあり得るが全盛期をとうに過ぎた俺からしてみればこれは異常事態なのだ。
だから、さっきも俺の仕事にカトレアが同行してきた。
なにか非常事態があって俺が身動きが取れなくなったときのためにカトレアには『ゲート』の使用を許可してあった。
「やぁ、浮かない顔だね。」
「そうか?まぁ、暑いからな。」
俺が考えているとラートが近くに腰を下ろした。
「あんな可愛い子達が元気に遊んでいるというのになんで暗い顔をしてるんだい?」
「別に暗い顔なんかしてない。ちょっと仕事について考えてただけだ。」
別に噓をつく必要はないが俺は正直に答えなかった。
「そういえばゼクス達は?」
「あぁそれならあそこにいるよ?」
そういってラートが指したのは遥か水平線。
とその時、ラートが指した方向から巨大な水柱が上がった。
「なにしてんだ?」
「なんか大きなモンスタがこちらに向かっていたらしいから退治してくるっていって、泳いでいちゃったよ。」
「おいおい。いくらゼクスがいるからって勝てるのか?」
相手は水辺が住処のモンスター。
水中は相手の独壇場だと思うが。
そんなこと考えていると水柱があがった辺りから何かが飛んできた。
「なぁ、あれって何だとおもう?」
「んー。なにかはわからないが女の子たちが危ないというのは確かだね。
俺は立ち上がると持前の速さでミミ達に近づいてミミ達の頭上に魔方陣を広げる。
飛んできた飛行物は魔方陣に触れると一瞬にして消えた。
≪無限収納≫様々だな。
飛んできたものを海岸に出してみるとそれは大きなタコだった。
足一本一本は軽く俺の腹回りと同じくらいある。
それが8本だから、食べるとしたらかなりの量になりそうだ。
「どうだ!俺が狩ったんだ。旨そうだろう?」
「その前にミミ達が潰れるとこだったよ。」
「それはすまんな。ナイトが帰っているのが見えたんでな。投げても大丈夫だとおもったんだ。」
まったく俺は万能じゃないぞ。
「で、こんなやつ狩ってどうすんだよ。」
「そうだね。食べるにしては大きすぎるね。」
「そう?ちょうどいい大きさだと思うけど。」
「「え?」」
「シェリーのことは気にするな。食意地張ってるだけだから。」
「酷い!」
それより、どうするんだよ。これ。
「市場にながすか?」
「いや、これ流されても困るでしょう。」
俺はゼクスを睨んだ。
「そんなに睨むなよ。別に王都だけの市場に流すんじゃんなくて全国の市場に流せばいいんだ。または、貧困に苦しむ村とかに寄するかだな。」
寄付か。
その発想はなかった。
「どうするかも決まったみたいだし、食べましょ!。」
「食べる♪食べる♪」
シアとシェリーは食べる気満々である。
俺はかなり大きめの机と人数分の椅子を≪無限収納≫からだした。
21人ともなるとかなりの大所帯だな。
調理はミミを筆頭に[料理術]をもったメイド達が担当することに。
『ゲート』で俺の家の調理場とつないで調理したらそのままこちらに運んで食べるという形となった。
数分すると料理が運ばれてきた。
丸い形をした茶色いソースがかかっていて上には魚の削り節が乗っかって風味も豊かだ。
食べてみると外はカリカリでなかは熱々で美味い。
「これはなんて料理?」
「おいしー。」
「そ、それは、『たこ焼き』という料理です。私の故郷の料理なんですけど。お口にあいましたでしょうか。」
「あぁ、うまい。」
俺の言葉を聞くとメイドは顔を赤くして俯いた。
『カトレア。なんでメイドは顔をあかくしているんだ?』
『それは、ご主人様は神様のような存在としてメイド達の間では通っていますので、その影響かと。」
俺が神様ねー。
ちょっと違うがまぁいいや。
訂正するようなことじゃ無いし。
この後俺達でタコの足2本分を平らげた。
後の6本はそれぞれの市に流したり、貧しい村に寄付をしたりしてタコをすべて消費した。
また、たこ焼きが食べたいから1本は貰ったけど。
「たこ焼きっていうんだっけ?おいしかったー。」
「うん。もう食べられない。」
そりゃ、2人で半分ほど食べてるからなそうもなる。
「よし!おなかもいっぱいになったしまた遊ぶぞー!」
「まだ遊ぶのかよ。」
「勿論。遊ばなきゃもったいないもん。」
いや、その理屈はわからなくもないが、2人ともさっき食べたばっかだろ...。
2人の消化器官はどうなっているんだろうか。
2人はそんなことを考えもしないようで元気いっぱい海に走って行った。
「元気だな。」
「そうだね。まぁ、あれが女の子のいいところだよ。元気でいるだけで人にも元気が分けられる。」
「そういうと、なんかすごいな。」
まぁ、急ぎの仕事はないからこういう時くらいはいいか。
「あ、そういえば...」
「?」
「結婚おめでとう。危うく言いそびれるところだったよ。」
ラートは波打ち際で遊ぶミミとシェリーの腕に光る『トラストリング』を見て言った。
「そりゃどうも。」
「羨ましいね。あんなかわいい子と結婚できるなんて。」
「だろ?自分でもそう思う。」
俺が眺めているとミミと目が合った。
そのままミミは腕輪に向かってキスをした。
やばい可愛い。
隣ではラートが茶化してきたから取り敢えず『寝て』貰った。
砂のお味はいかがかな?
その日俺達は日が暮れるまで遊んだ。




