40話 見破りと不足
ミミと約束をした後シーラから同調で合図が来た。
「よし、俺達も行くぞ。」
「どこに行くんですか?」
「犯人を捕まえに。」
全員がナナの部屋に集まっている。
「結局来なかったわね。」
「誰かが殺されるよりいいではありせんか。」
「そのことなんだが、昨日の時点で侵入者はこの屋敷内に忍び込んでいたんだよ。」
「それってどういうこと?」
「いった通りだ。侵入者はもう忍び込んでいて俺達諸共殺そうと機会をうかがっている。なぁ、ナナ。」
「お前は『誰だ』」
俺が解除の魔法を唱えるとナナの形をした何かが姿を現した。
「よくわかったな。」
「最初におや?と思ったのは昨日あったときだ。俺はナナには嫌われていてな目が合うといつも睨まれるんだよ。けど、昨日はニコッと笑った。『乙女心は秋の空』というけれどさすがに一日で態度が劇的に変わるのは考えにくくてな。不審に思って視てみたら、案の定、お前はナナじゃなかった。」
「じゃ、本物はどこにいるの?」
「あぁ、それは『黄金』と『深緑』に頼んだ。」
「二つ名持ちを駒にするなんて、さすがナイト。」
いや、別に駒にしたわけじゃないよ?
ゼクスからは手合わせをさせることになったし、カナからは買い物に付き合うという約束をそれぞれさせられてしまった。
まぁ、どちらもそれくらいなら余裕だが...。
「で、私をどうする?」
「逃げたければ逃げれば?」
まぁ、逃げた瞬間張り巡らせた罠のどれかに引っかかるだろうけど。
体が燃える罠
体が凍る罠
体が麻痺する罠
主にこの3つを張り巡らせた。ほかにも、移動速度低下とか地味に嫌なデバフが付くような罠も張ってある。
「そう。なら、逃げさせてもらうよ。」
そういった途端。女は『消えた』 移動したではなく消えた。
「今のは瞬間移動か?」
「いえ、瞬間移動の魔法は莫大な魔力を使います。変身に魔力を使っていた彼女が使えるとは思えません。」
なら、あれは何なのか。
『ナイト。魔都の領主は助け出したぞ!今からそちらに向かう。』
「あぁ、分かった。ありがとう。」
「ゼクスのほうも無事に保護したそうだ。めっちゃ楽しそうだったわ。」
「となると、お相手が気の毒ですね。ゼクスの相手をさせられるなんて。」
「確かに、あの剛腕で殴られたら肩外れる。」
「それより、帝国が絡んでそうだな。となると大分めんどいな。」
「?いつものように無双すればいいんじゃない?」
「今回の黒幕が帝国とつながっていた場合、普通に戦争とかありえるからな。」
「そうですね。一領主を攫ったわけですから、ありえますね。」
戦争になった場合おそらく王国が負ける。
相手は銃持ち、こっちは、槍剣弓だ。戦力差は明らかだ。
「でも、何で魔都の領主なんでしょうか?バジリなら、ザフトが殺されて混乱状態にあるんですから攫いやすいと思うのですが...。」
「それは、俺と接点があったからだろ。下手に俺と接点のあるやつを攫って大本がばれてぶち壊されるのを避けたんだろ。人質は諸刃の剣だ。使い方によっては強みになるが間違えると壊滅する。ミミを人質にとったノーツがいい例だ。」
あいつは、ミミを人質にとって俺を怒らせた。まったくの馬鹿者だ。
「ナイト!連れてきたぞ!」
そとで、大きい声を張り上げているのはゼクスだろう。意外と早かったな。
それにしても声がデカい。
ほら、カナなんて耳栓してるし。
「おお!ありがと!」
てか、よく燃えなかったな。
ナナは今ゼクスに抱えられるような状態でいる。
処女火で焼かれそうなものだが。
まぁ、ゼクスなら別に不思議ではない。
「大丈夫か?」
「もうやだ。おうちかえりたい。」
ナナの精神が壊れつつあるんだが...。
「ゼクス何があった。」
「暴れるんでなちょっとおとなしくしてもらった!」
いや、白い歯を見せびらかせて笑っても無駄だぞ?
大方、覇気でも使ったんだろ。気絶しないギリギリまで威嚇したんだな。
「まぁ、精神崩壊は置いといてで、どうだったんだよ。」
「そうだな。敵はいくつもの支部を持っていてた。それも大小様々だ。大元を叩かないとだめかもしれんな。」
「敵も変な能力使ってきたしね~。」
「変な能力?」
「うん。こうなんかぐにょーとしてギュッとしてバァン!ていうの。」
「わかった。ゼクス説明頼む。」
そばでカナが「えー」とか言ってるが気にしない。
あんな説明じゃまったくわからない。
「液体を出してそれを相手に纏わせてそのまま爆発。というものだったな。俺の吸血鬼の攻撃があったから傷はないがまともに受けたら致命傷になるかもしれないな。」
瞬間移動といい変な攻撃といい帝国は何がしたいんだ?
ナナを見たところ外傷は見られない。精神が壊れているがこれはゼクスのせいだし。
「ラート達からはなにか聞いてないか?」
「私は聞いてないですね。」
「俺も聞いてはいないな。」
「カナも聞いてないよ。」
「向こうも進展なしか。」
有力な手掛かりはなし。相手は捕縛しても瞬間移動的な何かで逃げられてしまう。
あれ?無理ゲ―じゃね?
「いっそ乗り込むか?」
「まて、なぜ、そうなる。脳筋は捨てろ。」
「そうですね。今乗り込んでも返り打ちにあうだけですね。」
「そういうこと。ちゃんと計画を立てないと。」
「それで、計画通りに動かないんですね。わかります。」
「まぁ、あくまで計画だから。スケジュールじゃないから。」
「そうだな。計画通りに動いたことは一度もないな。はっはっは。」
それはそれで問題があると思うが。まぁ、分からなくはない。
計画はあくまで計画。
それに縛られるのは柔軟な思考がない証拠だ。
(暴論)
「まぁ、進展がないんじゃ動けないな。このまま、現状維持か。」
「そうなりますね。」
「また、ゼクスと一緒か~。新人君と一緒が良かったな。」
「メアの指示ですから仕方ないですよ。」
そう言ってシーラは俺にくっついた。
「2人とも近い。」
俺とシーラの間に入ってきたのはシェリーではなくシアだった。
「あら、ごめんなさい。」
シアから指摘を受けてシーラは俺から離れた。
いつも、思うがシーラはルージュと似ているところが多すぎる気がする。
俺にすぐくっつくとことか髪とか...。
これで、コア君とかもうちょい可愛い声で呼んだ来たら完全にルージュだ。
あ、胸が足りないや。
まぁ、ルージュは死んでしまったしこの世にはいないんだけどな。
「まぁ、進展がないんじゃ動けない。各自このまま、現状維持ってことでいいか?メア。」
『えぇ、構いませんよ。現場の指揮はナイトに一任します。』
これまた、放任主義だな。
「わかった。ということで各自調査に戻ってくれ。」
「了解した!」
「は~い。」
「わかりました。」
敵がなにを考えているのかまだ俺自身分かっていない。
わかっているのは、
・敵はやろうと思えば国を滅ぼせる
・敵は集団で動いている。
・能力者や高位の魔法使いがいる。
というくらいしか分かっていない。
(こういうのも久しぶりだな。相手との面会が楽しみだ。)
俺は1人心の中でほくそ笑んでいた。




