38話 男性特攻と密談
シーラと茶会をした日の朝。
「ご主人。朝シーラと何してたの?」
さすがは元暗殺者。気配を消して盗み聞くのはお手の物だな。
「ちょっとした昔話を聞いて貰ってただけだよ。」
「ほんとに?なんか、いやらしいことでもしてたんじゃないの?」
ほぉ。
「いやらしいこととは何かな?教えてくれ。」
「いや、その、あの。」
俺が聞き返すとシェリーは顔を真っ赤にしながら俯いた。
「冗談だ。何にもない。」
シェリーからはジト目で見られるが気にしない。
「さて、今日はどうする?」
「適当にクエストでも受ける?」
「そういえば、ナイトについて来て欲しいところがあるのですがよろしいですか?」
「ん?あぁ、構わないが。」
「よろしければ皆さんもどうぞ。多分大勢で行っても大丈夫でしょう。」
その多分が怖いんだがな。
そして、俺たちは魔都で、1番デカい屋敷....領主宅に来ていた。
なぜ、領主宅に来ているかと言うと…。
「お久しぶりです。ナナさん。」
「ん?あぁ、シーラか。どうした?」
この、ちょっとボーイッシュな人がこの魔都の領主だ。
ナナ
性別:女
種族:竜人
レベル:79
スキル[竜魔法]、[極握]、[加速]、[飛翔]、[火耐性]
能力《処女火》
備考、《処女火》により、相手が男の場合攻撃力アップ。逆に女の場合、攻撃力ダウン。
これ、ぜってー攻撃されるよね!
男性特攻ってなに!怖いんだが!
「ちょっと暇になったので遊びに来ちゃいました。」
「ここは、遊び場じゃねぇぞ。で、そいつらは?」
「ご紹介します。今私とパーティを組んでいる人達です。」
「!おい。シーラ。なんで、男をこの屋敷にいれた!」
ほーら。反応した。
「あ、忘れてました。ナナさんは男の人が苦手なんですよ。」
「いや、それ、忘れちゃいけないことだから。」
そんな話をしている間にナナは物凄い殺気を放っているし常に戦闘出来る態勢になっている。
「と、取り敢えず落ち着け。話せば分かる。」
「うるさい!この場で殺してやる!」
「ちょ!やめ!」
そこまで広くない部屋で刀を振り回すナナ。
「死ね!」
ミミとかに当たるとちょっと怒っちゃいそうだから俺は素手で受け止めた。
「な!」
「あぶねぇ!曲がった剣先を受け止めるくらい余裕だ。」
しかも、狭い部屋で刀を振り回すとなるとどうしても剣先を予想されやすい。
狭い部屋で戦うならダガーか細剣で戦うのが1番やりやすいはずだ。
「なんで、男がここにいる!あれほど入れるなと言っただろ!」
「すいません、忘れてました。」
「はー。まったく。今回はシーラの不手際ということで許してやる。しかし、今度この屋敷の敷居を跨いだら容赦はしないぞ!」
「はいはい。今度は気をつけるよ。」
ま、襲ってきても返り討ちには出来るな。
《処女火》でどこまでアップするかわからないけど。
一応許してもらったがやはり、視線がキツい。
「で、なんで、こいつらを連れてきた。」
「ナイトは見かけによらず強い人です。『あの件』について話してはいかがでしょう。」
弱そうに見えて悪かったな。
そりゃ、防具は黒いコートだけでガチガチの鎧を付けているわけではないから弱そうに見えても仕方ないと言えばそうなのだが...。
「あれは、私の問題だ。部外者を巻き込む訳にはいかない。」
「でも、ナナさんは命を狙われていますよね。」
「おい。」
「命を狙われてるというのは穏やかでは無いな。」
「貴様には関係ないことだ。」
「俺の強さに自信が持てないか?」
「そうだな。録な防具もなしに旅してるんだ。どうせシーラの遺産目当てだろうがやめとけ。」
まぁ、神が死ぬなんて聞いたことないから多分死なないだろ。
「別にシーラの遺産目当てじゃないな。あと、防具を付けてないのはただ、邪魔だから。それに、俺はさっきナナの刀を素手で受け止めたんだぞ?」
「うぐっ…それは...。そうだが。」
刀を素手で受け止めた。というのは、相手とは少なくとも10レベル以上の差があると考えていい。
その場合。俺は、少なくとも89以上のレベルとなる。
そんな相手を侮るほどナナも安直ではない。
「では、シーラに話す。あくまでシーラと話しているだけで、私は、貴様には話していないからな。」
「それで、充分だよ。」
これは、ツンデレというやつだな。
シェリーとよく似ている。
ナナの話をまとめるとこうだ。
・数日前に『ナナを殺す』という旨の殺人予告が届いたこと。
・そして、殺人予告が届いてから何回も襲撃にあっていること。
・今まで《処女火》が効いたことから男だと判断したこと。
・敵の全員が腕に蛇の紋をしていたこと。
この4つの情報をもらった。
「今のところ全員返り討ちにしてはいるがもし、敵が女だった場合私は多分やられる。」
「ナイト。蛇の紋に見覚えはありませんか?」
「いや、ないな。ただ、1つだけ候補がないことは無い。」
「お聞かせ願いますか?」
「例の組織だ。あいつらの仲間に蛇の紋があるかわからないが可能性があるとすればそっちか...。」
「発言よろしいでしょうか?」
今まで大人しく聞いていたララが発言してきた。
「どうした?」
「はい。蛇の紋は恐らく帝国の貴族の紋にそのような紋があったと記憶しております。」
「そうか。どこかで見たことあるかと思ったがギッシュのムスメのララ・アルベールだったか。」
まぁ、領主どうしだし面識があってもおかしくないか。
「しかし、帝国かー。全く分からないな。」
「帝国は機械国と言われるほど技術が数段王国、鳳国より進んでいます。」
「最近は『じゅう』という武器を開発したとか。」
マジか!銃がこっちの世界にもあったのか!
今まで技術に影響を与えかねないという理由で自重してきたが実は俺は、銃を持っている。
出そうと思えば今この場で出せる。
ま、危ないから出さないけど。
「話は聞かせてもらった。俺たちは勝手に動くが問題ないな?」
「ふ、ふん。勝手にしろ。」
許可が出たので作戦会議をすることにした。
帰ると何故かミミとシェリーが少し不機嫌だった。
「なんか、二人とも不機嫌じゃね?」
「別に。」
「そうでもないですよ。」
二人からの声に棘がある気がする。
『お二人は嫉妬しているんですよ。』
『なぜ?』
『ご主人様が勝手に決められてしまわれたからではないですか?』
『あ~。許可とんなかったからか。』
『恐らくそうではないかと。』
乙女心はやっぱり分からないな。
*****************
俺達が去ってからシーラ達は...。
「まったく素直じゃないですね。」
「う、うるさい!あれくらいしか知らないのだ。」
「ナイトが優しくて良かったですね。」
「そ、それは、感謝するところだな。」
「ナイトはあぁ見えてものすごく強いですよ。」
「そうなのか?」
「えぇ、実際ナナの刀を受け止めたてはありませんか。」
「うむ。魔都1番と言われて驕ったか?」
「あれは、ナイトが以上なだけですよ。」
「神のシーラにそこまで言わせるか。」
「それほど、すごいと言うことですよ。」
「ナイトは、私の恋人ですから。」
「え?それって...。」
「さぁて、そろそろ戻りますね。」
「ん、あぁ、そうか。」
シーラとナナは密談していたようだかナイトには届いていない。




