45話 風都と目覚め
「さて、そろそろ風都に向かおうと思うんだがいいか?」
俺は部屋に集まったメンバーを見渡した。
「私はナイト様の意見に従います。」
「私も思い残すことはないわ!」
「大丈夫。」
「ご主人様の意のままに。」
「風都ですか。楽しそうですね。」
「主に従おう。」
「私は構いませんよ。」
うん。三者三様の反応。
「けど、どうやって行くの?」
「そうですね。風都は一応王国領ですが島なんです。」
「つまり、飛行手段がないと行けないと?」
「そういうこと。」
それは、困った。
現時点で俺達には陸路の移動手段は多数あるが飛行手段は全くない。
「それなら、メアに頼んではいかがでしょう。メアからの仕事依頼で風都に行くんですから飛行船位は貸して貰えるのではないでしょうか?」
「うーん。あまりメアには迷惑をかけられらないんだよな。というかかけたくない。俺からしてみればメアからの仕事はついでで本当は観光目的だからな。」
「女王陛下の御依頼をついで呼ばわりとかナイトじゃないとできないことね。」
「恐れを知らないですからね。」
横でシェリーがなんか言ってるけどまぁ、いいや。
「風都関係のクエストがないか見てるか。」
「その手があったわね!」
ギルドクエストで長距離移動の際乗り物はギルドでもってくれることになっている。
だから、風都関係のクエストがあれば飛行手段は問題なくなる。
結論から言ってあることにはあった。
『風都の荷物護衛』
『廃屋敷の調査』
『劣化竜の討伐』
この3つが風都関係のクエストだった。
勿論、全部受けた。
ミミとシェリーとララは『廃屋敷の調査』と聞いた瞬間笑顔が消えた。
やっぱ人いじめるのは楽しいわ。
「一生恨んでやる。」
「なんでナイト様に任せてしまったのでしょう。」
「今度変なクエスト持ってきたら後ろから刺します。」
お化けとかダメ系の3人からブーイングがひどい。
あと、ララが怖いです。
誰かに助けてください。
「別に幽霊屋敷とかじゃないから大丈夫だろ。多分。」
「その多分が怖いんじゃない!」
「ナイト様はもう少し女の子の事を考えてクエストを受けてください!」
「私達はナイトさんみたいに強くないんですよ?」
「まぁ、俺が守るから大丈夫だ。」
その言葉を言った瞬間ミミとシェリーは顔を真っ赤にして俯いた。
「絶対よ?」
「信じますからね。」
うん。可愛い可愛い。
そんなこんなで俺達は飛行船に乗っていた。
運転はギルド公認の運送業者を生業としている人。
さっき挨拶したが、豪快な人だった。
ゼクスみたいな感じだな。
「風都にはどれくらいかかる?」
「半日程で到着しますよ。」
意外と近い。
まぁ、風都は孤島だけあって空を飛ぶ敵が多い。
イリスの自動防御が役に立ちそうだな。
そんなことを思っていると1匹の劣化竜が物資目掛けて突っ込んできた。
「シェリー頼んだ。」
「オッケー。」
シェリーは弓を構えると劣化竜に2本放った。
数秒して劣化竜の目と胴体に命中。
劣化竜はそのまま落下していった。
「お疲れ。」
「真っ直ぐ突っ込んでくる敵なら余裕よ!」
シェリーは俺と出会ったころより明らかに命中精度は上がっている。
それに加え、この前ココから新しい武器を受け取っている為火力面も申し分ない。
ちなみに、性能がこちら。
名前:ソリッド
種類:弓
スキル[必中]、[追跡]、[飛行特攻]、[不壊]
備考、[飛行特攻]により飛行する敵、物に対して威力が増加。
名前:マナ・ロット
種類:杖
スキル[全魔法強化]、[魔法耐性]、[不壊]
シェリーのソリッドは追尾機能がついてミミの杖には全魔法強化が付いた。
チート級の武器である。
まぁ、人の事は言えないが。
その後も何度か劣化竜の襲撃を受けたがこちらに届く前にシェリーとミミが撃ち落としている。
俺にも一応対空魔法とかの攻撃手段はあるが俺がやるとここら一帯のモンスターが死滅するから俺は今回は観戦している。
そんなことを何度も繰り返して俺達は風都に着いた。
「意外と早かったな。」
俺の横ではミミがぐったりしている。
理由は、俺がずっとモフモフしていたからである。
最初はシェリーとミミで劣化竜の相手をしていたが慣れてくるとシェリー1人で相手出来るようになったからミミを下がらせた。
ちなみにシェリーの弓は魔力を矢に変換して射るため矢で重くなることはない。
流石ココ。
「お疲れ、シェリー。」
「意外と弱かったわね。」
まぁ、シェリーの武器がオーバーキルなのとシェリー自体のレベルが上がったというのが主な理由だろ。
「風都は何があるんだ?」
「風都は主に不死山が仕事場ですね。」
「不死山?」
「頂上には不死のドラゴンがいて謁見できれば不死になれるという言い伝えがあります。」
「不死のドラゴン?そんなのいるわけない。」
生命はそれが生命である限り終わりはある。
不死なんてものは神でないとありえない。
「でも、過去に見たという人はいますよ?」
「多分何かの見間違いだろ。まぁ、見に行けばいいか。」
「それは、いくらナイトでもそれは無理ですね。」
「なんで?」
「ドラゴンの住処は冥界に一番近い所にあります。つまり、一歩間違えれば死んでしまいますよ。」
「「それは、ダメ!」です!」
「それじゃ、運があったらだな。」
「そんな運は捨ててしまえ。」
メンバーからは批判があるがまぁ、冥界くらいいつでも行ける。
この世界来てから言ってないから行けるか分からないが。
俺達は一先ず宿屋を探した。
「さて、これからどうする?」
「まずは、観光でしょ!」
とシェリーが言っているので観光することに。
と言っても風都は島でほとんどが飛行船による物資の運搬で成り立っている。
その為、特産品というのはない。
モンスターの肉とかが出店とか料理店とかででる。
飛行系のモンスターが多いため肉は堅く歯応えは期待出来るという。
「ここに、あいつらはいないだろうな。」
「そうですね。ここだと交通面で不便ですからね。」
なら、風都位はのんびりしてもいいか。
いつものんびりしていたというのは言わないお約束だ。
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「いよいよだ。『あの方』がお目覚めになられる。」
「長かったね。」
「あんたが、動けないせいでしょ。」
「『あの方』が目覚めれば黒白の双剣士程度どうにでもなる。」
「かなり信頼しているね。そんなにすごいお方なのかい?」
「それは、勿論だ。特に黒白の双剣士には効くだろう。」
「それほどのお方とどこで出会ったのでしょうか?」
「まず『彼女』はこの世界の出身ではない。」
「異世界から転移してきた。ということかい?」
「その通りだ。そして、『彼女』が来た時と同じくして黒白の双剣士が来たと思われる。」
「それで、彼が何らかの鍵になると考えたわけだ。」
「うむ。そういうことだ。」
「けど、ほんとに綺麗な人ですね。」
「そうだね。銀髪に長髪。下の方はくせっ毛で所々はねているところとか女の子らしい感じがするね。」
「今は我らの兵器と化したがな。『彼女』には意思こそないが感情はある。人間への憎しみが『彼女』の動力源だ。」
「つまり、人間がいる限り『彼女』は人間を殺し続ける。」
バリン
「お目覚めになられましたか。『ルージュ様』」




