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44話 気持ち

俺はキッチンに向かった。


そこには、いつもどおりの面子が既に揃っていた。


「ご主人様。おはようございます。」

「あ、ご主人、おはよう。」

「おはようございます。ナイトさん。」

「主はいつも最後ですな。」


テーブルに座っていたのは、カトレア、シア、ララ、イリス、シーラの6人だけ。


「シェリーは?」


ミミはおそらく料理しているんだろうがシェリーの姿がない。


「シェリーさんならミミさんの所にいますよ。」

「料理の練習するって言ってた。」


どういう風の吹き回しだ?

シェリーの料理は豪快で大雑把なものが多い。


それでも、食べられないというわけではない。

シェリーもミミのそばでいつも手伝いをしていて料理の腕は上達している。


「なんでいきなり練習なんてしだしたんだ?」

「ナイトさんの為ですよ?」

「俺の?」


なんだろう。

全く心当たりがない。


「好きな人に自分の手作り料理を食べて貰いたいという乙女心ではありませんか。ナイトはそういうことにはホントに鈍いですね。」


いや、自分が鈍いという自覚はちゃんとある。

けど、自覚しているけど直せないのと自覚しているのに直さないのではかなりの差があると思う。


俺の場合前者だが直そうにもそれが全く分からないのである。


「自覚」→「直そうとする」→「分からない」→「自覚」


このように悪循環を起こしているのである。


シェリーが俺のことを好きなのは知っている。

けど、それについて俺は、どうしたらいいのか分かっていない。


シェリーの告白に答えるのは当然として他になにをすればいいのか分からない。


カ「ご主人様はシェリー様のことをどう思っているのでしょうか?」

「そりゃ、好きだよ。」

シ「なら、シェリーさんにそのことを伝えればいいのではありませんか?」

「そうしようと思ったけど言葉にできないんだよ。」

ラ「どういうことでしょう?」

「俺にも分からない。ただ好きと言うんじゃなんか足りないような気がして中々言えてない。」


シ「ナイトはシェリーさんのことが大好きなのですね。」


さては、[千里眼]スキルだな。


俺とシェリーの関係を見たな。


「シーラが言うならそうなんだろうな。[神眼]に嘘は通じない。」

「なんかロマンチックですね。お互いに好きなのにそれがどこかで絡まって中々上手くいかないなんてなんかの小説のようですね。」

「当事者としてはそれどころじゃないけどな。」

「見ている方は焦れったくてそれでも、面白いですけどね。」


さて、どうしたものか。


気持ちを伝えようにも言葉にできない。

行動で表すなんて高等テクニックはできない。


うーむ。

非常に悩ましいことではあるが俺は、この時ある名案を思いついてしまった。


シェリーは俺のことが好きと言っていた。

俺もシェリーが大好きだ。


なら、ミミと同じ時期に結婚すればいいのではないか。ということ。


けど、そうなると先に婚約していた、ララ、メアに示しがつかない。


シェリーは俺がこっちの世界にきて初期の方に出会った。

それだけ思い出深いし大切な仲間だ。


勿論ララやメアも俺の中ではかなり印象に残っている。


けど、本当の意味で好きかと聞かれれば即答はできない状態だ。



「ナイトさんの好きなようにすればいいと思いますよ?」


俺が頭をフル回転させて考えていると声が聞こえた。


「え?でも、いいのか?」

「私はやる事成すこと全ていい意味で適当なナイトさんが好きなんですよ?そのナイトさんが考えて動くなんて私は嫌ですね。ナイトさんや野心溢れるままでいてください。」


「なんか、応援されてばっかな気がするな。わかった。ありがとう。」


ララからは許しをもらったしあとはメアだな。


~説明中~


「という事なんだ。ごめん。」

「いえいえ。それは、ナイトの気持ちを優先してください。私は1番最後でも構いませんよ?」

「ほんとにごめん。」


ララとメアが優しくて本当に良かったと思う。


これで、思い残すことなくシェリーの気持ちに専念出来る。


「シェリーちょっといいか?」

「?いきなりどうしたの?」


俺はシェリーを自分の部屋に呼び出した。


「どうしたの?」

「あの時の返事をしようと思ってな。」


その瞬間シェリーの顔が真っ赤になった。

シェリーは『あの時の返事』という言葉で全てを察したようだ。

俺とは大違いだな。


「俺はシェリーのことが好きだ。」

「けど、ミミのこともシェリーと同じくらい好きなんだ。」

「だから、ミミと同じになっちゃうけど今抱えてる仕事が解決したら結婚してくれ。」


俺が言い終わるとシェリーは俺に抱きついた。


「?どうした?」

「断られるかと思った。」

「なんで?」

「だって、私を好きだって言ったあとにミミのことが出てきたからだから、ダメだと思った。」


完全にシェリーに抱きつかれているため顔は見えないが、声からして泣いている。


「最初に好きだって言っただろ?俺は欲張りでな欲しいのは全て手に入れる性分なんだ。」


聞こえているか分からないが俺は顔が見えないシェリーに向かって言った。


「ありがとう、ナイト。」


俺とシェリーは自然と唇を重ねていた。


唇を離すとシェリーは今までで最高の笑顔を向けた。


「これで、私もナイトの妻となったのね!」

「まぁ、ちゃんとしたのは今の仕事が片付いたらだな。」

「それでも、嬉しいのよ!バジリで言った時からずっと気にしてて。忘れられたのかと思った程よ。」

「うっ。それは、すまん。色々考えっちゃってな。」


「もう一度言うわ。ありがとう。ナイト。」

「あぁ。こちらこそ待たせて悪かったな。」

「あ、でもみんなには黙って置いた方がいいの?」

「いや、その必要はないな。」

「?」


「いつまで隠れてるつもりだよ。」


俺がドアの方向に声をかけると、やがてドアがゆっくり開いて、ミミ、シア、カトレア、ララ、イリス、シーラの6人が入ってきた。


「え?いつからいたの?」

「『あの時の返事をする』という辺りからですね。」

「全部じゃん!」


「ナイトは知ってたの?」

「ん?あぁ、知ってた。」

「なんで言わないのよ!」

「いや、どうせすぐにバレるしそれに隠す必要もないだろ。」

「それは、そうだけど…。」


ということでシェリーも俺の婚約者となりました。


あの後お祝いのパーティーをしようということになりココやセシル、ユミルも呼んで盛大にパーティーを開いた。


主役であるシェリーは常に笑っていた。

可愛いかった。



俺は1人ベランダに出た。


(やっぱ大人数だと面白いな。)


前の世界でルージュ達とやったパーティーは少人数ながらも楽しかった。


けど、やっぱり大人数の方がパーティーは楽しい。


俺が昔を思い出していると後から気配がした。


「どうした?シェリー。」

「主役が抜け出してどうする。」


「それは、ナイトも同じでしょ。」

「ねぇ。なんで、いきなり答えようと思ったの?」

「俺だってバジリでシェリーに言われてからずっと考えてたんだよ。それに、言っただろ?俺は欲張りなんだよ。」

「それと何の関係が?」

「俺は欲張りだ。だから自分が気に入ったものは全て手に入れる。シェリーも俺のお気に入りって事だ。」


「そう。ありがとう。嬉しい。」


またお互いに向き合ってシェリーと唇を重ねた。

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